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放っておくと危険!カビ対策「7つのポイント」~健康を脅かす危険な症状とは

高温多湿の日本の夏はカビ天国ともいわれます。カビは喘息、気管支炎、過敏性肺臓炎など呼吸器領域のアレルギー疾患の要因となります。この記事ではカビによる危険な病気、カビ掃除で見落としがちな7つのポイントと対策をご紹介します。

カビ対策の基本三原則

まず、カビの対策には「湿度を下げる」「換気をする」「掃除をする」の3つの対策が必要です。

①湿度を下げる

カビが繁殖しやすい温度は20~30℃。湿度が80%を超えると繁殖しやすくなるといいます。夏は湿度が高く、内部にカビが繁殖しやすいので注意が必要です。

また賃貸アパートやマンションなどの集合住宅では、機密性が高いため一戸建てよりも湿度が高くなる傾向にあります。

室内の湿度を下げる具体的な方法には「料理中は換気扇を使い水蒸気を外に逃がす」「除湿剤を部屋に置く」窓を開けて外に空気を逃がす」があります。

②換気をする

カビの繁殖を防ぐ効果的な方法は窓を開けて換気をすることです。

天気のいい日は窓を開けて空気を通し、湿気をこもらせないようにしましょう。雨の日は除湿器やエアコンのドライ機能を使ったり、換気扇を回すと湿度を下げるのには効果的です。

③掃除をする

カビの栄養源はホコリや繊維、木材などです。そのため日ごろからこまめな掃除を行うことでカビの発生・繁殖を防ぐことができます。

つまり、部屋を快適で清潔な状態に保つことが大きなカビ対策になるのです。

もちろん掃除機をかけることは大切ですが、落ちづらい汚れをそのままにしておくと、その汚れからカビが繁殖してしまうケースも多いです。

表面のホコリだけでなく、定期的に拭き掃除を行うとカビ対策には効果があります。

カビ掃除、7つのポイントと対処法

カビ掃除には意外な盲点があるもの/無料写真素材 写真AC

日頃からカビ対策をされている方も多いと思います。カビを見つけて洗剤で掃除をすれば完璧かと思いきや、すでに汚染されているケースもあります。

目に見えない場所にもカビ潜んでいます。カビの発生を防ぎ、はびこらせないための対策をしましょう。

①エアコン

エアコン内部はカビが発生しやすい環境です。お掃除機能がついていても結露により湿気がたまり、カビが発生・増殖しやすいです。

カビが生えたままのエアコンを使い続けると、室内にまき散らされた菌を吸い込んでしまい、喘息や肺炎、アレルギー性皮膚炎などの原因となってしまう恐れがあります。


<カビが発生しやすい場所>

カビ天国といわれるエアコン。とくにシロッコファンという回転羽根に好んで繁殖します。カビはエアコンから出る風が接触する送風ファンから、徐々に吹き出し口のフィンへと繁殖を広げます。


<盲点 >

水滴の受け皿であるドレパンも濡れた状態が続くため、カビが発生しやすい場所です。エアコンのホコリや汚れもカビの養分になります。


<対策 >

エアコンをつけているときは窓を開けない人が少なくありません。
エアコンは室内の空気を循環させているだけなので換気にはなりません。ときどき窓を開けて風を通し、カビを外に出すことも大切です。
部屋の換気の他にも定期的にフィルター交換をするのはもちろん、電源オフの前に30分ほど送風運転をして内部を乾燥させるのも効果的です。
エアコンだけでなく、家全体としてカビが発生しづらい環境を作るのも効果的です。窓をこまめに開けて空気を入れ替える、除湿機を設置するなどの対策ができます。

②北側の部屋

黒カビは結露が発生する場所や湿気が高い場所に多く発生します。とくに北側の部屋は結露ができやすいので注意が必要です。


<カビが発生しやすい場所>

北側の部屋の押入れや窓のサッシ回りは結露ができやすいです。とくに北側の寝室で壁のクロスがめくれている場合、結露でカビが生息している可能性があります。


<盲点 >

衣装ケースや普段つかわない布団なども湿気がこもりやすいです。カーペットの家具の下敷き部分やベッドマットレスの壁と接している部分もカビが発生していないかチェックしてみましょう。


<対策 >

北側の部屋のドアはなるべく開けておいて空気を入れかえましょう。

結露は必ず拭き取るようにしましょう。また結露がつかないよう除湿機などを活用することも大切です。換気扇を追加で設置するのもひとつの方法です。

③カーテン

カーテンのカビの原因は湿気が多い/無料写真素材 写真AC

お気に入りのカーテンにも知らないうちに、黒いポツポツが生えている恐れがあります。放置をしているとカビは落としづらくなってしまうので正しい方法でお手入れをしましょう。


<カビが発生しやすい場所>

窓ガラスに触れるカーテンやブラインドウなどの上もカビが生息しやすいところです。汚れがたまりやすいカーテンのヒダ部分は定期的には掃除をしましょう。


<盲点 >

カーテンのカビを放置し続けると、カビの胞子が空気に乗って他の家具に移動する恐れがあります。また洗濯物の部屋干しもカーテンの近くだと湿気の原因となり、カビが繁殖しやすい環境になります。


<対策 >

ほこりやよごれを取り除いたらアルコール除菌スプレーをかけるのも効果的です。ただしカーテンが変色してしまう可能性もあるので問題ないのを確認してから行いましょう。

カーテンにカビを生やさないためには定期的な換気が重要です。部屋に湿気をためこまない、カビの胞子を屋内にとどめないよう心がけましょう。

④台所

台所は水があり、調理では水蒸気が出て、細菌のエサとなるものも豊富にあるのでカビの繁殖しやすい場所です。また換気扇につく油などもカビの養分になるのでこまめな掃除が大切です。


<カビが発生しやすい場所>

台所でカビが生えやすい場所は」主に「シンク」「三角コーナー」「排水溝」「冷蔵庫」などです。台所には青カビ、赤カビ、黒カビの三種類が多く、発見したら即撃退しましょう。


<盲点 >

台所のコーキング(防水のための目貼り処理)やまな板にもカビは発生します。また冷蔵庫のドアポケットやチルドルーム、冷蔵庫の下の水受けなどにもカビは発生していないかチェックしましょう。


<対策 >

水洗いできる場所は通常のカビ取り剤などで除去しましょう。濡れぞうきんでの拭き掃除はカビの胞子をまき散らすためNGです。

消毒用エタノールを乾いたキッチンペーパーにスプレーして拭き取れば、カビの汚れもなくなり生えにくくなります。

まな板やスポンジはカビが生えやすいので頻繁に交換を心がけましょう。専門家によるとスポンジは、1か月程度で交換した方がよいそうです。

⑤洗濯機

水回りはカビや雑菌の汚れが付きやすい場所/無料写真素材 写真AC

洗濯機もカビが発生しやすい場所です。カビが増殖すると衣類に臭いがついてしまうのはもちろん、洗った洗濯物に黒や茶色のカスが付くこともあります。また、健康に被害がおよぶ可能性もあります。


<カビが発生しやすい場所>

カビは衣類の汚れや溶け残った洗剤などが洗濯槽裏に付着し、増殖していくことが少なくありません。洗濯機の回転漕もカビが大量に発生する場所です。

<盲点 >

洗濯機の糸くずフィルターにゴミをためていると、洗濯槽内で菌が繁殖する原因になります。

また風呂水ポンプのホースの中にもカビがこびりついていることもありますので、きちんとケアして清潔にしておきましょう。


<対策 >

洗濯槽の臭い対策には、こまめにふたを開けて湿度を低くしておくことが効果的です。ふたを開けっぱなしにして自然乾燥させることも大切です。

ただし小さな子どもがいる家庭は、洗濯機のふたを開けておく際に子どもが入らないように十分に注意してください。

汚れが溜まりやすい洗剤や柔軟剤の投入口は定期的に掃除をしましょう。洗剤の残りカスがある場合は、40℃くらいのお湯を使うと落ちやすいです。

洗濯槽の縁も見過ごしがちなポイントです。使い古しの歯ブラシや割りばしにタオルを巻いたものなどで拭き、ぬめりや汚れを取りましょう。

⑥バスルーム

浴室の壁や脱衣場はカビが発生しやすいのでこまめに点検しましょう。お風呂にできた頑固な黒カビは掃除が難しく、落としづらいので悩んでいる人も多いです。


<カビが発生しやすい場所>

浴室のカビはゴムパッキンやタイルの目地に深く入り込みます。また天井のカビ対策は重要です。浴室に湿気がこもらないよう窓を開けたり、換気扇をまわすことを心がけましょう。

<盲点 >

浴室で見過ごしがちなのが蛇口回り、とくにシャワーヘッドです。シャワーヘッドをよく見ると黒い汚れが付いていることも。これは黒カビです。

汚れがひどくない場合は、中性洗剤とスポンジを使って磨いていきましょう。


<対策 >

カビを除去したら日ごろから水はねをふき取り、湿気を防ぐことが大切です。水はね用のタオルなどでこまめにふき取ると効果的です。

入浴後は、壁などにお湯のシャワーをかけてカビを洗い流しましょう。奥まで熱を伝えることが重要です。

専門家によるとカビは直接お湯がかかると5秒で死ぬそうです。そのため1週間に1度、カビが成長する前にシャワーで50℃のお湯を5秒かけるとカビを予防することができるそうです。

なかなか手が届かない浴室の天井は、お掃除用のワイパーにキッチンペーパーをつけて、消毒用のアルコールで湿らせて拭くと効果的です。

⑦物が溜まっている場所


<カビが発生しやすい場所>

室内に衣服や小物などが散らかっていると湿度を吸ったりしてカビには最適な環境となります。またクローゼットや押入れに服や物があふれているとカビの原因になります。


<対策 >

カビ対策では常日頃から部屋を整頓して清潔にしておくことが大切です。クローゼットにも服を詰め込まずに定期的に換気をするようにしましょう。

また、押入れの中は湿気が溜まりやすいのでスノコや除湿機を活用して湿気対策をしましょう。

カビがもたらす身体への影響

カビは地球上に約7万種生息していると考えられています。そのほとんどは花粉よりも小さく、私たちは目に見えないカビを毎日数千個以上吸い込んでいるといわれています。

室内に発生するカビはアレルギーや感染症の原因となります。また体力の低下している高齢者の方は誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)という肺感染症を発症する危険性もあります。

まずは身体の症状からカビの種類をみてみましょう。

■あなたは大丈夫?症状別チェック

 微熱が続き、せきや痰が激しく出る→① アスペルギルス症 

□ 6~10月頃に発生。咳と発熱、だるさを毎年繰り返す→②夏型過敏性肺炎

□ 片方の腕や足が異様に膨らみ、赤く腫れている→③スポロトリクム症

□ 指の間が白くふやける、カサカサして皮がむける→④ 足白癬

風邪と似ているカビの症状もあり、そのまま放置して慢性化してしまうケースもあります。上記の4つの症状について解説していきます。

カビの種類・特徴

イメージ/無料イラスト素材 イラストAC

①アスペルギルス症

アスペルギルスという種類の菌は、約300種類あって自然界に広く存在しています。通常は病気の原因とはなりにくい菌ですが、その中の一部に強い感染力があり、免疫力の低い高齢者や子供は注意が必要です。

アスペルギルスはエアコンを通じて部屋に拡散されることも少なくありません。長期で病気療養などをしている方に取り付くことが多くといいます。

肺に感染することが多く、感染すると微熱が続き、せきや痰がでるなど夏風邪に似た症状がでます。重症例では血痰や喀血、息苦しさなどを伴います。

②夏型過敏性肺炎

トリコスポロンという室内のカビがきっかけで肺にアレルギー性の炎症を起こしてしまう病気です。梅雨が始まる6月~10月に発生することが多く、カビが自然と減る頃に症状は和らぎます。

病院でも風邪と診断されることが多く、抗生物質などで一時的に症状が改善されますが、翌年の夏近くになるとまた咳が出はじめます。

こうしたパターンが慢性化して肺の機能が弱ると、酸素交換がうまくできなくなり、ときには呼吸不全から危険な状態にもなりかねません。

夏になると毎年風邪をひく、咳が出る人は、呼吸器科などの専門医にきちんと診てもらいましょう。

③スポロトリクム症

ミズゴケやバラの木に付着しているスポロトリクス・シェンキイという腐生性糸状菌による病気です。

片方の腕や足が異様に膨らみ、赤く腫れます。敗血症を引き起こすと死に至ることもありますが、早期治療で完治します。

農業従事者、植木屋、園芸家などが感染するケースがほとんどですが、家庭菜園などをされている方は注意しましょう。

④足白癬(皮膚糸状菌)

足白癬は、カビで一番身近な病気「水虫」を引き起こします。

水虫は主に、①趾間型(指の間の皮膚が白くふやけて皮がむける)、②小水疱型(足のふちに小さい水ぶくれが多発し破れて皮がむける)、③角質増殖型(足の裏が硬く厚くなり、時にひび割れる)の3つのタイプがあります。

水虫の多くは春から夏季に悪化して、市販薬ではなかなか治りにくいです。涼しくなると軽快しますが、また翌春には増殖して症状が再発することも多いです。

一方、水虫の症状かと思っても、違う病気の時もあるので皮膚科などの専門医に診てもらうことが大切です。

広い範囲のカビなどは業者へ依頼

専門的な知識が方法な業者に頼みましょう/無料写真素材 写真AC

月に一度、定期的な大掃除を行うとカビの発生や発育を防ぐことができます。

しかしカビが広範囲で発生していたり、自力でカビ取りをすることが難しい場合は専門家に依頼しましょう。

カビ取り業者を選ぶ際の主なポイントは3つあります。

①カビに関する専門的な知識が豊富

カビを死滅させ、再発を防止するには薬剤や工法など専門的な知識が必要です。知識や技術力のない業者に頼むと二度手間、三度手間になりかねません。

エアコンクリーニングなどではトラブルも増えているのでwebサイトの広告を鵜呑みにしないようにしましょう。

②事前の相談で丁寧に説明してくれる

優良業者は無料相談をしてくれるところも少なくありません。疑問や不明な点は遠慮をせずに質問しましょう。的確にアドバイスしてくれる業者を選びましょう。

③具体的な見積もり、提案をしてくれる

あとあとトラブルにならないためにも費用面は確認しておきましょう。追加オプションの有無もチェックしましょう。

カビ問題について専門的な視点から対応してくれる中立的な相談機関もあります。相談できる専門家や機関がない方は以下の相談センターを活用してみてはいかがでしょうか。

✅NPO法人カビ相談センター

カビの病気を防ぐためにはカビを発生させない、増やさないことが大事です。

カビが好む環境にならないように日ごろから家の中をしっかりと乾かして、清潔に保つようにしましょう。

文=大屋覚

≪参考ウェブサイト≫

衛生微生物研究センター カビQ&A

日本アトピー協会

omron「夏型肺炎」に気をつけよう

■ Profile ■

大屋覚(介護福祉アナリスト/ライター)
テレビや書籍、Webマガジンを中心に活動中。医療・福祉・介護分野を中心に取材や執筆を行う。早稲田大学・同大学院修了。日本認知・行動療法学会会員。

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