健康な体づくり
舌が痛い!口腔内トラブルの症状と対策~舌痛症チェックリスト
健康バロメーターの一つに「舌」があります。年齢を重ねて入れ歯や義歯が合わなくなり舌を傷つけたり、口の中に細菌が繁殖して炎症を起こして舌が痛むケースは少なくありません。また最近では原因不明の舌痛症に悩む人も増えています。今回は舌の痛みの原因と対策を紹介いたします。
高齢になると口の中にさまざまなトラブルが発生します。
口腔内は唾液の力が弱まり、細菌が増殖して歯周病になりやすくなります。また加齢によって歯茎が下がり、歯の根元が露になると虫歯が増える原因になります。
介護現場では、詰め物や入れ歯をしている利用者さんは多いです。詰め物をしている場合はその下で虫歯が進行していたり、入れ歯と粘膜の隙間で細菌が繁殖している場合もあります。
なかでも意外と多いのが、舌の違和感を訴える方です。
歯がすり減って尖っていたり、歯の被せものが欠けていたり、入れ歯が合わなくなることが原因で刺激となり、「舌がヒリヒリする。味覚障害や痛みを感じる」などの声もよく聞きます。
舌の痛みの原因と対策
舌の痛みにはいくつかの原因が考えられます。
①入れ歯や義歯による刺激
入れ歯のサイズが合わなかったり、義歯をしている方は、食事や会話中に舌を傷つけてしまうことがあります。また歳を重ねる中で歯がすり減り、尖ってしまった場合も舌を刺激してピリピリと痛むケースがあります。
<対策> 歯科で処置を受ける
入れ歯や義歯が合わなかったり、自分の歯が尖って舌に当たるなどして痛みが生じる場合は、歯科を受診しましょう。歯列矯正装置に違和感を感じるときも同様です。
舌はとてもデリケートです。常に刺激を受けていると防御機能が低下して細菌に感染する可能性が高まります。違和感を感じたら放置しないで適切な処置をしてもらいましょう。
②口の中の汚れ
食後の歯磨きや、うがいが不十分だったりすると、舌の先にある割れ目の部分に食べカスなどの汚れが溜まります。そこに細菌が繁殖すると舌が炎症を起こしてピリピリと痛むことがあります。
<対策> 口の中を清潔に保つ
毎食後3分間ほど丁寧に歯磨きをするだけで、細菌の繁殖予防につながります。市販のうがい薬で口の中を洗浄するのも効果的です。
しかし舌苔(舌に付着する白い苔状のもの)は、舌を保護するためにある程度は必要なものです。歯ブラシで舌を磨いて無理やり取ろうとするようなことはやめましょう。
③舌の痛みを引き起こす疾患
舌の痛みを引き起こす疾患もあります。最も一般的なのは口内炎です。
アフタ性口内炎は、主に口の中の傷ついた部分に細菌やウィルスが感染して起こるといわれています。また疲れや精神的ストレスなども誘因になると考えられています。特徴としては、初めは粘膜に米粒大の白いただれができて周囲が赤く腫れて痛みます。
またカンジダ性口内炎という炎症もあります。これはカビの一種であるカンジダ菌によって舌にできる口内炎です。表面に白いブツブツがあらわれますが、痛みはほとんどありません。免疫力の弱い子どもや、体の免疫力が低下している人がかかりやすいといわれています。
<対策> 病院で医師の診察を受ける
舌の痛みが続いたり、何かできたときは、耳鼻咽喉科や口腔外科での診察をオススメします。舌だけではなく、あごやのどに鋭い痛みが走るときは神経内科も受診の対象になります。
舌痛症の特徴とは
口腔内のトラブルのひとつに「舌痛症(ぜっつうしょう)」があります。ここ数年、病院を訪れる60歳前後の女性が増えているそうです。
舌痛症の特徴は、舌の見た目に異常がないのに舌がヒリヒリ、ピリピリと痛みを感じることです。舌痛症になると灼熱感と呼ばれる火傷をしたような強い痛みを感じるケースもあります。
実は舌痛症のはっきりした原因は分かっていません。更年期の女性に多いことからホルモンのアンバランスや自律神経の変調なども関係があるとされています。また最近では心理的要素も重要な原因と考えられ ています。
舌痛症は本人が感じる痛みが全てです。他人が見ても異常がないのでなかなか理解してもらえない病気です。まずはセルフチェックをしてみましょう。
舌痛症5つのチェックリスト
① 口の中の粘膜が3ヶ月以上、ピリピリとした痛みが続く
② ガムやアメなどを舐めると症状が和らぐ
③ 寝ている間は痛みを感じない
④ 口の中が乾燥している
⑤ 1日の中で痛みの時間が変わったり、痛い場所が変化する
上記の症状がある場合、舌痛症を疑ってみる可能性があります。もちろん別の病気の可能性もありますので、一度検査してもらうことをオススメします。
舌痛症の場合、口の乾燥を訴える方が少なくありません。一般に口の中が乾燥してくると、舌や歯肉の粘膜は炎症を起こして痛みを感じるようになります。そして辛味や塩味などの刺激に敏感となり、食事が摂りにくくなるケースもあります。
舌痛症の方に共通していることは食事の間の方が、むしろ痛みは楽になることです。このため無意識にガムをかんでいる人も多いようです。舌痛症は、性格が真面目で几帳面な女性に多く現れるといわれています。
<対策> 薬物療法や漢方、心理療法
現在、舌痛症の治療にはさまざまな方法が行われています。最も有望な治療法は薬物療法とされています。薬の服用で軽快することもあります。
また漢方薬や唾液分泌促進剤などで改善することもあります。他にも認知行動療法を含めた生活指導・カウンセリングなども行われています。
他にも分かる。舌でみる健康状態。
健康を測るための目安となるのが、舌苔(ぜったい)と呼ばれる、舌に付着する白い苔状のものです。手鏡などでチェックしてみましょう。
通常の舌は、薄いピンク色にうっすらと白いものがかかっています。この白いものが舌苔で体調によって色や厚みが変化します。
健康バロメーターとして気をつけたい色は、黄色や茶色です。こうした色の場合は胃の調子が悪いことが疑われます。
また舌苔がなくて、舌がスベスベしている状態も注意が必要です。極度の貧血やビタミンB2の欠乏が考えられます。
さらに黒色になっている方は抗生物質の飲みすぎが疑われます。色が濃くなったときは一度、診察を受けるようにしましょう。
文=大屋覚
≪参考ウェブサイト≫
■ Profile ■
大屋覚(ライター)
医療、介護、福祉を中心に取材や執筆を行う。高齢者・障がい者、子育て支援の現場に携わり、介護福祉のやりがいや問題点などを伝えている。強度行動障害支援者。早稲田大学・同大学院修了(博士後期課程退学)。