趣味や愉しみ

社交クラブ感覚で、頭脳ゲーム「麻雀」

シニア層が学生のころに遊んだ、卓を囲む「麻雀」が、今、女性たちの間で人気になっています。ほかのメンバーの手の内を読み、ときに相手の手を崩すなどの駆け引きをしながら、流れのリズムを乱さずに、より高い点数の麻雀牌の組み合わせをつくっていく。スピードとスリルを伴う頭脳ゲーム「麻雀」は奥が深く、やればやるほど魅力が増して、楽しいのだそうです。

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6卓でゲーム進行中

廃校で、女性専用の麻雀教室

部屋には麻雀卓が6卓。24人のシニア女性が卓を囲み、ゲームが進行しています。ここは、女性専用の麻雀教室です。会の名前は「悠友会」。会の代表は中野髙義さん(80歳)。

中野さんに、会をはじめたきっかけを尋ねると、「60歳で定年退職を迎えて、ひとの役に立つことができないかと考えたときに、麻雀教室が頭に浮かんだから」と、一言。

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悠友会 代表の中野髙義さん

「ゴルフ」「麻雀」「カラオケ」は、かつてのビジネスマンの三種の神器。強いだけではだめで、相手に合わせて、勝つ、負けるを自在にできるほどうまくなくてはだめだという話を聞いたことがあります。中野さんは仕事で鍛えた特技を活かそうと思ったのだそうです。

そのために中野さんがしたことは、麻雀卓と麻雀牌を準備して、「多摩市の教育委員会に話を持ち込んだのです」。場所は、廃校となった旧 東永山小学校の教室(現 多摩市役所 東永山複合施設)。4階建ての校舎のなかでは、麻雀教室以外にも、さまざまな市民活動が行われています。

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旧 東永山小学校(現 東永山複合施設)

増えつづける会員数

「入会して16年経っているひともいて、60歳だったひとも、いまは76歳です。やめるひとがいないんですよ」(中野さん)

会員が増えすぎたので、2つに分けて、月曜日と火曜日は、別のひとに指導を見てもらうことにしたそうです。中野さんは、水・木・金曜日の10時から15時まで。祝日も休みではありません。麻雀指導の無い日には、ゴルフを楽しんでいるそうですが、現在もスコア100前後で回っているそうです。

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校舎に残っている記念の作品

悠友会のメンバーは現在、女性のみの58人。皆勤に近いくらい通ってくるひともいるそうです。
「月曜、火曜で用事を済ませて、週の後半は麻雀と言うひともいます。なかには『今日は雨でほかのことができないから来たの』なんて言うひともいますがね」
女性のストレートな冗談に、中野さんも苦笑いです。

麻雀は即決。流れを妨げない「リズム」が大切

メンバー4人の組み合わせは抽選で、午前と午後の2回決めます。予約制ではないので、当日にならないと人数はわかりません。平均すると、1日に30人くらい来ているそうです。

「麻雀は、通常4人で行います。3人でもゲームはできますが、半端な人数のときには、私もゲームのメンバーに入ります。時間をかけて考えている会員をみつけると『遅い遅い』と発破もかけます」
そう言ってから、「麻雀は、ゲームのリズムを乱さないことが大切なんですよ」と中野さんは言います。

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麻雀はリズムが大事

中野さんの言う通り、見ている間、麻雀牌(パイ)を積むのも、ゲーム中も、点数を計算するのもスムーズで、流れが止まることはありませんでした。

初心者も実戦でマスター

伺った日は、天候が悪く、集まった人数も少なかったようで、使用していない麻雀卓が2卓ありました。そのうちの1卓に、女性が1人座って麻雀牌を並べていました。
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1人で牌を並べて練習中

「彼女は5月に入会したのですが、まったく牌に触れたことがないと言うので、ゲームのリズムを崩さないために手持ちの牌を並べ替える練習と、練習問題の「待ち牌」を解いているところです。入会時には麻雀ははじめてというひとも多いのですが、基本のルール、役(牌の組み合わせなど)、点数の数え方、テクニックなど、すべて教えますので、次第に誰とでも麻雀ができる腕前になります」(中野さん)

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左:「待ち牌」の練習問題 右:麻雀のルール

麻雀卓には電動で麻雀牌を積むものもあります。でも、悠友会は、昔ながらに自分の手で牌を積んでいます。牌をかき混ぜて積む作業は、指を動かすので、脳の刺激になってよいといわれています。

「麻雀」「囲碁」「カラオケ」「俳句」はコミュニケーションツール

1人で練習していた69歳の女性が、麻雀をはじめたきっかけには理由があるそうです。
「将来、老人ホームに行ったときに、『麻雀』『囲碁』『カラオケ』『俳句』の4つのうちのどれかができたほうがいいという話を聞いたんです。これから覚えるのだったら、みんなでゲームを楽しむことができる麻雀がいいと思いました」。
老人ホームに行く前でも、麻雀はコミュニケーションツールになりそうです。

メンバーが1人帰ることになり、その女性が空いた卓につきました。ベテランのなかに混じったので、中野さんも気にして見守っていますが、リズムをそれほど乱すことなく、流れになんとかついていっているようです。

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少し席を立ったメンバーの代わりには、中野さんが臨時で

ゲーム展開を推測するために、脳はフル回転

麻雀は、34種類136枚の牌(パイ)を使って行うゲーム。1人、13枚の手持ち牌でスタートです。裏返しに積まれた牌の山から新しく1枚ひいて、手持ち牌とし、不要な牌を1枚捨てます。それを4人のメンバーが順に繰り返していきます。

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待ち牌は来るかな?

ほかのメンバーより先に、最後の1枚を加えた14枚の牌で、40種類以上ある「役」のなかの1つの「役」を完成させれば勝ちです。牌の組み合わせなどによって、点数が決まっています。勝敗は、決めれられた回数を経て、最終的な持ち点で競います。

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卓の間を回りながら、アドバイス

麻雀のおもしろさの1つは、ひとが捨てた牌で、「役」を完成することができるところです。それがゲームを複雑にもしています。運良く牌が揃ってきて、高い点数の「役」をつくろうとしていても、それだけで勝つことはできないわけです。

洞察力、瞬発力、持続力、記憶力を使っての心理戦

自分の「手持ち牌」だけでなく、ほかのメンバーが、何の牌を集めているか、どの牌を待っているか、自分が待っている牌が出てくる確率はどのくらいかなどを見極めることが必要になります。麻雀は、場を読む洞察力、決断する瞬発力と、自分の手を完成させるための粘り強さや記憶力、それに、心理的な駆け引きが大切なのです。

「役」のなかには、運(ツキ)を味方にしなければ完成できないような難易度の高いものもあり、ほかのメンバーより先につくることができれば、一気に逆転もあります。

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おしゃべりもするけど、真剣な表情も

「午前と午後、それぞれ、トップ賞、プラス賞、ブービー賞を設けていて、月ごとにはベストテンも集計しています。それがモチベーションになっているようです」(中野さん)

吸わず飲まず賭けずの、昼間の「健康麻雀」

『レジャー白書2015』(公益財団法人 日本生産性本部)によると、麻雀の参加人口は870万人。そのうち、60代と70代で385万人となっています。

時代が変わり、麻雀を一度もやったことがないというひとたちも増えました。コンピューターゲーム麻雀が流行った世代は、実際に麻雀卓を囲んでゲームをすることは無くなり、現在、卓を囲むのはシニア層が一番多いそうです。

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麻雀牌は、絵柄の美しさも人気

シニア層が学生だったころには、4人集まると麻雀をすることも多く、「雀荘」という、麻雀をする場所も街中にたくさんありました。

麻雀には、タバコ片手に、お酒を飲みながら、お金を賭けて、男性たちが夜通し熱くなって興じるゲームというイメージがあります。メンバーの女性のなかにも、「友達に誘われたときに、最初は、麻雀なんて品が悪いと思ったのですが、この会で、そんなイメージは払拭されました」と言うひとがいました。

4人の駆け引きが、ゲームを複雑におもしろくする

いま、女性たちが麻雀を楽しむようになったのは、「極めるためには一生かかるくらい奥が深い」(中野さん)、つまり、認知症予防にもなる、脳を鍛える知的頭脳ゲームという理由があるようです。囲碁や将棋などは対戦相手が1人ですが、麻雀は4人で打つため、ワザを競いあうだけではないゲーム展開のおもしろさもあります。

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指を使って点数計算をしています

麻雀が複雑といわれる1つには、勝ち点の計算が難しいことも含まれているようです。
「家族で麻雀をしていたけれど、正式に、勝ち点の数え方を覚えたいと思って通いはじめました。先生の教え方がいいので、いまでは、ますます麻雀がおもしろくなって、ここに入り浸っています」そう言って、楽しそうに笑うひともいました。

麻雀卓を囲んで「おしゃべり」も、女性に人気の理由

「ここに来ると、麻雀という共通の趣味を持った女友達に会えて、おしゃべりもできて、それが楽しい」と言うひともいます。やはり、おしゃべりは女性には欠かせないようです。

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盛り上がっているのは、何の話?

麻雀が終わったあとに、さらに、お茶を飲みに行っておしゃべりをすることもあるそうで、会で、唯一の男性である中野さんが、少し呆れながら、「麻雀しながらも、おしゃべりし通し」と言うほど、女性たちは会話を楽しんでいるようです。

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「会員の上達を見るのが楽しみ」

ゲームを考えながら、おしゃべり。男性には不思議なことに思われるようですが、会話は、脳機能を維持するための最高の趣味なのだそうです。女性はおしゃべりで、ストレスも発散することができるといわれています。女性会員の皆さんが年齢より若く見えるのは、そのためなのかもしれません。

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文=水楢直見(編集部)2016年11月取材


多摩市市民活動情報検索サイト 麻雀教室 悠友会

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