趣味や愉しみ

亡き父親と家族の絆を描いたコミックス『家』

60歳を過ぎた定年退職前後の皆さんにとって、これから真剣に考えなければいけないことの一つが、いつか訪れる親の死、また自分自身の亡き後のことです。いまこそ、自分と家族のことを真剣に考えなければいけない大切な時期なのかもしれません。そんな人たちにおすすめしたい作品が、スペインの漫画家パコ・ロカさんの新作『家』(小学館集英社プロダクション)です。

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パコ・ロカ著『家』(小学館集英社プロダクション)/Copyright text and illustrations © 2015, 2017 by Paco Roca All rights reserved.

世界中を感動させた『皺』の著者による待望の新作

老人ホームを舞台に「老い」と「認知症」を描いたコミックス『皺』が、世界中で話題になり、一躍人気作家の仲間入りを果たしたスペインの漫画家パコ・ロカさん。2011年に日本語版が刊行され、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。同作は日本国内でも感動を呼び、アニメーション映画化にもなりました。

そのパコ・ロカさんの最新作が『家』です。同作で描いたのは、亡くなった父親に対する3人の子どもたちが抱える想いでした。

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3月13日(火)、『家』の刊行を記念してパコ・ロカさん来日のトークイベント&サイン会がインスティトゥト・セルバンテス東京で開催。イベントでは同書で監訳を務めた小野耕世さんとの対談形式で行われた/撮影:弓削ヒズミ

舞台はスペインの片田舎。亡くなった父親が大事に手入れをしてきた休暇用の家は、誰も訪れることもなく廃れていきます。そこで、ビセンテ、ホセ、カルラの3兄妹が、父の家を片付けるために、久しぶりに集まります。家の修繕や片付けを通し、家族の思い出を語り合い、後悔や迷いを抱えながら、父の喪失に向かい合っていくストーリーです。

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同じ年に、父親の死と、娘の誕生を経験し、悲しみと喜びの両方を味わったことが、『家』を描き始めるきっかけとなった語るパコ・ロカさん/撮影:弓削ヒズミ

父の喪失に向かい合う3兄妹の心情は、シニア世代にこそ共感できる

物語では、親の介護をめぐる兄弟間のいさかいや、高齢者ドライバーの免許返納など、スペインを舞台にした話でありながら、日本のシニア世代にとっても身近で共感できる内容ばかりです。おそらく3兄妹の誰かしらを自分と照らし合せながら、物語に感情移入できるのではないでしょうか。

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横長の判型にしたのは、表現の自由度を高めるためという。また、父親の世代、昔のコミックスが横長だったことも本作品の意味合いを深めている/撮影:弓削ヒズミ

パコ・ロカさんの作品の特長は、緻密な日常描写の積み重ねだ思います。物語を展開するうえで特別な仕掛けや出来事があるわけではなく、食事をしている、石垣を修繕している、病院の待合で順番を待っているなど、誰もが過ごしている日常風景を淡々と描きます。例えるなら、小津安二郎監督の映画作品にも似た感覚を受けました。

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コミックスの良い点は、何度でも読み直せること。特にパコ・ロカさんの作品は読み返すごとに新たな気づきがあり、それが、さらに作品への愛着に繋がる理由なのかしれない/撮影:弓削ヒズミ

また、所々に描かれる情景描写のカットも印象的です。なかには、朽ちていく家の様子と老いていく父親の姿を重ねていたり、図鑑のようなカットがあったり、セリフに頼ることなく視覚的に伝わってくる演出が多いのも特長かもしれません。

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トークイベントに続いてサイン会が行われた。ファンの一人一人と気さくに会話をしながらイラストとサインを行うパコ・ロカさん/撮影:弓削ヒズミ

これからシニアライフを迎える60歳代の皆さんにとって、きっと心に刺さる作品であると思います。コミックスだからといって距離を置かずに、ぜひ、ご一読を。爺ちゃん婆ちゃん.com編集部のイチオシです。

文・写真=弓削ヒズミ(編集部)2018年3月13日取材


■ Profile ■

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パコ・ロカ(Paco Roca)
1969年スペイン・バレンシア生まれ。バレンシアの美術商業学校を卒業後、イラストレーターとして活躍し、ポルノ・コミックス専門の雑誌「Kiss」でマンガ家デビュー。2007年にフランス、2009年にスペインで出版された『皺』が話題となり、一躍人気作家の仲間入りを果たす。同作は2011年にアニメーション映画化され、スペインのアカデミー賞と呼ばれる第26回ゴヤ賞で最優秀アニメーション賞、最優秀脚本賞を受賞した。

【書籍紹介】

〈老い〉と〈痴呆〉を描いた傑作コミック『皺』で
感動を呼んだスペインの漫画家パコ・ロカ、待望の新作!!
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Copyright text and illustrations © 2015, 2017 by Paco Roca All rights reserved.

『家』
著:パコ・ロカ/監訳:小野耕世/訳:高木菜々
発行:小学館集英社プロダクション/定価:2,800円+税/発売:2018年1月10日頃/仕様:縦170×横240mm・上製・128頁・本文4C
ShoPro Booksで購入


フランスで刊行されるや絶賛の声!
スペイン発、「老い」と向き合った話題のコミックがついに日本上陸!
カバー

Copyright text and illustrations © 2011 by Paco Roca. All rights reserved

『皺』
著:パコ・ロカ/訳:小野耕世、高木菜々
発行:小学館集英社プロダクション/定価:2,800円+税/発売:2011年7月29日頃/仕様:B5変型・上製・176頁・本文4C(一部2C)
ShoPro Booksで購入

《取材協力》
株式会社 小学館集英社プロダクション

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