趣味や愉しみ

風のように自由でしなやかに。
自分で考えて自分で行動する生き方①

ふと入ったレトロな雰囲気の喫茶店。マスター、荻原公さんのオリジナルのコーヒーの入れ方に驚き、その味を堪能しながら聞いた外国での仕事の話、旅の話、写真の話など。そのなかから見つけた究極の言葉は「一歩前に出る勇気を持つ」ということでした。

喫茶店エル ビエント(EL VIENTO)

コーヒー好きにはたまらない、ネルドリップコーヒー

懐かしい雰囲気の喫茶店に誘われて

レトロな雰囲気の漂う喫茶店エル ビエント(EL VIENTO)のドアを開けると、そこには古き良き昭和の時代が現存していました。目に飛び込んできたのは、使い込んで、いい味を醸し出している一枚板のカウンターです。窓際にはテーブル席が2つ据えられています。

カウンターのなかには、がっしりとした体格の笑顔の素敵なマスターがいました。忙しい時間帯は過ぎた昼下がり。カウンターに座り、アイスコーヒーを注文しました。

マスターは、ローストした豆を、はかりにかけ、赤い大きな電動のコーヒーミルで豆を粉砕して、ネルフィルターでドリップしています。

かつて喫茶店の全盛期だった昭和40年代には、大きなフランネルのフィルター、つまり表面が起毛している布のフィルターでドリップするのが主流だったと聞いたことがあります。当時は、喫茶店がはじまる時間帯になると、コーヒーの香りが辺り一面に漂い、その香りに誘われて立ち寄る人も多かったそうです。

そんな話を思い出しながら、マスターの動きを目で追っていると、いきなり、ドリップしたコーヒーの入った、大きめのガラスのカップを頭上高く持ち上げて、反対の手に持つガラスのカップに向けて、琥珀色の液体が滝のように注ぎこまれたのです。

喫茶店エル ビエント(EL VIENTO)

灰汁を取りのぞくためのマスターオリジナルの入れ方

目が釘付けになってしまいました。コーヒーを右手のカップから左手のカップへ、左手のカップから右手のカップへと何回か行ったり来たりさせていると、ガラスのなかの泡の層が次第に広がっていきます。その泡を手首のひねりを使ってスプーンできれいに取りのぞくと、氷の入ったボウルに入れたカップにコーヒーを注いでいきました。

喫茶店エル ビエント(EL VIENTO)

灰汁を取りのぞいたコーヒーを氷で冷やす

カウンターに置かれたグラスに入ったアイスコーヒーは、明るい琥珀色で透明感が際立っています。飲むと、すっきりとしていて、それでいてコクがあり、ほのかな甘みもあります。

喫茶店エル ビエント(EL VIENTO)のアイスコーヒー

すっきりとした甘みのあるアイスコーヒー

「おいしい」という言葉が思わず口からこぼれ出ていました。

すると、マスターは、ニコリと笑って、
「お客さんは、ミルクもなにも入れないで飲むと言うので、コーヒーの味がストレートにわかってしまう、困った客だなと内心思っていたんですよ」
そんなことをさらりと言える人柄に一瞬で惹きつけられて、気になっていた、さきほどのコーヒーの入れ方について尋ねてみました。

「仕事でアマゾンの水の検査をしていたのですが、そのときに、泡を付着させて有用なものと無用なものを分離する方法があるんです。それを私が勝手にコーヒーに応用しているんです」と説明してくれました。

喫茶店のマスターは、人生のマスターだった

昭和40年代の喫茶店は、きっと、こんなふうにお店の人とカウンター越しに会話を楽しむ場所だったのではないかなと、ふと思いました。

エル ビエントで使用しているコーヒー豆は、アラビカ種の1種類だけだそうです。それは、コーヒー豆をストックすることなく、焙煎後の粗熱がとれた一番おいしいタイミングで飲んでもらうためのこだわりなのだそうです。コーヒーカップはロイヤルコペンハーゲン。いろいろ試してみて、ロイヤルコペンハーゲンのカップの薄さが、もっともコーヒーの味を引き立てると思っているからだそうです。

喫茶店エル ビエント(EL VIENTO)

カップの薄さが、コーヒーの味をストレートに伝える

そんな話を聞きながら、ふと壁に目をやると、幻想的なオーロラの写真が4点、額に入れて飾られていました。まるでバレリーナが踊っているような美しいオーロラの写真なので尋ねてみると、マスターが撮影した写真だったのです。

イエローナイフのオーロラ

イエローナイフのオーロラ/写真撮影:荻原公

風のように自由でしなやかに。 自分で考えて自分で行動する生き方?に続く

文=水楢直見(編集部)2016年7月取材

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