いま注目のあの人

第16回:サックス奏者 坂田明さん①

いま輝いている素敵な人からお話を聴いてみたい。ただ、その想いでインタビューをするのが、このコーナー。今回はジャズサックス奏者であり、ミジンコ研究家としても有名な坂田明さんを訪ねました。現在、73歳の坂田さんは、ジャンルや年齢を問わず、さまざまなミュージシャンたちと共演したり、ヨーロッパやアメリカなどで海外公演も行うなど、精力的に活動しています。

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インタビューは、5月24日(木)、6月2日(土)にライブを行う千駄木にあるライブBAR「Bar Isshee」で行われた/撮影:弓削ヒズミ

音楽をやる人間がミジンコを見て、その「命」を感じている

■73歳の坂田さんは、現在も第一線のプレイヤーとして、いろんなジャンルの人たちと共演されていますが、その原動力は何でしょうか。

それは、おもしろいから出来るんですよ。別にジャズを追求する意味なんてないし、人間を追求しているわけだから。ジャンルなんか全然関係ない。楽しい瞬間は、いい音が出た時ですよ。全体の中でいい音が出た時が最高だね。

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「いくつになっても遅くないと思うんですよね。やりたいことがあったら、すぐやればいいんですよ」と坂田さんは語る(2016年10月30日/秋葉原CLUB GOODMAN)/撮影:弓削ヒズミ

■演奏以外にも、ミジンコ研究でも有名ですが、どのような研究をしているのですか。

顕微鏡で見たり、撮影したり、いろいろしてますけど、研究者のやっている研究とは全然違うんですよ。音楽をやる人間がミジンコを見て、その「命」を感じています。音楽というのは、「命」のある人間がやるもの。じゃあ、その「命」って何だろうって。

自分の命、人間の命、ミジンコの命、あらゆる命の中から、いろんなものを感じたり、考えたりできる。オレにとって、ミジンコはそういう存在だよね。

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ミジンコについて尋ねたところ「ミジンコと自分とは命として等価だと思っている関係。なんら、そこに差があるとは思ってない」とコメント/撮影:弓削ヒズミ

自然界に「掟」はなく、あるのは「システム」だけ

■音楽活動にも影響を与えているのでしょうか。

もちろん、音楽を作りたくさせるよね。命が透けて、動いてる姿、彼らミジンコは生きているんだよね。

人間はミジンコと違い、「哲学」がないと生きていると言えないところがある。自分をどのように制御して、どんな方向に持っていくか、「哲学」がないと、糸の切れた凧のようになってしまう。だけど、生き物には、そうした「哲学」は必要ないんですよ。「システム」そのものが「生きる」ように出来てる。

生き物同士のつばぜり合いみたいなことはあるんだけど、どっかで折り合いをつけるとか、どちらかが勝つとか、やもえない「システム」のぶつかり合いはあるよ。それを世の中の人は「掟」というけど、自然界に「掟」はないの。自然界にあるのは「システム」だけ。自然界では「掟」を破るもクソもない。「掟」というのは人間が作った考え方だからね。生きるという「システム」を続けているだけ。地球が出来てから、ずっと地殻変動が行われ、その中で、適応して来た奴だけが生き残っているわけだから。

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「TRANSPARENTZ」とノイズ・セッションを行う坂田さん(2016年10月30日/秋葉原CLUB GOODMAN)/撮影:弓削ヒズミ

■音楽活動やミジンコ研究以外の趣味はありますか。

酒だね(笑)

基本的には毎日呑んでるけどね、ビール飲んで、あとはあるもの飲んでって感じ。家で家内と飲むときもあるし、外に飲みに行くこともあるよ。ライブ演奏が終われば、こういうところで打ち上げで飲んでるから(笑) でも若い頃は、酒は強くなかったですよね。いつも「ゲロゲロセブン」ばっかりで、吐いてばかり(笑) 歳をとったら強くなってました。

■そうやって、お酒を飲まれていると、何か健康対策のようなものは?

健康対策は運動することだね。朝起きたら、ごはんを食べる前に運動をしています。ストレッチと体幹とインターバルトレーニングを毎日20分やってます。ツアー中でも、世界中どこへ行ってもヨガマットとゴム紐は持っていきます。

運動してなきゃ、楽器は吹けないし、荷物を持って移動もできないし、気力体力も充実しない。運動していればサックスを吹くときの息のコントロールがうまくいくんですよ。

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「若い頃は基本的には土方仕事やって、百姓もやってましたし、体は動かしてましたね。ダンプカーに乗って時もありましたよ」と坂田さん/撮影:弓削ヒズミ

70過ぎてからの方が楽しくなってきてる

■ご自身で「歳をとったな」と思ったことはありますか。

そりゃありますよ。50代で人生のジレンマを感じました。

30代、40代は、まだ自分では若いと思っていたけど、50代になったら、それは錯覚だとわかって、そこのギャップに迷ったりしてましたね。その後、1回当たっちゃったの。脳溢血に。

でも、脳溢血から復帰して、トレーナーの人と出会ったり、各国の若いミュージシャンたちが助けてくれた。若いといっても30〜40代だけど、オレのレコードを持っているとか、ファンであるとか言ってくれて、その時、頑張んなきゃダメだなと思ったよ。

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「TRANSPARENTZ」とノイズ・セッションで、轟音のなか、ひたすらシャウトする坂田さん(2016年10月30日/秋葉原CLUB GOODMAN)/撮影:弓削ヒズミ

16年ぐらい経って、全然違った世界になった。いま、ヨーロッパとか、アメリカとか行ってますけど、坂田明という人間が、あちこち回って活動しているぞ、ってことを定着させるまで約10年。70過ぎてからの方が楽しくなってきてるんじゃないかな(笑)

70歳を過ぎて、いろんなことが試せるようになったな。自分とは全然違う連中が、いろんなことを言ってきてくれるから、そういう連中と一緒にやっちゃうんだ。そうすると新しい世界が見えるんだ。オレ、こだわりないから。何でもいいんだ。ジャンルも歳も関係ない。一回りどころか、孫ぐらいの27、28ぐらいの子とも共演してるよ。若いエネルギーに対して、自分は何が出来るか一歩踏み出してみるんだ。それが、自分のエネルギーにもなるよね。

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「ジャンルも歳も関係ない。ひとまわりどころか、孫ぐらいの27、28ぐらいの子とも共演してるよ」と坂田さんは語る/撮影:弓削ヒズミ

■演奏活動、ミジンコ研究、何でもいいのですが、今後、やってみたいことや目標はありますか。

なるようになるプランクトン生活ですよ(笑)

周りにおもしろそうなことがあれば、それに、すぅーとフラフラしながら近寄って、何かヤバそうなら、とりあえず正面衝突避けて、スルっと抜けて、おもしろいことをやる(笑)

第17回:サックス奏者 坂田明さん②に続く

文・写真=弓削ヒズミ(編集部)2018年4月取材


■ Profile ■
坂田明(さかた・あきら)

1945年、広島県呉市出身、広島大学水産学科卒業。72年〜79年山下洋輔トリオに参加、80年より「Wha ha ha」「SAKATA TRIO」結成してヨーロッパツアーを皮切りに独立。以後様々なグループの形成解体を繰り返しながら世界中をあちこちぐるぐるしながらあれこれして今日に至る。近著は「私説ミジンコ大全」CD「海」付(晶文社)。
公式サイト

Live Information ■
坂田明 Pak Yan Lau & Lynn Cassiers

2018年5月24日(木)/千駄木Bar Isshee
開場:19:30/開演:20:00

坂田明、美川俊治、中尾憲太郎、セッション
2018年6月2日(土)/千駄木Bar Isshee
開場:19:30/開演:20:00

【取材協力】
千駄木Bar Isshee

文京区千駄木3-36-11 千駄木センチュリー21 地下1階

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