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敬老の日、プレゼントして欲しいお祝いの食事と“魔法の言葉”

2020年9月21日(月)は敬老の日。大好きなお爺ちゃん、お婆ちゃんの贈り物に悩まれている方も多いのではないでしょうか。今回おすすめしたいのは、敬老の日のお祝いの食事と“魔法のコトバ”です。合言葉は「もっとお肉食べてね!」。

イメージ/無料写真素材 写真AC

敬老の日、食事は「お肉」にしよう!

元気なお年寄りはお肉を食べる。

介護施設で働く人たちから、よくこんな言葉を耳にします。

もちろん食べ過ぎは禁物ですが、ジューシーなお肉をしっかりと平らげる高齢者には健康で元気な方が多いです。

厚生労働省が行っている国民健康栄養調査によると、65歳以上の女性の4人に1人が「低栄養」の恐れがありました。しかも80歳以上になると男性の約2割が低栄養の傾向、つまり“栄養不足”の状態なのです。低栄養になると、食欲の低下などから徐々に食事量が減り、エネルギーとたんぱく質が欠乏します。

そして健康な身体を維持するために必要な栄養素が不足して、肺炎や心筋梗塞、死亡のリスクが高まることが多くの研究からわかってきています。年を重ねると食が細くなり、栄養不足で老化が進んでしまうケースも少なくありません。

お爺ちゃん、お婆ちゃんの天敵「低栄養」。ソレをやっつけてくれるのが「お肉」なのです。

<低栄養の危険性>

✔ 認知機能の低下

✔ 免疫力や体力の低下

✔ 病気にかかりやすい

✔ 骨折の危険性が高まる

✔ 気力がなくなる

孫からのプレゼントは“魔法のコトバ”

低栄養の予防に肉を食べましょう/無料写真素材 写真AC

どうすれば大好きなお爺ちゃん、お婆ちゃんの低栄養を防ぐことができるのでしょう。家族、とくに孫から祖父母に言ってほしい“魔法のコトバ”があります。

それは、「もっとお肉を食べてね!」。

肉は体内のたんぱく質を効率的に増やすのに優れています。

とくに少量で効率よくエネルギーになる、脂肪が含まれた適度に脂身のある肉を食べていただくのがおすすめです。高齢者にとって1日に必要なたんぱく質の摂取量*は、 身体活動レベルⅡの65歳以上の男性では90g~120g/日、女性で69g~93g/日 とされています。

*「日本人の食事摂取基準(2020年版)」 ( 厚生労働省 )

<身体活動レベル >
 Ⅰ(低い) : 生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合
 Ⅱ (普通) : 座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、あるいは通勤・買物・家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合
 Ⅲ(高い): 移動や立位の多い仕事への従事者。あるいは、スポーツなど余暇における活発な運動習慣をもっている場合

働き盛りのころはメタボ予防、肥満解消のために肉や脂っこいものを食べない方も多かったと思いますが、高齢になったらメタボ予防から低栄養の予防に意識を変えることが大切です。

ただし、肉やたんぱく質のとりすぎはカロリーオーバーや病気のリスクとなりますのでご注意下さい。また、腎臓病・糖尿病・高血圧などで食事制限がある方は、医師の指導内容にしたがって下さい。

低栄養素の可能性があるかどうかは次にご紹介する方法で確認できます。

簡単!低栄養の症状をチエック

低栄養のチェックで病気予防しましょう/無料写真素材 写真AC

低栄養のリスクは、体重の減少でチエックできます。体重の変化は低栄養を発見するために最も重要な指標です。

以下のいずれかに当てはまる場合は、低栄養のリスクがあります。

①体重が6カ月間に2~3kg減少した

②1~6カ月間の体重減少率が3%以上である

体重減少率は次の計算式で求めることができます。

(通常の体重-現在の体重)÷ 通常の体重×100

体重の減少率が、1カ月に3%以上5%未満、3カ月に5%以上7.5%未満、6カ月に7.5%以上10%未満の場合は「低栄養の中リスク」です。

適切な栄養補給によって体重が改善される可能性がありますが、体重減少率がそれ以上の場合は「低栄養の高リスク」なので注意が必要です。

もしも低栄養になったら

食生活の見直しで低栄養を予防しましょう/無料写真素材 写真AC

敬老の日。

久しぶりに会ったお爺ちゃん、お婆ちゃんが驚くほど痩せていた場合、低栄養の可能性があります。早めに病院で検査を受けてもらいましょう。

病院で低栄養と診断された場合、お医師さんの指導を守り、食事の頻度、時間、分量、栄養のバランスなど食生活を見直す必要があります。

具体的な例を紹介します。

<食事メニュー例>

・穀物をはじめ乳製品や卵など高たんぱくで高カロリーのものを中心に。

・おかゆに「おかか」や「ちりめんじゃこ」を加える。

・味噌汁には細かく刻んだ豆腐や野菜、さまざまな具材を細かく刻んで加える。

薬局などで販売している介護食には、少量でもしっかりとエネルギーを賄える高カロリーのメニューが多いです。

この他、食べやすい高カロリーのメニューには、クリームシチュー、ビーフカレー、肉味噌うどんなどもあります。

食べやすい高カロリーのメニュー/無料写真素材 写真AC

高齢者の中には一度に多くの量が食べられない方もいます。そうした方は1日3食にこだわらないことも大切です。一回の食事の量を減らし、そのぶん食事の回数を多くしましょう。たんぱく質が含まれたプロテインパウダーや、ビタミン剤を料理に加えたり、栄養補給ゼリーなどを活用するのも効果的です。

大切なのは、美味しく食べて栄養を補ってもらうことです。

楽しい食事が最高のプレゼント

一家団欒で楽しい食事が元気の源/無料写真素材 写真AC

お爺ちゃん、お婆ちゃんにとって最も嬉しいプレゼントは、やはり一家団欒、家族との楽しい食事です。コロナ渦でも対策をしっかりしながら、家族団らんで食事をする機会を増やすことは、高齢者の健康面からも大切なことです。巣ごもり生活を続けると心身の衰えから食事量が減り、低栄養になる可能性が高いと言われています。

低栄養は、急激に体調が悪化するような状態ではありません。しかし栄養が満足にとれない状態が続くと、じわりじわりと体に悪影響を及ぼします。将来、介護が必要にならないためにも家族で食事をする機会を増やし、食べることの楽しさや重要さを思い出してもらえるのではないでしょうか。

合言葉は「お肉もっと食べてね!」です。

文=大屋 覚

≪参考≫

厚生労働省 平成29年「国民健康・栄養調査」

■ Profile ■

大屋覚(介護福祉アナリスト/ライター)
テレビや書籍、Webマガジンを中心に活動中。医療・福祉・介護分野を中心に取材や執筆を行う。早稲田大学・同大学院修了。日本認知・行動療法学会会員。

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