いま注目のあの人

第17回:サックス奏者 坂田明さん②

いま輝いている素敵な人からお話を聴いてみたい。ただ、その想いでインタビューをするのが、このコーナー。今回はジャズサックス奏者であり、ミジンコ研究家としても有名な坂田明さんを訪ねました。現在、73歳の坂田さんは、ジャンルや年齢を問わず、さまざまなミュージシャンたちと共演したり、ヨーロッパやアメリカなどで海外公演も行うなど、精力的に活動しています。

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インタビューは、5月24日(木)、6月2日(土)にライブを行う千駄木にあるライブBAR「Bar Isshee」で行われた/撮影:弓削ヒズミ

第16回:サックス奏者 坂田明さん①

プライドなど、すべてを捨てて、一人の人間になること

■これからシニア世代になっていく人たち、特に男性は、自分のやりたいことが見つからないという声もあるのですが。

いままで会社で勤めてきた男性に多いのかな。非常に残念なことだと思うけど、それは、今まで「安心」を買ってきたわけでしょ。ちゃんと勤めて給料もらって、退職金もらって、それで過ごして、金銭的には問題ないかもしれないけど、いきなり、屋根の上にいたら梯子外されちゃったようなわけだ。

屋根の上じゃなくて、大地に降りてきて、みんなと何かをするということに関しては、これまで命令していた子分みたいな奴の言うこと聞かなきゃならなくても、すべてを捨てるしかないんじゃないかと思うのね。一人の人間になることだね。

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「日本では酒飲んでも会社の話をしているけど、外国の人間は、飲み屋で会社の話をしてるようなのは居ないよね。大抵、音楽や文化の話だよ」と坂田さん/撮影:弓削ヒズミ

何十年も会社人間で、酒飲んでも会社の話をしていて、会社の人と話して、人間関係がどうのこうのと話をしているから、脳がそうなってしまい、普通のことを考えるのが難しくなってしまうんだろうね。

人間の頭は凝り固まっていくところがあって、その凝り固まっているところを、解きほぐすということが必要なんだ。50年凝り固まっていたら、解きほぐすのにも50年かかるんじゃないかと思うんだよね。それを一挙に急速解凍するのは無理がある(笑)

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伊藤多喜雄さんと共演したライブ。民謡でもジャズでもない、不思議なサウンドが聴衆を惹きつける(2018年03月29日/目黒APIA40)/撮影:弓削ヒズミ

いろんなものを自分の身体に浴びる

■急速解凍できないから、定年退職する前から準備しておいた方がいいわけですね。

そうだよね。もう定年退職するのはわかってるんだから。極端に言うと、自分が社長や会社のトップに登りつめてやろうというのは別の世界だと思うんだけど、中間管理職で終わってしまう、それ以前のところで終わってしまう人もいるわけじゃない。それは、ある程度、自分の人生が見えているわけじゃない。60、70になって定年になったらどうするか、前もって準備して、ある意味、クロスフェードするような移行の仕方もあるよ。急に梯子外されてどうしようっていうのはダメだよ。

急に骨董屋をはじめようという人もいるかもしれない。それでも、早いうちから、イイ物を見ていないとダメだよね。何をやるにしても、たくさん見ないといけないし、たくさん食べないといけない、たくさん飲まないといけない、たくさん聴かないとわからない、いろんなものを「自分の身体に浴びる」ことをしないと。企業社会で企業のことばっかじゃ、企業人間から脱却するのは難しいと思うんですよ。

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「オレの生まれてから73年は、そのまま『戦後』なんだ。子どもの時は物はなかったけど楽しかった。凧紐に磁石をぶら下げて、それを引きずって歩いているとクギだのボルトだのひっついてきて、それをクズ鉄屋に持って行って小銭をもらって、それで飴玉買ってたな」と坂田さんは振り返る/撮影:弓削ヒズミ

■何かやりたいことが見つかったら?

やりたいことがあるんだったら、どうすれば出来るか、考えればわかること。わかってて、それを毎日出来るか、そうとうなモチベーションがなきゃできない。

オレが朝飯の前に20分体操するというのはね、そうとうなモチベーションがあるからできるんだよね。つまり、今日演奏して、後で酒が飲みたいっていうのも全部含めて(笑)

これをやってなきゃ、演奏も出来なければ、酒も飲めないぞと、翌日、気持ち良く起きて、また体操して、朝ごはんを美味しく食べれて、毎日が送れるというのは、すごくいいスパイラルになってる。だから、大事なことは自分がどういう目的でそれをやろうとしてるかってこと。

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「不安というのは持ってないんだよね。でも、演奏できない状態で生きていることにはなりたくないな」と語る坂田さん/撮影:弓削ヒズミ

オレらが企業で働いているような年齢の時も、いま現在も生活のスタイルはずっと一緒。そういうことでは、何の変化もない(笑) だから不安というのは持ってないんだよね。でも、演奏できない状態で生きていることにはなりたくないな。一度は当たって、結構、ヤバかったけど、元のような状態まで戻って、もう1回当たったら、お終いなんだけど、それでもイイと思うの。今日をちゃんとやって、今日の晩は死にたくないんだよね、酒飲んでないし(笑) 明日の朝、起きたら死んでるみたいだったらいいな(笑)

 

オレらは別に失うものはない。別に威張る必要もないし、みんなと対等だし、むしろ、若者と対等な精神状態で、同じ目線、同じ価値観を共有できるスタンスのなかに居ることが、自分としての役割だと思う。いまの73歳のじいさんとして。73歳でも、こういう状態でいれるんだよって、そうすると楽しいよって。オレはそういう奴だって。

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ライブ中、サックス演奏はもちろんのこと、時には歌い、時にはトークで会場を笑いに誘う(2018年03月29日/目黒APIA40)/撮影:弓削ヒズミ

今回のインタビューでは、ミジンコのように、あるがままに「生きる」坂田さんのライフスタイルを聴かせていただきました。ライブステージでパワフルに演奏している姿とは、また違った印象で、とても貴重な体験となりました。これからのシニアライフに迷いがある人がいたら、ぜひ、坂田さんの演奏を聴きに行った方がいいと思います。きっとパワーをもらえるはずです。

文・写真=弓削ヒズミ(編集部)2018年4月取材


■ Profile ■
坂田明(さかた・あきら)

1945年、広島県呉市出身、広島大学水産学科卒業。72年〜79年山下洋輔トリオに参加、80年より「Wha ha ha」「SAKATA TRIO」結成してヨーロッパツアーを皮切りに独立。以後様々なグループの形成解体を繰り返しながら世界中をあちこちぐるぐるしながらあれこれして今日に至る。近著は「私説ミジンコ大全」CD「海」付(晶文社)。
公式サイト

Live Information ■
坂田明 Pak Yan Lau & Lynn Cassiers

2018年5月24日(木)/千駄木Bar Isshee
開場:19:30/開演:20:00

坂田明、美川俊治、中尾憲太郎、セッション
2018年6月2日(土)/千駄木Bar Isshee
開場:19:30/開演:20:00

【取材協力】
千駄木Bar Isshee

文京区千駄木3-36-11 千駄木センチュリー21 地下1階

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