いま注目のあの人
第19回:美容と福祉をつなぐ 山野愛子ジェーンさん①
いま輝いている素敵な人からお話を聴いてみたい。ただ、その想いでインタビューをするのが、このコーナー。今回は、美容を通じて高齢化社会の福祉向上を目指す「美容福祉」を提唱する美容家・教育者である山野愛子ジェーンさんを訪ねました。人の気持ちを前向きにしてくれる「美容」のパワーとは。
山野愛子ジェーンさん/撮影:弓削ヒズミ
美容は人を元気にさせる薬のような存在
■いまのシニア世代についてどう思われますか。
初代・山野愛子先生が亡くなられる前から、私の周りは、60〜80代、最近では90代の、元気なシニアの方々が大勢います。だから、年齢に関係なくイキイキしているのが当たり前だと思っていました。着付師、美容師など、長年「美容」に関わってらして、ヘア、メイク、身だしなみをしっかりされている方々です。皆さんを見ていると、積極的に外に出かけること、人と会話を楽しむことが、元気の活力だと思います。
山野愛子ジェーンさん/撮影:弓削ヒズミ
■美容の社会的な役割とは何でしょうか。
美容はとても大事だと思います。月に1回は、美容室に行ったり、フェイシャルマッサージやネイルを施したりするのが必要ではないでしょうか。キレイになれば外に出かけたくなり、人と会いたくなります。そうすると、食事に行こう、ショッピングをしよう、そうやって連鎖しながら、活動的な気持ちが湧いてきて、どんどん明るくなります。
年齢は関係なく、ご自分の好きな服を着てみればいいと思います。70代以上の方でもウエディングドレスを着てみればいいのです。周りの人、家族も応援してあげましょう。それが暮らしにハリを与えて、元気と長生きにつながるのではないでしょうか。美容は、人を元気にさせる薬のような存在。それが私たちの「美齢学」になります。
山野愛子ジェーンさん/撮影:弓削ヒズミ
■男性の場合はどうしたらいいでしょうか。
男性も同じですね、山籠りしていたような無精髭にボサボサの髪ではいけません。じつは主人の父が入院していまして、私がお見舞いに行くからきちんと髭を剃って、髪も整えておいてよと伝えておいたのに、全然やっていなくて。でも、看護師さんに話を聴いたら、義父も何かしようとしてたらしく、慌ててたそうです(笑)
さっきスマートフォンのFaceTime(動画通話アプリ)を繋いでみたら、髭も髪もきちんと身なりを整えていたので「OH! ハンサム、トゥディ!」と伝えました。でも、ここが大事なところ。誰でも、身なりや容姿を褒められるのは嬉しいものです。相手への想いを大切しましょう。
山野愛子ジェーンさん/撮影:弓削ヒズミ
話すときは「スマイル」「感謝の気持ち」を忘れない
■日本とアメリカの違いはありますか。
どちらも歳をとると頑固になります。ただ日本ほどではないように思います。例えば、飛行場のラウンジでスタッフに何かお願いしたときは、アメリカでは必ずジェントリーに「ありがとう」と言いますが、日本では、やってもらって当たり前な態度の方が多い気がします。
■特に男性に多いですよね。
そうそう! 私も言おうと思ってました(笑) だけど、変えられるチャンスはたくさんあります。
■いろいろな方にインタビューして、よくお聴きするのは、会社で部長や専務など役付きになった人ほど、定年後も会社での立場と同じ気持ちで人付き合いをしてしまい、煙たがられ、コミュニケーションができないのだとか。
社会的対面の習慣からはなかなか抜け出せないものですよね。だからこそ、話すときは「スマイル」「感謝の気持ち」の2つがあればいいのです。「あれ取って、これ取って」と奥さんに頼ってばかりの男性は、何かをしてもらったら、必ず「ありがとう」と笑顔で言うこと!
男性の皆さまの多くは、ご自身のそっけない対応に気づいていません。定年退職してからの人生をどのように生きていいのか慌てることのないように、何か好きなこと、興味のあることを見つけたり、思いやりの言葉を口にしたりと、早めに意識しておくといいと思います。
山野愛子ジェーンさん/撮影:弓削ヒズミ
それと、日本の場合は「歳だから」という言葉を使いすぎです。もう歳だからピンクは着れない、歳だからそんなことはできないなど、消極的な気持ちになるので、この言葉自体使わないようにしましょう。アメリカにも似たようなところがあります。年齢も、人種、障害、性別などと同じように、「差別」となることがあります。他人に「あなたは年寄りだからダメです」と言うのは差別になってしまいます。これは社会全体で変えていかなければいけないことですね。
山野愛子ジェーンさん/撮影:弓削ヒズミ
第20回:美容と福祉をつなぐ 山野愛子ジェーンさん?に続く。
文・写真=弓削ヒズミ(編集部)2018年10月取材
■ Profile ■
山野愛子ジェーン(やまの・あいこ・ジェーン)
学校法人山野学苑理事長、山野美容専門学校校長、山野美容芸術短期大学学長・教授。米国ロサンゼルス生まれ。祖母・山野愛子のもと「美道(びどう)」を修得し、1984年、二代目山野愛子を襲名。豊かな感性と優れた国際感覚で美容界のリーダーとして注目されている。
http://www.jane.jp/