いま注目のあの人
第4回 : 個性的なファッションの直木賞作家
志茂田景樹さん②
いま輝いている素敵な人からお話を聴いてみたい。ただ、その想いでインタビューをするのが、このコーナー。今回は、カラフルなファッションでおなじみ、個性的な直木賞作家・志茂田景樹さんにお会いしてきました。現在、作家活動のほか、子どもたちへ読み聞かせ活動、講演会などで全国をめぐり、精力的に活動のフィールドを広げています。いくつになっても変わらないバイタリティの秘密とは。
第3回 : 個性的なファッションの直木賞作家 志茂田景樹さん?
撮影:弓削ヒズミ
歳を積み重ねていくっていうのは、自分を磨くこと
リタイア間近の方々に、これからシニアになるためのアドバイスはありますか?
自営業であろうと、勤め人であろうと、競争社会で生きてきた人たちですからね、その感覚のままシニアになると戸惑いが生まれると思うんですね。会社組織にとって当たり前のことも、定年退職しちゃえば、まったく関係ないことなんですよ。リタイアしてはじめて違う社会を知って、精神も神経も当惑しちゃうんですね。そこから意識が下がって、若さがどんどん失われていきます。
会社にいた時の人間関係というのも、ほとんど消えてなくなります。だから、リタイア前にいろんなことを考えるんだったら、人間関係をもっと幅広くしておくといいでしょう。たとえば、会社とは離れた業界の人に求めるとか、世代の違う友人をつくってみるとか。40代の時に20代の友だちを作っておけば、60になっても相手は40代なんで、リスペクトされてる感じだったら、シニアになってからも付き合いが続いて、現役からの刺激をもらえて、もっと良い友人関係となるでしょう。
あとは継続するものをもつこと。学生時代に絵画をやっていたとしましょう。趣味か、画家を目指していたのかもしれないけど、それほどの才能もなくて、ふつうのサラリーマンになってしまいました。でもサラリーマンになっても少しの時間でいいから、絵を描く行為を続けていたら、リタイアした時、そこにエネルギーを注げます。リタイヤしたら時間があるのだから、じっくり取り組んで、個展を開いてみてもいいでしょう。
「現役からリタイアして、気持ちを切り替える重要なポイントは趣味なのかもしれないし、継続できる夢だと思いますね」と語る志茂田さん/撮影:弓削ヒズミ
歳を重ねていくことについて、どう考えてらっしゃいますか?
歳を重ねていくっていうのは、人生を一本道に例えれば、道の左右に新しい景色が加わっていくようなものです。単に歳をとるのではなく、いままで知らなかったこと、わからなかったことが、理解できてくる。あるいは、知らなかったことを新たに吸収する。いろいろ積み重ね、自分自身を磨いていくことは生涯続くことだと思うんですね。
周りに迷惑かけずに、なんとなく人生を終えられたらいい、もう歳だからと「終活」だけを考えている人も多いです。でも、このような考え方だと、年齢を積み重ねてから、あまり元気でいられないと僕は思うんですね。その人の意識が人の将来を決めていくんじゃないかな。お寺の手配がどうのなんてことをやってると、イメージの中に自分の棺桶を描いてしまっているんじゃないかと。あくまでも僕の考え方ですが。
歳を積み重ねていくっていうのは、自分を磨くことで、周りにいっぱいある刺激物と、さらに出会っていくわけです。そういうものを研磨剤として、自分を磨いていこうという考え方にならないと、歳を積み重ねても、楽しく、元気になれないでしょう。
いまでも生活サイクルは、だいたい10時間は仕事に費やしているという/撮影:弓削ヒズミ
最近では女性の下着広告にも出演されてますしね(笑)
ははは(笑) それは興味というより、僕だったら理解してくれるだろうとお願いされたので、引き受けたんです。
「自分という人間がおもむくまま」、これを大切にしたいと思いますね。人生というのは明日のことはわからないじゃないですか。突然、太陽が爆発してね、太陽系が終わってしまうことだってあるんだし。だから終活とか、そういう意識じゃなく、やりたいことはやっておく。いつでも覚悟を決めとけば、あとは恐れるものはないわけですから、じゃあ、自分を出していこうかな、それでいいんじゃないかな。
「いろんな刺激物と出会い、それを研磨剤として、自分を磨いていかないとなりません」と、前向きな気持ちが元気に繋がると語る/撮影:弓削ヒズミ
20年ほど前、バラエティ番組によく出演されていた頃から、ほとんど変わらぬ個性的なカゲキファッションを続けられている志茂田先生。常に自分に正直な気持ちで行動されている姿は、まさにダンディな大人(シニア)だと思いました。
文・写真=弓削ヒズミ(編集部)2016年11月取材
■ Profile ■
志茂田景樹(しもだ・かげき)
1940(昭和15)年3月25日生まれ。中央大学法学部卒業。1976年に小説現代新人賞を受賞し小説家としてプロデビュー、1980年に『黄色い牙』で直木賞を受賞、その後も数々の作品を執筆。1990年代になり、バラエティ番組やドラマ番組に出演し、その派手なファッションが話題に。1999年から「よい子に読み聞かせ隊」を結成し、いまも全国をまわり活動を続けている。現在、Twitterでの人生相談が話題となっている。
公式ページ