趣味や愉しみ

歳をとるのも悪くない
岡部睦のオトナの品格③

年齢を重ねていくと、知らぬ間に背筋が曲がっていたり、動きが緩慢になっていたりと、自分が老いたと思う瞬間があると思います。身体の衰えは仕方がないにせよ、気持ちだけでも、オトナとしての品格を保っていたいものです。1970年代に男性モデルとして活躍していた岡部睦さんに、年齢を感じさせない仕草や、シニアのファッションのポイントについてレクチャーしていただきました。

hinkaku_IMG-93

撮影:弓削ヒズミ

ファッションや仕草は、映画から学んだ

男性モデルの草分け的な存在として活躍し、その後も大手プロダクションでモデル育成に尽力した岡部睦さん。モデル時代から「粋」であることを大事にし、ファッション、仕草、遊び方など、シニアとなった現在でも岡部流美学を貫いています。今回は、シニアからのファッションについて教わりました。

hinkaku_IMG-74

自分の好きな1色を決めておけば、ファッションを考える基準のひとつになる。僕の場合は紫/撮影:弓削ヒズミ

「シニアからのファッションは、できれば明るめのカラーを着こなしたいですね。いままで恥ずかしいと思っていたカラーもあるでしょうけど、歳をとったからこそ、明るい色を選びましょう。いつまでもグレーやベージュの洋服ばかりじゃなく、赤色、黄色などの派手な色にチャレンジしてみてもいいと思います。明るいカラーは、気持ちも明るく、ウキウキしてきます」

「最近は見かけないのですが、男性でしたらアスコットタイを使ってみるのも『粋』ですね。ネクタイだと堅苦しいと思った時は、アスコットタイとジャケットの組み合わせにしてみるとか。年齢は首に出るともいいますし、アスコットタイは、首ねをやわらかく見せてくれます。スカーフを代用してもいいです。首元の色づかいで、かなり見た目の印象も変わりますから、年配の人にはアスコットタイをおすすめします」

岡部さんがモデル時代、ファッションの参考にしていたのが映画だといいます。特にフランス、イタリア映画が多く、映画作品は、必ず2回見て、1回目は物語だけを楽しみ、2回目はファッションのコーディネイトを研究していたそうです。

「ジャン=ポール・ベルモンド(※1)、アラン・ドロン(※2)が活躍する映画『ボルサリーノ(Borsalino)』(※3)は影響を受けました。スーツやコートの着こなし方、帽子のかぶり方、ファッションだけじゃなく、座り方、話し方、酒の飲み方など、細かな所作まで見ていました。いま見直しても参考になると思います。当時の僕は、ジャン=ポール・ベルモンドに憧れて、ボルサリーノの帽子(※4)まで買っちゃいました」

hinkaku_IMG-110

ファッションを決めていくのに忘れがちなのは「靴」。黒、茶、ベージュの3色は揃えておきたい/撮影:弓削ヒズミ

(※1)ジャン=ポール・ベルモンド
1933年4月9日生まれ。1959年『勝手にしやがれ』で一躍映画スターとなり、シリアスからコメディーまで幅広い演技ができるフランスを代表する俳優。

(※2)アラン・ドロン
1935年11月8日生まれ。フランス出身。主な作品は『太陽がいっぱい』『さらば友よ』『地下室のメロディー』など。日本での人気は高く、美男子の代名詞にもなっていた。

(※3)ボルサリーノ(Borsalino)
1970年公開のフランス=イタリア合作映画。1930年代のマルセイユの暗黒街を舞台にした、2人のギャングたちの活躍と友情を描いた作品。

(※4)ボルサリーノの帽子
イタリアのブランド、帽子メーカー。前述の映画『ボルサリーノ』で有名となり、ソフト・ハットの代名詞にもなっている。

60歳を過ぎた夫婦は「第2の青春」を楽しもう

子どもたちも独立して、夫婦水入らずで暮らす岡部さんは、いまの状況を「第2の青春」と呼んでいます。JRが、まだ国鉄だった時代に、上原謙さんと高峰三枝子さんが夫婦役で出演された「フルムーン夫婦グリーンパス」のCMに憧れ、いまは毎月、ご夫婦で出かけているそうです。

「新婚時代には旅行なんて行けなかったので、ようやく、いまになってできるようになりました。夫婦で出かける機会が増えれば、お洒落をするようになるし、2人の会話も増えてきます」

hinkaku_okabe_model_7

トップモデルとして活躍していたころの岡部さん。77年ごろのエアコンのパンフレット/資料提供:岡部 睦

「僕はカミさんと一緒になって30年近くになりますけど、いまだに名前に『ちゃん』付けで呼んでます。『おい』『ねえ、ねえ』『おまえ』とか使わず、必ず名前で呼びます。皆さんも恥ずかしがらず、お互いを名前で呼び合ったっていいじゃないですか。そうした工夫をしてほしいですね」

歳をとったからこそ、2人で遊ぶ。楽しみを共有することで、もっと気持ちが明るくなれるのではないでしょうか。

「歳をとったら家に閉じこもらず、外に出ることです。家に閉じこもったら老け込んでしまいます。出かければ、人と会話する機会もあり、話す時は自然と明るい顔になるはずです。外に出るほうが歳はとらないと思います。もっと出かけましょう」

hinkaku_IMG-116hinkaku_IMG-104

新しいお店ができたと聞けば、夫婦揃って出かけます。いつも2人か、愛犬も一緒です/撮影:弓削ヒズミ

3回にわたる岡部睦さんのお話はいかがでしたか。年齢に抗うというよりも、若い頃の気持ちを持続させ、常に品格を保つライフスタイルは、見習う部分も多いのではないでしょうか。いつでも「粋」でありたいものです。

岡部睦のオトナの品格①を読む
岡部睦のオトナの品格②を読む

文・写真=弓削ヒズミ(編集部)2017年2月取材

■ Profile ■
岡部睦(おかべ・むつみ)
静岡県浜松市出身。トップモデルとして多くの雑誌、新聞、テレビCMに出演するかたわら、株式会社オスカープロモーションの新人教育を長年担当し、後進の育成・指導にあたる。1990年に独立し、ブラッシュアップスタジオを開設。自ら媒体への出演も行いながら、ショーの演出や講演活動など幅広く活動を行っている。

下へ続く
上へ戻る