いま注目のあの人

第14回:82歳のアプリ開発者 若宮正子さん②

いま輝いている素敵な人からお話を聴いてみたい。ただ、その想いでインタビューをするのが、このコーナー。スマートフォン向けゲームアプリ「hinadan(ひな壇)」を開発して話題となった若宮正子さんを訪ねました。今年2017年6月には、米国アップル本社で開催されたWWDC(世界開発者会議)に、世界最高齢(82歳)の女性アプリ開発者として同社ティム・クックCEOに紹介されるなど、世界的に名の知れたシニアです。12月には、自身の生き方、考え方を綴った書籍『明日のために、心にたくさん木を育てましょう』(ぴあ株式会社)を出版されました。

第13回:82歳のアプリ開発者 若宮正子さん①

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ぴあ株式会社の総合受付にて、ぴあ公式キャラクター「ぴあの森のぴっけろ・くまっぴー」の前で記念撮影/撮影:弓削ヒズミ

毎日、自分がやりたいことに夢中なだけ

■今回、書籍『明日のために、心にたくさん木を育てましょう』(ぴあ)を出版されたわけですが、そのいきさつを教えてください。

いま、フェイスブックに「エイティーズの冒険」という、日常のことを書いた投稿を続けています。冒険といっても、旅行に行くだけじゃなく、目の手術だったり、とにかく身近なことを書き綴っていたら、「マーチャン、この文章はおもしろいから、本にしたらいいよ」「シニアにしては、おもしろい価値観だよ」などと周囲から言われていました。

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『明日のために、心にたくさん木を育てましょう』若宮正子著(ぴあ株式会社/本体1,100円+税)/写真提供:ぴあ株式会社

これまでも何回か本は出したことはあったんですけど、どれもコンピューターに関連したことばかりで、自分の身近なことや、生き方が本になるなんて思ってもみませんでした。今回、ぴあさんに、そうした部分を本にしていただいたのは嬉しいです。

いま、老後の生き方を知りたいという人が多いらしく、そうしたものを読みたい人がいるそうですよ。でも、瀬戸内寂聴さんのような高名な方ならいざ知らず、私のような、学歴もないし、無名なばあちゃんの本なんて読んでくださるのかな(笑)

■書籍の気に入ってる点、苦労したエピソードなどがあれば教えてください。

アップルCEOのクックさんとのツーショットの写真とか嬉しいですし、巻末に、私のエクセルアート作品をカラーで掲載してくれたのも嬉しいです。

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『明日のために、心にたくさん木を育てましょう』の中面イメージ。マーチャンの名言と、その説明が書かれた構成で、とても読みやすい/写真提供:ぴあ株式会社

■インターネットやプログラム以外にも何か趣味はありますか。

海外旅行が好きです。現役の頃から一人旅が好きでして、私が最初の本を出したのは、「マーチャンが行く」という本なんですけど、それは旅行記です。40〜50カ国は旅したと思います。

なぜ、数を限定できないかというと、もうすでになくなっちゃった国があるわけです。東ドイツなんて国はもうないですし、そういうのがあって、それを1カ国に数えるかといいますと迷いますよね(笑)

ヨーロッパが好きで、ポーランド以外は行っています。ヨーロッパは持っているものの厚みが違い、重厚な積み上げの歴史があるものですから、建築物や街に惹かれます。音楽だって古典音楽みたいな積み上げてきたものがあるでしょ。

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海外旅行が趣味という若宮さんは、簡単な英語しか話せないが、物怖じせずに積極的に話しかけるという/撮影:弓削ヒズミ

■ものすごく活動的ですが、何か健康のために気をつけていることはありますか?

思いつきません。運動や食事に気をつけているわけでもないです。

いまは、こうした取材に呼ばれたりして忙しいんですけど、それ以前から忙しい毎日を送っていましたから、自分自身のことを考えている暇がなかった。充実した日々が健康の源なのかもしれません。

今日みたいに5時半に起きないと間に合わないという日もあれば、前日帰ってくるのが遅かった日には6時半に起きたりとか、寝るのも眠くなったらと、自分が必要と感じたり、気分に応じて、あまり生活パターンを決めることはないです。

テレビの健康番組に出た時に、私以外にも90歳で卓球をやってる人、78歳のサーファーの人などもいましたが、その人たちもサプリを飲むだとか、スクワットを何回やるだとか、あまり、そういうことをやってらっしゃらない。毎日、自分がやりたいことに夢中なだけです。目標をもったり、夢中になれたりすることが、元気であることじゃないかしら。

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取材や講演イベントなど分刻みのスケジュールをこなす若宮さんは、スケジュール管理にGoogleカレンダーを利用しているという/撮影:弓削ヒズミ

■これからシニアになる人たちにアドバイスはありますか?

定年退職は終わりではなくて、音楽で例えれば第一楽章が終わっただけで、次の楽章はどんな構成でいくか、ワクワクするような、何か夢中になれることとか、興味を持って深めたい、広げたいものをやっていかれるのが一番いいと思います。健康で長生き、私は自分自身の人生しか生きてきてないのでわからないですけど。

友人の歯医者さんがいうには、夢中になれることは2つあるといいそうです。メンタルなものと、活動的なフィジカルなものの2つ。

例えば山登りが趣味の人が、骨折して動けなくなってしまったら、無趣味になってしまいます。だからといって家の中でパソコン相手の趣味でも気分が塞ぎがちになってしまいます。外に出る楽しみ、心を豊かにする楽しみ、その両方あるといいと言ってました。

■まさに、『明日のために、心にたくさん木を育てましょう』のタイトルどおり、自分の中に、たくさんの木を育てることですね。

そうです。それから、シニアになっても友人や知り合いが居ることが大切です。私は友人に恵まれていまして、いろんなところに私の応援団長が居て、いろんな形でサポートしていただいてます。この本のことも広めるよと言ってくれてます。

今度、出版記念パーティを開いてくださるのですが、メロウ倶楽部の中で結成された「メロウ楽団」も出演してくださります。その人たちのお住まいは、全国バラバラ。どうやって練習しているかといえば、インターネットで合奏できるアプリを使って遠く離れた場所でも練習してるそうです。名古屋の人がギターを弾いて、渋谷にいる人がアルトサックス吹いてるとか。さすがインターネット上で展開している高齢者の倶楽部だけに、やってることがすごいですよね。

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本書で「お友達パワー」という章を割いているように、若宮さんにとって、人とのコミュニケーションはとても大事なもの/撮影:弓削ヒズミ

■友だちに恵まれている若宮さんですが、コミュニケーションのコツは何でしょうか?

やっぱり、黙って部屋の隅にいないで、外に出ていかないと友だちは出来ないです。一緒に楽しく過ごして、それから、お友だちになってしまうのがいいですね。また、そのお友だちのために何かやってあげたいという気持ちも必要なんじゃないですか。

町内会の世話役だとかPTAだとかやっていれば、自然とお友だちは出来ますよ。外に出て行動しなくちゃ。私の周りのボランティアグループやNPO法人に入って世話役をやっている人は、志が高い人でしょ。そういう人と付き合っていると、いいお友だちになれます。

■この本の読者へメッセージをお願いします。

最近は、ネガティブな発想ばかりが先に立ってしまう人が多いらしいんですけど、この本みたいなスーパーポジティブばあちゃんもいるんだよって読んでいただきたいです。

明るい気持ちにならないと、先に進めないと思うんですね。だから、これを読んで明るい気持ちなってもらいたいですね。最初は、中年以上の方に読んでいただこうと思って書いていましたが、若い世代、子育て世代、いろんなライフステージの方に読んでいただきたいです。

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本書の内容が、一つでも何か役に立てば嬉しいという若宮さん/撮影:弓削ヒズミ

インタビューは、楽しく、明るい気持ちになりました。若林さんはとても好奇心旺盛で、心の中に、いくつもの木を持っているのだと思います。『明日のために、心にたくさん木を育てましょう』には、誰にでも一つは当てはまる、元気にしてくれる言葉が書いてある本です。この本を読めば、きっと、明るく頑張れると思います。

文・写真=弓削ヒズミ(編集部)2017年11月取材


■ Profile ■
若宮正子(わかみや・まさこ)

1935年、東京・阿佐ヶ谷生まれ。東京教育大学(現在の筑波大学)附属高校卒業後、大手都市銀行に就職。62歳で退職後、在宅で母親の介護をしながらパソコンでオンラインチャットを始めたことをきっかけにパソコンに夢中になる。現在“リケジョ(理系女子)”ならぬ“リケ老(理系老人)”として、自宅でパソコン教室を開くなど、高齢者にパソコンやスマホなどを普及する活動も積極的に行っている。愛称はマーチャン。

【著書紹介】
『明日のために、心にたくさん木を育てましょう』

著者:若宮正子/発行:ぴあ株式会社/定価:1,100円+税
発売:2017年12月7日/仕様:小B6判160ページ

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