社会の知識を学ぶ

お寺で「終活セミナー」を開催
時代と共に変化するお寺のあり方

お寺で「終活セミナー」!? けして極楽浄土へ行けるアドバイスではなく、生前に済ませておきたい準備や整理などをレクチャーしてくれる、いわゆる終活セミナーです。しかし、どうしてお寺が「終活」なのか。10月29日(日)に終活セミナーを開催する東京・新宿「瑞光寺」のご住職・星野顯聡さんにお話を聴いてきました。

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2017年10月29日(日)に「終活セミナー」を行う東京・新宿「瑞光寺」のご住職・星野顯聡さん/撮影:弓削ヒズミ

お寺だからこそ、できること

都営地下鉄大江戸線「牛込柳町」駅の出口からすぐ、立派な山門をかまえる「瑞光寺(ずいこうじ)」。その歴史は古く、約420年前に開創され、江戸時代には、武家の寺として栄えました。この由緒あるお寺で、終活セミナーが行われます。その理由をご住職の星野顯聡さんに尋ねます。

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葬儀会社、石材店など、さまざまな視点から葬儀や墓地についての話が聴けるのは、お寺主催の終活セミナーならでは/撮影:弓削ヒズミ

「生と死に向き合っているお寺が、終活について扱うことは大事だと思い、企画してみました。お寺だからこそ、協力していただける人もいるので、参加される方にとって何かしら役立つことがあるのではないでしょうか。お寺が主催なので、営利目的でもありませんから、どなたでも気軽に足を運んでほしいですね」。

終活セミナーでは、以下のようなセミナーや相談窓口が用意されます。

《セミナー》
 ●エンディングノートの活用法
 ●最新の墓地事情
 ●終の棲家の選び方とお金のやりくり

《ブース》
 ●遺品整理
 ●補聴器案内
 ●ポートレート(肖像)写真の撮り方

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お寺で開催『終活セミナー』のチラシ/提供:瑞光寺

現在、1人でお墓を探さなければいけないシニアが増えています。伴侶に先立たれる以外にも、熟年離婚や核家族化で、周囲に身寄りがいない人が、特に都心部には多いようです。そういう方にこそ、終活が必要ではないかと思ったのもセミナー開催の理由のひとつといいます。

「先日、子どもが居ても面倒を見てくれないという女性から相談がありました。自分のお墓はどうしたらいいのか、お金の話から始まり、相続など手続きの問題、いろんな情報がありすぎて、何が自分に必要なのか、わからないのだと」。

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「時代の変化と共に、お寺のあり方も変わっていかなければいけない」と語る星野住職/撮影:弓削ヒズミ

「お墓や葬儀にしても、例えば、安いからといって、金額だけで納骨堂を選ぶ人、継承者がいないけど、どうしてもお墓が欲しい人など、それぞれの事情によって、どの選択肢が合っているのかケース・バイ・ケースです。今回の終活セミナーでは、ご来場の方に、自分はどうすればいいのか、何か道筋のようなものが見えてくれば一番いいかなと思います」。

地域の拠り所としてのお寺

お寺でイベントを開催するのは、今回の終活セミナーが初めてではなく、今年4月、お釈迦様の誕生を祝う「花まつり」にもイベントを行いました。お寺の門戸を開く機会を、今後も増やしていきたいという星野住職は言います。

「お寺は敷居が高い場所、なかなか近寄りがたいイメージがあります。そこで、地域の人たちに、お寺のことを知ってもらい、何かの時には拠り所としていただければと思いました。4月には『シャカシャカ祭り』と題して、縁日や、本堂でコンサートを行ったり、住職カレーを振舞ったり、みんなで楽しく集まれるイベントを開催しました。子どもからお年寄りまで、500人ぐらい来ていただきました」。

終活セミナーも、こうした地域に向けた試みとのことで、お寺でしかできない「終活」に取り組んでいきたいそうです。

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セミナー終了後、星野住職がご本堂でお経を唱えてくれるので、この機会に遠方のご先祖に手を合わせてみるのもいい/撮影:弓削ヒズミ

お寺といえば、やはり「檀家」の存在が気になるところですが、地域の人たちを檀家に勧誘?なんて、ちょっと意地悪な質問をしてみました。

「お寺を支えてくださっているのは檀家の方々のおかげです。ただ、それだけじゃない関係性も築いていかないといけません。お寺は、生と死を扱いますが、その間にある、生きているなかで、お寺と地域の方々と、いろんな関わり方があっていいと思うのです。お寺を存続させていくには、檀家さんだけではなく、いろいろな人たちに支えていただかないといけない現状もありますから」。

「昔は、もっと地域の生活のなかにお寺があったと思うんです。お彼岸、命日でなくとも、お線香1本、ちょっと手を合わせに立ち寄れる場所になればいいですね。例えば、仕事で成功したことや、家庭に嬉しいことがあったら報告するとか、それが、亡き人、先祖供養のあり方だとも思います」。

いま、瑞光寺のように、境内で音楽コンサートや、カフェを開いたり、お寺を地域や文化のコミュニティの場としても活用していこうという動きも増えてきました。現代のライフスタイル、時代の変化に合わせて、お寺も変わろうとしているのかもしれません。一度、住まいの近くのお寺を訪ねてみてはいかがでしょう。10月29日(日)に行われる瑞光寺の「終活セミナー」にも、ぜひ、足を運んでみてください。

お寺で開催『終活セミナー』〜後悔しないシニアライフを送るために

日時=10月29日(日) 13時00分〜16時00分(※受付開始は12時30分〜)
会場=蓮紹山 瑞光寺(東京都新宿区原町2-34)
交通=都営地下鉄大江戸線「牛込柳町」駅西口よりすぐ
参加費=無料(基本は事前予約、当日参加可)
予約=瑞光寺セミナー担当 03-3357-0246(9時00分〜17時00分)

文・写真=弓削ヒズミ(編集部)2017年9月取材


《協力》
瑞光寺

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