社会の知識を学ぶ

シニアから始める趣味の写真~ピントテクニック編

カメラは所有しているけれど、今ひとつ絞りやシャッタースピードが良く分からない。PSAMというモードはどう使えばよいの?そんなカメラ初心者のあなたに、今更聞けないカメラの操作方法をお伝えしていこうと思います。ここをご覧頂くことで、実際の撮影テクニックが少しでも向上するのであれば嬉しく思います。

撮影: ©Office ADON2019

気になる「絞り」と「シャッタースピード」について。

デジタル一眼レフやミラーレス一眼、高級コンデジクラスのカメラでできることのひとつに「絞り」「シャッタースピード」の設定があります。実はこのふたつの設定、相関関係にあると言えます。例えば……

レンズの絞りF2.8の時のシャッタースピード1/2000秒

レンズの絞りF4の時のシャッタースピード1/1000秒

レンズの絞りF5.6の時のシャッタースピード1/500秒

レンズの絞りF8の時のシャッタースピード1/250秒

レンズの絞りF11の時のシャッタースピード1/125秒

……この設定すべてが、同じ露出となります。

レンズは絞り込んでいくことで入ってくる光の量が減っていきますが、同じ光量を得るためにはシャッタースピードを変化させていかなければなりません。これはカメラの原理原則のひとつであり、覚えてしまったほうが早いと言えます。

撮影: ©Office ADON2019

ちなみに絞りはF1.4/F2/F2.8/F4/F5.6/F8/F11/F16/F22と数字が増えていくことで、それぞれ入光量は半減していく仕組みになっています。これをカメラ用語として「ひと絞り」と呼びます。中にはF1.8やF3.5という表記もありますが、これはひと絞りの半分の光量を意味しており、「半絞り」と呼んでいます。 では絞りを絞り込んでいくと何が起きるかという話を、次の章でご説明していきます。

「被写界深度」と「パンフォーカス」について。

「被写界深度」と「パンフォーカス」……何か聞き慣れない名称が出てきましたが、これも写真撮影ではよく使われている言葉です。

被写界深度の浅い写真 /撮影: ©Office ADON2019

【被写界深度とは】

これは撮影した時のピントの範囲のことです。上の写真をご覧ください。中心にピントの山が来ていて、前後が徐々にボケが大きくなっていくことが分かります。このピントの合っている範囲の深さを【被写界深度】と呼んでいます。

絞りをF2やF2.8などの明るいほうに合わせることによって、このような手前と背景側がボケる写真となります。そして絞りをF5.6やF8に絞り込んでいくことで、ピントの合う範囲が大きくなっていきます。ちなみに手前・背景のボケの大きな状態を“ピントが浅い”とも表現し、最も明るい状態の絞りを“絞り開放”と呼んでいます。

【パンフォーカスとは】

こうしてどんどん絞り込んでいくことでピントの合う範囲が広がっていきますが、最終的に“すべてにピントが合う”状態になります。

言い換えれば、被写界深度を深くすることにより、近くのものから遠くのものまでピントが合う状態ですが、これを写真の世界では【パンフォーカス】と呼んでいて、“無限遠”と表現されることもあります。下の写真はこのパンフォーカスで撮影されていますが広角レンズのほうが絞り込むことでパンフォーカスになりやすい傾向にあります。

パンフォーカスで撮影された写真/撮影: ©Office ADON2019

「被写界深度」と「パンフォーカス」……実際の使い方。

ここでは実際の撮影シーンでの使い方を見ながら「被写界深度」と「パンフォーカス」を理解していていきます。

【人物撮影・ポートレイト】

できるだけ絞りを明るいほう(F2~F4程度)に合わせて背景をボカして撮影します。

被写体をレンズに近づけることにより背景のボケが大きくなります。

この「人物撮影・ポートレイト」では、標準レンズ~望遠レンズを用いたほうが狙った背景ボケが得られると思います。

【マクロ撮影】

花などを拡大して撮影するマクロ撮影でも、ピントの芯を中心に周辺をぼかすと、ふわっとした写真になります。この場合も絞りは明るいほうに合わせます。

マクロ撮影された時計/撮影: ©Office ADON2019

【物撮り】

オークションに出品する品物写真や、日々食べ歩いた料理の写真などは、ある程度ピントが合っていないときれいに見えないことがあります。こういう時には絞り込んだほうが思い通りのイメージが得られると思います。

ピントの合った料理写真/撮影: ©Office ADON2019

旅先での風景写真などは、広角レンズを用いてパンフォーカスで撮影すると、隅々までピントが合いイメージ通りの写真にすることが出来ます。パンフォーカスで撮影できる範囲はレンズの焦点距離ごとに異なりますが、できるだけF8以上に絞り込んでピントを遠景(∞)に合わせることで、全体にピントが合ったイメージが得られるはずです。

【風景写真】

パンフォーカスで撮られた風景写真/撮影: ©Office ADON2019

【スナップ・散歩写真】 写真の基本とも言えるストリートスナップですが、基本はパンフォーカスで撮影することが多いです。ピントを気にせずに被写体に向き合えることから、F8以上に絞り込んで撮影することが多いです。オートフォーカスカメラが生まれる前のフィルムカメラ時代だと、28mmレンズの場合は絞りF8で焦点距離3メートル、35mmレンズだとF8で焦点距離5メートルで、ほぼパンフォーカスになることから、この固定焦点を覚えてスナップしていたものです。

【筆者紹介】 吉村ひろゆき;1958年東京・中野生まれ。20代の頃よりストリートスナップに目覚め、本業の広告制作の傍ら、これまでにモノクローム写真を中心に個展を6回開催する。JAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)正会員。

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