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自筆で遺言書、7つの落とし穴

さて、そろそろ「遺言書」でも……。そう思うと、筆は、墨は――と、色めき立つ人もいるかもしれません。 しかし、心配はご無用!「遺言」をしたためるのに、特別の道具は要りません。紙だって、チラシの裏でもいいのです。

自筆で遺言書、7つの落とし穴

イラスト:弓削ヒズミ

表題、本文、作成日付、署名にいたるまで、
すべて、本人による「手書き」であること。

いま、書店や文具店では、「遺言書作成キット」なんてものが売れているのだそうです。それだけ、遺言書への関心が高まっているのかもしれません。

公証人を通さず、自分で作成することができる法的な遺言書を「自筆証書遺言」というという話は、前にも書きました。この「自筆証書遺言」なら、そんなキットを購入しなくとも、紙とペン、印鑑さえあれば、だれでも書けます。

ただし、それを法的に有効なものにするためには、絶対に順守すべき決まりがあります。それは、

これが、絶対条件なのです。
たとえ、家族や知人に達人級の筆の使い手がいたとしても、

代筆させてはダメ。
パソコンやタイプライターでの記述もダメ!

また、遺言書は一個人で作成するものですから、いくら仲のいい夫婦でも、「夫婦連名」というのもダメなのです。残念ながら――。

チラシの裏に書いてもOK…?

用紙についても、制約はありません。コピー用紙、和紙の巻物、ノートの切れ端、布、チラシの裏だって構わないのです。見てくれ、格好さえ気にしなければ……。

筆記具も、万年筆、筆ペン、ボールペンなど何でもOK。インクも、黒でなくても大丈夫です。

もちろん、縦書き、横書き、どちらでも気の向くままに。

法的な書類のわりには、意外と自由に作ることができるので、遺言書に「自分らしさ」を表現してみてもおもしろいかもしれません。

ただ、保管することを考えると、丈夫な紙がベターかもしれません。筆記具も、鉛筆やシャープペンシルのような簡単に消せるものは、改ざんされる恐れがあるので避けるべきです。

大事なのは、「いつ」「だれが」という情報

わりと自由に作れる「自筆証書遺言」ですが、ただし、絶対に欠かしてはいけない要素があります。

それが、次の3つ。

  • 作成年月日
  • 署名
  • 押印

つい書いてしまいそうになるかもしれませんが、「○年○月吉日」ではダメ。「吉日」では、書かれた期日がわからないからです。きちんと、「○年○月○日」と記載しましょう。

押印のない遺言書も、「無効」にされてしまいます。印鑑は、三文判などの認印でも大丈夫ですが、できれば実印を使いましょう。印鑑証明を添えて一緒に保管しておくと、家庭裁判所での検認手続きが円滑に進められます。

実際の「自筆証書遺言」のサンプルを挙げて、書き方のポイントをまとめておきましょう。

自筆で遺言書、7つの落とし穴

遺言書要点

書いた遺言書は、どこに保管する?

遺言書は、作成したらおしまいではありません。遺言書を作ったことをだれかに伝えておくことが大事です。せっかく作成した遺言書なのに、だれも、その存在を知らない――というのでは、意味がないからです。

問題は、それをどう保管するかです。

相続者本人に託してもいいのですが、愛人や隠し子にも財産を相続させたい……など、後々、家庭不和を生みそうな相続内容が含まれている場合も、あるかもしれません。そういう微妙な内容の遺言書は、信頼できる第三者に保管を依頼したほうがいいかもしれません。

厳重に保管したい場合には、金融機関の貸金庫を利用するという方法もあります。

「自筆証書遺言」の場合、その内容を法的に「有効」とするためには、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所で遺言内容を確認する「検認手続き」が必要となります。そのことも相続者に伝えておきましょう。


編集部・シゲP記者
70代のじいちゃん記者。長年、編集者として数々の書籍やムックの出版に携わり、いまは執筆者として多くの作品を発表。いまだ現役としてアクティブに活躍している。

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