社会の知識を学ぶ
エンディングノートを作っておきたい理由
ピンピンコロリ。 綾小路きみまろ氏の漫談に、よく出てくる言葉です。 寝たきりで苦しむこともなく、コロリと逝けたらいいのに――という、だれもが抱く願望。しかし、これ、周りにとっては、とても迷惑ということもあるのです。 そんな迷惑を残さないために用意しておきたいのが、このノートです。
イラスト:弓削ヒズミ
終わりの日は、突然やってくる!?
元気で長生きし、長い闘病もせずに、「コロリ」と逝けたらいいのに――。
家族に心配や介護の負担をかけない、理想の終焉スタイルとして願っている人も多いかと思います。そういう往生を願う人たちが、「ポックリ寺」に願をかける姿が、しばしば報じられたりもしました。
しかし、残される家族にとって、そんな「突然の死」は、ときに、大きな迷惑となる場合もあります。別れの言葉をかけることもできなかった――という心残りや悔いを残すこともさることながら、問題は、「情報の不足」です。
何も書き残してないために、貯蓄や証券がどれくらいあるのか、どこにしまってあるのかわからない。
そもそも、亡くなったことをだれに知らせればいいのか、訃報を知らせるべき相手のリストも、どこにあるのかわからない。こんな状態では、残された家族はオロオロするばかりです。
「エンディングノート」は「遺言書」とどこが違う?
自分が亡くなった後、残された家族が混乱しなくてすむように、大事なことを書き留めておくノート。それが「エンディングノート」です。
それなら、「遺言書」があるじゃないか――と思う人もいるかもしれませんが、「遺言書」と「エンディングノート」は、その目的も、法的位置づけも、まるで違います。
「遺言書」は、自分の没後、遺産をどう処分するかなどを書き残しておく目的で書くことが多く、その遺言内容には、法的な効力が発生します。
「エンディングノート」のほうは、死を迎えるにあたって、自身の希望や家族に託したいことを書き綴るノートで、その内容には、法的な効力はありません。
ノート自体はどんなものでも構いません。書き留める内容もまったく自由です。一から書いていくのが面倒というのであれば、最近は、必要な記入項目が印刷されたノートも市販されていますし、自治体やNPO団体、葬儀社などが配布しているケースもありますから、そういう既製品を利用するのも、ひとつの方法かもしれません。
書いておいたほうがいい、3つの内容
何を書いてもいい――とは言いましたが、「エンディングノート」は、家族が迷わなくてすむように書き残すものですから、最低限、「これだけは書いておいたほうがいい」と思われる項目もあります。
それは、次の3つ――。
?どんな葬儀を挙げてほしいか、という希望。
?意思能力を欠く状態になった場合、どんな医療措置を希望するか?
?自分の財産状況・交友関係・契約状況などに関する個人情報。
特に大事なのは、?の「個人情報」。中でも重要なのが、住所録です。
できれば、《親しい友人》《お世話になった仕事先》《親族・親類》などという風に分類し、「年賀状を出した・もらった」「亡くなったときに知らせる」「借りがある」などの項目を作って、いつも更新するようにしておけば、残された家族が迷わなくてすみます。
これがないと、家族は、だれに葬儀の案内を出したらいいかもわからない――ということになってしまいます。折に触れ、書き留めておきましょう。
撮影:編集部
パソコンのどこに何があるかを記録しておく
「エンディングノート」に書き残しておきたいことが、もうひとつあります。
いまの時代、写真や住所録といった個人情報を、パソコンや携帯電話・スマートフォンなどのデジタル機器で管理している人も多いかと思いますが、それらの情報が、どの機器に、どう格納されているか――を記録しておくこと。これも、けっこう重要です。
「エンディングノート」そのものをパソコン上で作成するという方法もあります。
最近は、パソコン上でフォーマットを取り込んで、必要な項目を書き込んでおく――というサービスもあるようですから、パソコンが得意だという人は、利用してみてもいいかもしれません。
編集部・シゲP記者
70代のじいちゃん記者。長年、編集者として数々の書籍やムックの出版に携わり、いまは執筆者として多くの作品を発表。いまだ現役としてアクティブに活躍している。