健康な体づくり

諦めたら損!?腰、ひざ、股関節の痛み~名医が教える痛みの危険性と対処・治療法【後編】

スーパードクターに聞く「腰、ひざ、股関節」の痛み解消法。今回は後編です。不調のメカニズムと治療法を教えてくれるのは、年間1,000件以上の手術を成功させる三輪道生(みわ みちお)医師。間違いだらけの医者選びから、知っておきたい整形の話を伺ってきました。

不幸は伝染する

人生100年時代を生き抜くために重要になるのが「健康寿命」。しかし、そこに立ちはだかる大きな敵が「腰、ひざ、股関節」の痛みです。スーパードクターとして30年以上手術を行ってきた三輪医師は、不幸の伝播は断ち切るべきと語ります。

腰ひざ股関節治療のスペシャリスト、三輪道生医師

三輪医師:不機嫌な態度や横柄な態度は、周囲の人を不愉快にします。同じように腰ひざ股関節の痛みや辛さも周囲に影響します。家族のひとりが歩けなくなると、人手がかかり、出費も増え、介護離職で収入も減り、介護する側も疲弊して、周りの人にどんどん不幸が広がります。一人暮らしや老老介護ではいっそう切実です。

三輪医師:しかし悪いところを早く治し、痛みが取れてスタスタ歩けるようになると患者さんの顔つきは明るくなって、喜びがあふれ出てきます。その満足感や幸福感は周りの人に伝染して、多くの人が幸せになります。そういうケースを見てきたからこそ、腰やひざ、股関節に不調があればガマンせずに治してほしいのです。

簡単!「ひざ」セルフチェック

多くの高齢者が悩まされている膝の痛み 無料写真素材/写真AC

ひざの痛みは多くの高齢者が経験している症状です。たいしたことはないと思ってもひざ関節の病気の可能性もあります。まずはセルフチェックしてみましょう。

□水がたまる

□痛みが治まらない

□腫れが治らない

□ゴリゴリ音がする

□ひざがピンと伸びない

□正座ができない

□立ち上がるとき、ひざが痛い

□ 重労働や激しいスポーツを長年行っている

□ O脚変形がある

□ 階段の下りが痛い、手すりにつかまらないと降りられない

                   チェックリスト:三輪道生医師 作

三輪医師:チェックリストで2つ以上当てはまる方は、一度整形外科を受診したほうが良いかもしれません。多くの痛みの原因は、ひざの軟骨が摩耗して壊れてしまうことです。軟骨のすり減りは誰にでも起こります。一般的には老化現象ですが、スポーツやケガ、重労働、肥満によっても悪化します。

腰やひざ、股関節に痛みがあっても治さない方が多いのはなぜでしょう?

三輪医師:今も手術を怖がる方は少なくありません。しかし安心してください。現在は医療工学が発達しています。昔は5年、10年しか持たなかった人工関節が、今では 30年以上長持ちします。「もう歳だから……」「手術は怖いから」と言ってる方も手術をすれば良くなります。腰、ひざ、股関節の治療には間違った常識がはびこっているので、 その壁、或いは、その天井を突き破りたいですね。

間違いだらけの整形外科医選び

手術数を年間1000件、20年以上続けている三輪医師。同業の医師でさえも、その数字を聞くと驚き、ときに疑われるそうです。あまり知られていない整形外科医の世界。腰やひざ、股関節の手術では、どんな医者選びをすればいいのでしょう。

三輪: 整形外科という言葉が曲者で、実は医者選びを妨げる誤解の原因となっています。外科とついているからには整形外科であれば誰でもどこでも手術をするのかというと、そうではありません。さらに手術をする整形外科医がいたとしても、腰でもひざでも どこでもできるわけではありません。腰は腰。膝は膝。別の医者です。例えば腰の手術を必要としている場合、その手術を年間100件以上(週2件で年100件)執刀している医者なら安心して任せていいでしょう。手術をする整形外科医に巡り合えたとしても、この医師の得意分野は何かをご自身で調べることが大切です。

三輪:手術を誰にしてもらうかで、人生は180度変わるかもしれません。 手術がうまく行けば一生歩いていられるわけです。一生に一回の手術で済むように、どこの誰に託すかはこだわって欲しいものです。また、歳を取ると手術そのものより、合併症対策の方がずっと大切です。特に高齢者と持病のある方は、整形外科病院などの単科病院ではなく総合病院にすべきでしょう。

三輪医師が推奨する名医探しのポイントは次のとおりです。

<名医の5つの条件>

①正しい診断と正しい治療方針

②手術の技量

③合併症対策と、いざ合併症が出た時の対応力

④ 適正なリハビリの指示と達成度の確認

⑤ 安静度などの日常生活の細かい指示 (生活背景を考慮して術後もしっかり見てくれること)


三輪:名医とは手術がうまいことではありません。責任をもって患者さんを治し、最後まで見届けて、良い結果に導く存在です。そのために重要なのは見立てが正しいことです。正しい診断と正しい治療方針のもと経験と技術を持ち、リハビリや安静度も責任をもって教えてくれる医師こそが真の名医なのです。

おすすめの食べ物は「煮干し」

腰ひざ股関節の予防に煮干しを食べよう/無料写真素材 写真AC

腰、ひざ、股関節の悪化予防に、効果的な食べ物はありますか?

三輪:患者さんにおすすめしているのは、煮干しです。タンパク質やカルシウムも含まれていますし、カビにくい、腐りにくいのも良いです。私もよく食べます。女性は50代になったら、煮干しを少しずつ食べた方がいいです。飲み物は、牛乳や豆乳がいいですね。

三輪医師は、58歳に見えないほど若々しいですね。若さの秘訣はあるのでしょうか?

三輪: 果物をものすごく食べます。また、老化を防ぐには成長ホルモンをだすことも大事だと思うんです。常にトレーニングで体を鍛え、ワクワクドキドキする少年のような心を持ち合わせていたいと思っています。好奇心旺盛で、多くの人とコミュニケーションを積極的に取り、挑戦し続ける人はいつまでも魅力的で元気ですよね。自分で自分を諦めない、限界を決めない、体験する前に決めつけない、自分に期待し続ける。心身共に若々しい方は、どこか少年のような好奇心と意欲と感動する心を持ち合わせていると思います。

尻もちは危険!

尻もちには要注意! 無料イラスト素材 イラストAC

三輪: 腰、ひざ、股関節に最悪なのは尻もちです。後ろに倒れると、腰にも股関節にもダメージが加わり、骨折しやすいので絶対に気をつけましょう。二番目に悪いのは中腰でモノを持つことです。この2つが老後を悪くさせる原因だと思います。あとは歩くときにつま先を引きずるのも転びやすいので、モデルのように、ひざを伸ばして下を向かず、かかとからついて歩くと転倒は予防できます。散歩は毎日欠かさずしましょう。

おすすめのトレーニング方法はありますか?

三輪:ひとりでも安全にできるのがテーブルを使った運動です。やり方は簡単です。まず、テーブルに手をついて立ち上がる。テーブルにつかまりながら立つ。そしてゆっくり足踏みをします。余裕のある方は、ものすごくゆっくり立ち上がってみてください。筋トレをすると骨も硬くなります。おわったら肉などのタンパク質をできるだけ早く摂取すると効果がアップします。

三輪: ほかにもテーブルを利用したスクワットや、横上げ、後ろ上げのような筋トレもあります。ただし、深くしゃがむと尻もちを着きやすいので、少し曲げて長く保ちましょう。立ち上がれない人は椅子に座ったまま、片足ずつ太ももを上げたり、片足ずつゆっくり蹴る、ひざを伸ばすのも良いです。

三輪:骨や筋肉はいじめると強くなります。歳をとっても少しずつ負荷をかけて鍛えてみましょう。また姿勢が悪くなると転倒しやすくなるし、腰や関節を痛めやすいです。ストレッチや適度な運動をしながら、姿勢を良くしていきましょう。見た目も若々しくなりますしね。

整形外科の手術、そんなに悪くないよ

今回、取材した三輪医師は整形外科医の中では異端の人物かもしれません。医者社会の慣習や縦割り、壁、天井を嫌い、学会や医局という権威体制とは一線を画し、赤ひげ先生として患者のために日々、奮闘する。だからこそ世間にはびこる先入観やバイアスをなくし、真実を知ってもらいたいと語ります。

三輪: 腰、ひざ、股関節は年齢とともに衰えたり、壊れたりします。でも壊れたら手術して治せばいい。いたずらに怖がったり、ガマンする必要はありません。歯が痛ければ歯医者で治すように、腰ひざ股関節が壊れたら手術をする整形外科医を探して治してもらえばいいのです。そして手術をするときは、自分の症状にあった医師を探すことも必要です。私は腰、ひざ、股関節の手術に特化していますが、一般的には腰は腰、ひざはひざ、別の医師です。例えば腰を手術してもらった場合、その先生にひざを治してくださいと頼んでも治せないのです。整形外科でも良い医者は自分で探さないと見つかりません。 目安は年間100例以上、(膝であれば人工膝関節手術を)執刀している医師です。 あなたの痛みを治せる医者は必ずいますので、安心してください。

三輪医師に、今後の目標を聞いてみると―

三輪:30年以上、医者をして思うのは「知っているか知らないかで人生が変わる」ということです。腰、ひざ、股関節の正しい情報を知らない人はまだまだ多い。これまで2万件以上手術をした経験を活かして、腰ひざ股関節シンドロームの啓発と治療に生涯を捧げていきたいです。

『諦めたら損!?腰、ひざ、股関節の痛み~名医が教える痛みの危険性と対処・治療法』 前編の記事を読む→https://jiichanbaachan.com/?p=10844

文=大屋覚

<参考著書>

腰ひざ股関節シンドローム/著書 三輪道生(幻冬舎メディアコンサルティング)
年間1,000件以上の手術を成功させる「整形外科のゴッドハンド」が腰、ひざ、股関節の不調のメカニズムと治療法をやさしく解説。

(下記左箇所、本の画像が入ります。)

本書では、加齢による関節の摩耗という共通の原因で、歩行困難になる腰、ひざ、股関節のトラブルを、それぞれに精通した著者が説く「腰ひざ股関節シンドローム」という一体の概念でとらえる。痛む腰、ひざ、股関節が治ることを知らず、適切な治療を受けずに寝たきりになっていく多くの高齢者を救うためにも、高齢化が進む国民の健康を守るためにも、一般、関係者の枠を超えて読まれるべき一冊である。

■ Profile ■

大屋覚(ライター/相談支援専門員)
テレビや書籍・WEBメディアの企画、構成、執筆を担当。ソーシャルワーカーとしても高齢者、障がい者、子ども育成の支援事業を展開している。早稲田大学・同大学院修了。

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