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【実録:ユーザー車検の流れ】 費用や、必要書類、やり方をわかりやすく解説
時間に余裕ができたり、車好きな方におすすめしたいのが「ユーザー車検」です。車検費用が安く抑えられ、車の整備や税金・保険料の理解が深まるなどの利点があります。初心者でも簡単にできるものなのか?実際に体験して感じたメリット、デメリットを報告します。そして気になる費用は一体いくらかかったのか!?
ユーザー車検とは
こんにちは!ライターのサトシと申します。
みなさんは「ユーザー車検」をご存知でしょうか。ユーザー車検とは、マイカーをディーラーなどの業者に依頼せず、自分で陸運局に持ち込み車検の検査を行うことです。
「自分で車検できるの?」「時間や手間がかかるのでは?」と思う方も多いかもしれません。しかし、ユーザー車検は検査項目も決まっていますし、現場では自動車検査員が指示してくれます。
ユーザー車検の体験者からは「思った以上に簡単だった」「車に詳しくなった」「出費が抑えられた」などの声を聞きます。
本当にユーザー車検は簡単にできるのか、費用はどのくらいかかるのか?今回は実際に体験して、そのメリットとデメリットを報告します。
ユーザー車検の4つのメリット
一般的に車検はディーラーやガソリンスタンド、整備工場などに依頼している方が多いと思います。車検は新車を購入した場合は3年後、その後は2年ごとになります。(以前は10年経過した車の車検有効期間は1年でしたが、1995年の道路運送車両法の法改正により10年経過した車も2年ごととなりました。)
現在も業者車検が主流であることに変わりはありませんが、最近はインターネットなどで情報を収集して自分で車検をする方も増えています。
時間に余裕がある方や車検費用を抑えたい方、マイカーの理解を深めたい方はユーザー車検に挑戦してみてはいかがでしょう。調べてみると主に4つのメリットがあるようです。
①車検にかかる費用が安い
ユーザー車検の最大のメリットは「費用」です。業者に依頼するよりも圧倒的に車検費用が安く済みます。業者にお願いをすると測定検査料や代行手数料などが発生するので高くなります。ディーラーに車検を頼んだときの一般的な相場は以下のとおりです。
車種区分 | 法定費用 | 車両基本料 | 合計 |
軽自動車 | 32,770円〜 | 38,340円~ | 71,110円〜 |
普通自動車 | 59,830円〜 | 43,740円~ | 103,570円〜 |
大型車 | 68,030円〜 | 52,380円〜 | 120,410円〜 |
他、代行手数料、代車料、部品代、オイル交換費用等、プラス3万以上かかることも。
やはり車検で費用がかかるのは法定点検・整備などの車両基本料です。法定点検の費用も依頼する業者によっても大きく異なるのが現状です。点検で部品やオイル交換が必要になれば別途、費用はかかります。
またディーラーや整備工場では数日かかるのが一般的なので、無料で代車を貸してくれない場合、レンタカーを一泊二日利用すればガソリン代も入れて20,000円程度。車検の代行手数料として12,000円~請求されることが多いと思います。
つまり、普通自動車をディーラーに頼めば「法定費用」+「車両基本料」+「代車代」+「車検代行手数料」で見積もったら、大体13万円以上かかります。(業者によって金額は異なります)
一方、自分で車検を通せば法定費用しかかからないので、約7万円~も費用は浮きます。その分をお小遣いや家計の足しにすることもできます。
ただし業者ごとに整備費用、代行手数料、代車などの料金は違います。心配な方は複数の業者で見積もりして検討しましょう。
②車検が1日で終わる
ユーザー車検では、問題がなければ半日で検査は終わります。業者に出せば通常、車の状態や整備状況まで細かく検査するので、2〜3日かかることが少なくありません。
③代車の必要がない
ユーザー車検では、代車を借りる必要がありません。日頃から運転している方は、2〜3日でも慣れない代車を運転するのは大変だったりします。もちろん代車費用もかかりません。
④マイカーに愛着がわく
ユーザー車検をすると自分の車に詳しくなり、車の状態も把握しやすくなります。また車の税金・保険料の理解も深まります。
車検を通じて車への愛着がわくと、メンテナンスや運転方法にも気を遣うようになるので事故予防にもつながります。もしかしたら、これがユーザー車検を行う最大のメリットかもしれませんね。
ユーザー車検の流れを知ろう
さて、いよいよユーザー車検に挑戦です。
ユーザー車検の流れには、大きく「事前準備」と「検査当日」があります。全体の流れを把握することで合格までスムーズにたどり着くことができます。
まずは予約から(事前準備)はじめてみました。
ユーザー車検を受ける場合は、国土交通省の「自動車検査インターネット予約システム」で予約をします。車検は通常、更新日の1ヶ月前から実施可能です。
軽自動車は「自動車検査インターネット予約システム」から予約が出来ません。軽自動車の予約は軽自動車検査協会の「軽自動車検査予約システム」から予約を行います
いきなりぶっつけ本番で臨むのが不安な方は、持ち込む前に民間の予備検査場で確認してもらう方法があります。予備検査場の多くは運輸支局の近くにあり、3000円から5000円程度で車検のラインに近い設備で検査してくれます。
●ユーザー車検に必要な書類
ユーザー車検に必要な書類は、以下のとおりです。
- 車検証
- 自動車損害賠償責任保険証明書 *新旧2枚
- 自動車税納税証明書 *特定の条件で省略可能
- 自動車検査票
- 自動車重量税納付書
- 継続検査申請書
- 定期点検整備記録簿
- 印鑑
当日までに確認しておきたいのは①〜③です。普段はあまり意識することはない車検証ですが、このタイミングで必ずチェックしましょう。
②の「自動車損害賠償責任保険証明書」は自賠責保険の保険証です。車検の際は新旧の2枚が必要ですが、新しい自賠責保険については当日に運輸支局の代書屋さんで手続きすることができます。
③の「自動車税納税証明書」は、納税されているかどうかを確認するための書類です。以前は車検の際に持っていく必要がありました。しかし、2015年4月1日からは電子化され、以下の2つの条件を満たしている場合は省略できるようになりました。デジタル化の恩恵ですね。
- 自動車税を滞納していない。
- 自動車税を納付してから、3週間以上経過している
④~⑥の書類は、車検当日に窓口で用意できるますので、事前に準備しなくて大丈夫です。
⑦の定期点検整備記録簿とは、24ヵ月点検や12ヵ月点検の法定点検を行った内容を記録する為の用紙です。この記録簿を確認することで消耗部品の交換時期などを判断することができます。
ただし一般の人が単独で定期点検整備記録簿を作成することは難しいです。ユーザー車検で運輸支局に持ち込む大半は、前検査と呼ばれる車検を先に取ってから点検整備は後日、というスタイルが多いようです。
ユーザー車検当日の流れをわかりやすく解説!
ユーザー車検当日。ドキドキしながら近くの運輸支局に行きました。まずは、継続審査申請書と自動車重量税納付書、自動車検査票を作成します。
当日のスケジュールは、以下のとおりです。
- 必要書類の受け取り
- 自動車重量税と検査手数料の支払い
- 自賠責保険の継続加入手続
- 納税確認の押印
- 車検の受付
- 検査スタート
さてさて順調にいけばよいのですが・・・。
1. 必要書類の受け取り
運輸支局の窓口に向かうと担当者が書類を手渡してくれました。受け取ったのは以下の3枚です。
- 自動車検査票
- 自動車重量税納付書
- 継続検査申請書
この日は平日の午後でしたが思ったよりも混雑はしていませんでした。ツナギ服の車関係者も多かったですが、ユーザー車検らしき人もチラホラ。記入の見本があるので、それを見ながら書き込んでいきます。
2. 自動車重量税と検査手数料の支払い
続いて、運輸支局の印紙・証紙販売窓口で自動車重量税額と検査手数料分の印紙・証紙を購入して書類に貼り付けます。
印紙と証紙とそれぞれ書類がありますが、窓口の担当者に聞くと金額や印紙・証紙を貼る場所も親切に教えてくれました。
3. 自賠責保険の継続加入手続
続いては自賠責保険の加入です。保険期間は必ず車検有効期間よりも1日は多く加入しないといけないそうです。支局内にある代書屋さんで行いました。
こちらもスムーズに終えることができました。
4. 納税確認の押印をもらう
だんだんと車検の雰囲気にも慣れてきました。次は「自動車税納税証明書」を、納税確認窓口に提出します。問題がなければ納税証明の押印をもらえます。
前述しましたが、「自動車税を滞納していない」「自動車税を納付してから3週間以上経過している」場合、この手続きは必要ありません。
納税の有無はネットで確認してもらえるので、とても楽です。
5. 車検の受付
施設内の場所を移動して、「ユーザー車検受付窓口」へ。
これまでの必要書類を提出して車検の受付を行います。この時、予約時に発行された予約番号を聞かれます。
受付が終わったら、いよいよ検査コースに移動して車検を行います。ここまでの作業は約30分程でした。
●検査スタート
ついに検査です。検査コースでは8項目について検査されます。
ユーザー車検だと分かっているのか、自動車検査員が丁寧に指示してくれるのであとは従うだけ。初めてでも安心です。
以下がチェック内容です。
・同一性の確認
車検証と申請書類の記載内容と対象車両が同一であることを確認
・外回り検査
対象車両の外観における保安部品に問題がないことを検査
・サイドスリップ検査
前後輪の横滑り量を検査
・ブレーキ検査
前後輪と駐車ブレーキの制動力が基準値内であることを検査
・ヘッドランプ検査
ヘッドライトの光量、光軸が基準値以内であることを検査
・スピードメーター検査
実際の速度とスピードメーターの表示の誤差を検査
・排気ガス検査
排出ガスのCO値とHC値の濃度を確認
・下回り検査
対象車両を下から見て、不具合がないことを確認
無事、合格かと思ったら、甘くはなかった!ヘッドランプ検査で不備が見つかりました。ライトの光軸が基準以内でなかったのです。
どうしよう。ヤバイ・・・。このあと何をすればよいのか不安になり自動車検査員に尋ねると「予備検査場があるのでそこで修正してもらえますよ」とのこと。
当日、再検査も可能とのことなので早速、予備検査場へ向かいました。
車検で落ちたら予備検査場へ
車検に慣れていないと検査時にミスをして落ちてしまうこともあります。しかし簡単な不具合であれば予備検査場で修正することができます。
運輸支局の近くに予備検査場があったので早速、事情を説明して修正してもらいました。プロの車屋さんも並んでいたので車検で不合格になることは珍しいことではないようです。
ここでは実際の検査と同じ項目で、以下の不具合箇所をチェックしてくれます。
- サイドスリップ検査
- 各ブレーキの検査
- スピードメーター検査
- ライトの光軸検査・調整
- 排気ガス検査・調整
気になるのは料金ですが、特定の箇所のみだと2000円〜3000円程。僕の場合は2200円で済みました(ホッ)。
地域によっては「予備検査場が存在しない」「一般の方はお断り」という場合もあるそうなので事前に確認しておきましょう。
●検査後
予備検査場で不具合を修正して再度検査に向かいました。
結果は「合格」!
窓口で新しい車検証とステッカー(検査標章)の交付を受けました。
ユーザー車検でかかった費用は?
ユーザー車検初心者でしたが、なんとか成功することができました。そして今回かかった費用はこちらです。
○自動車重量税(24ヶ月分) →32,800 円 (3ナンバー)
○自賠責保険料(24ヶ月分) →21,550円
○検査登録印紙・審査印紙 →1,800円
○予備検査機械使用料(光軸修正) →2,200円
合計は法定費用併せて、 58,350円でした。
これまでディーラーに頼んだ場合、「法定費用」+「車両基本料」+「代車代」+「車検代行手数料」と少なく見積もって、大体14万円以上かかりましたから、ユーザー車検によって8万円以上、浮いたことになります。
しかも実際に要した時間は2時間程度。もっと大変かと思いましたが「意外にスムーズで楽しかった」というのが正直な感想です。
ただしユーザー車検には、デメリットもあります。
まず、何があっても自己責任ということ。ユーザー車検では整備工場などのように細かく車の不具合をチェックすることが難しいです。そのため車検に通った後で、検査項目外の不具合が見つかってしまう可能性があります。
対策としてはユーザー車検後、法定点検をしっかりと受けること。法定24ヶ月点検は、車の故障を防ぐための定期点検なのでエンジンやブレーキなどに関して、それぞれに決められた検査を行います。ユーザー車検に合格してもプロの目で見てもらうことをおすすめします。
今回、ユーザー車検に挑戦した最大のメリットは、車への意識が高まったことでした。他人任せにしないことで整備への意識や税金などのコストも改めて考える機会になりました。
合格したときには独特の達成感を味わうことができます。時間に余裕があり、車好きなシニアは一度、チャレンジしてみてはいかがでしょう。
取材・文=大屋覚
<参考>
軽自動車検査協会
https://www.kei-reserve.jp/pc/index.html
■Profile■
大屋 覚(放送作家・ライター)
テレビや書籍、Webマガジンを中心に活動中。医療・福祉・介護分野を中心に取材や執筆を行う。NHK、民放キー局の情報番組やスポーツ番組なども手がける。早稲田大学・同大学院修了。静岡生。