いま注目のあの人

第12回:定年退職からエクセル画家へ
堀内辰男さん③

いま輝いている素敵な人からお話を聴いてみたい。ただ、その想いでインタビューをするのが、このコーナー。今回は、パソコンの表計算ソフト「エクセル(Excel)」を使って、絵を描く堀内辰男さんを訪ねました。定年退職してからゼロの状態で始めたというエクセルを使った絵画は、数々の賞を受賞し、個展を開くほどの腕前。いまは地元で「エクセルアート」教室も開催しています。

第12回:定年退職からエクセル画家へ 堀内辰男さん②

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堀内さんは館林市内の公民館でエクセルアート教室を開く。教える教科書もすべて堀内さんが作成する/撮影:弓削ヒズミ

歳をとって、じいさんの良いところは、羞恥心が薄れるところ

■とても大きな作品をご自宅に飾っていますが、その作品は何ですか。

これは「夢の鞆の浦(桜と対潮楼からの眺め)」という作品。

じつは2004年に、広島県鞆の浦「鞆の津ミュージアム」で、美術評論家の櫛野展正さんがキュレーションした「花咲くジイさん〜我が道を行く超経験者たち〜」という展覧会に出展させてもらったんだ。変わり者のじいちゃんが集められて、本当に変わり者ばっかりなんだよ。素っ裸になって暴れてる奴とか、そんなのばかり展示されて、ちょっと気が引けたけど、俺も一緒に参加させてもらった(笑)

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平山郁夫作品に対抗しようと制作されたこの作品は横2.85メートル×縦1.36メートルの大作。「夢の鞆の浦(桜と対潮楼からの眺め)」堀内辰男 作/提供:堀内辰男

その帰りしなに、夫婦で尾道にある平山郁夫美術館に行ったんだ。そうしたら、奥の方に、でか〜い絵があって、たしか幅5メートルぐらいかな。なんだ、俺だってこれぐらい大きな絵を描いてやるよと思って描いたのが、これなんだよ。だけど、5メートルなんて、とってもじゃない、届かないんだよ。

歳をとって、じいさんの良いところは、羞恥心が薄れるところ。あっちはプロとしてガキのころか絵を描いていて、俺なんかは60歳になってから絵を描いたんだよ。それでも、俺の方がうまいぞ、でっかい絵を描くぞって、まるでラ・マンチャの騎士ドン・キホーテみたいだよな。竹やり持って平山郁夫(※2)に挑んでるみたいなもん(笑) だけど、この作品もいいだろ?

■ほかに堀内さんが挑んでみた画家はいますか。

いま、伊藤若冲(※3)が流行りじゃないですか。俺だって 若冲ぐらいのことはできるんじゃないのとかさ(笑) すぐ、そういうこと言い出すわけだよね(笑) そう言われてみてね、若冲の絵を見るとね、色が綺麗だよな! 綺麗さは単純に言えないんだけどね、若冲はなんで色が綺麗になったんだろうって、どういう風にしたのか、あれぐらい俺にも描けるだろうと思ってやるんだけど、若冲は描けねえよな! ありゃ、すごいよ。やっぱり。

最近は、そういう絵の工夫を思うようになったんだ。たとえば東山魁夷(※4)の『緑響く』という緑の樹々と湖畔に白馬が佇む絵なんて綺麗だよな。俺もあの絵みたいにグリーンだけで絵になるものをやってみようとか、黄色だけで絵になるとかさ、そんなことやりながら、人前に出すのが恥ずかしいんだけど、歳をとると羞恥心がなくなっちゃうから(笑)

 

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堀内さんの絵のモチーフは、地元・群馬県館林市の風景が多い。日ごろから草花や木々を観察することを欠かさない/撮影:弓削ヒズミ

(※2)平山郁夫(ひらやま・いくお)
1930年生まれ、日本画家、教育者。仏教伝来の道シルクロードをテーマに多くの作品制作を行うなか、中央アジアをはじめ各地の文化遺産保護にも尽力。日本と中国の文化交流を深めた。1998年に文化勲章受章。2009年没。

(※3)伊藤若冲(いとう・じゃくちゅう)
近世日本の画家の一人。江戸時代中期に京都で活躍した絵師。それまでの日本画壇になかった斬新な技法を用いて、写実と想像を融合させた作品を数多く残した。1716年3月1日生 – 1800年10月27日没

(※4)東山魁夷(ひがしやま・かいい)
昭和を代表する日本画家の一人といわれる。自然観や心情を普遍的に表現した風景画で知られる。1908年7月8日生 – 1999年5月6日没

ああいう人たちが描いている、おもしろさ、素晴らしさが、ようやくわかってきたから、なんとか同じようなことをやってやろうと思いながらも、無理じゃないかなと、半分諦めみたいになるんだけどね。

でも、俺は、子どもの頃からドン・キホーテみたいに風車に向かって「エイヤ!」とやるようなことがあるんだ。たぶん、大河ドラマ「真田丸」で草刈正雄が演じた真田昌幸のような「信州人の根性」かもしれんね。

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教室の参加者の多くはシニア世代で、パソコンの基本操作から線の引き方まで悪戦苦闘しながらも素敵な作品を仕上げていく。9月には堀内さんと教室の生徒の皆さんで展覧会も開催するという/撮影:弓削ヒズミ

取材でご自宅にお邪魔したところ、額装された60数点の作品を次々と見せていただき、その点数の多さと作品の大きさに圧倒されました。終始、お話も堀内さんペース。こちらが聴く前に次々とお話をしてくださいました。とてもパワフルな方で、その元気さが作品にも反映されているのではないでしょうか。最初はパソコンで、しかもエクセルで描くことが取り出さたれていましたが、現在の作品をみると、「パソコンが筆の代わりになった」素敵な絵画でした。大きくプリントされた作品は、1人でも多くの人に、その目で確かめて欲しいと思います。

文・写真=弓削ヒズミ(編集部) 2017年4月取材


■ Profile ■
堀内辰男(ほりうち・たつお)

1940年、長野県上田市真田町生まれ。定年退職後、2000年頃からパソコンの表計算ソフト「エクセル」を使って絵を描きはじめる。2006年にmoug主催「オートシェイプでお絵かきコンテスト」で大賞を受賞するなど、精力的に作品制作に取り組む。いま地元・群馬県館林市で「エクセルアート」教室を開催。
公式サイト:堀内辰男のエクセルで描くパソコン画

《展覧会予定》
『堀内辰男とExcelArt教室展』

日時:平成29年9月22日(金)9時〜25日(月)12時まで
場所:群馬県館林市三の丸芸術ホールギャラリー(群馬県館林市城町1-2)
入場無料

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