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しんこが走る!シニアわくわく体験記[第1走]
家庭で即戦力!? 男のお料理教室入門コース

「しんこが走る!シニアわくわく体験記」では、好奇心の向くままに巷の体験スポットや教室などをご紹介します。 第1回目はシニア男性とお料理の現状を探るべく、料理教室「ベターホーム」の「お料理入門コース 男性クラス」におじゃましました。クラスの実況、料理を始めるきっかけや習得の利点、”料理を習得した爺ちゃん”がいる家庭の幸運などなどをお届けします。

包丁の持ち方から学ぶ、0からスタート男性お料理教室!

 エプロンと三角巾を身につけた生徒さん達が、メモを持って先生の調理台を取り囲み熱心に説明に耳を傾けている。平日午前中のクラスなので、9割以上がシニア世代だ。

 今日の献立は肉じゃが、青菜ののりあえ、なめこのみそ汁の3品。ホワイトボードには今日の料理のポイントや野菜の切り方が書かれている。

 「まずは手を洗って」。講師の野上恭子先生がゆっくり丁寧でわかりやすくデモンストレーションを始める。生徒さんの実習はこのお手本を見た後だ。

先生:肉じゃが、美味しいですよね。おうちではお肉は牛豚どちらをお使いかしら。今日は牛肉ですがどちらも美味しいですよね。今日はほろほろした口当たりの男爵いもですが、ねっとりした食感が好きな人はメークインを使ってもいいですよ。お家で作るときは好みによって自由に選んでください。ジャガイモを買ってきたら涼しくて光の当たらないところに保存してくださいね。

 生徒さんの頭には「ドウシテ日陰ニ置クノダロウ?」と疑問が浮かんだことだろう。

先生:そうしないとジャガイモが緑色っぽくなってしまいます。そこをたくさん食べるとお腹が痛くなります。もし緑になってきたら皮を厚く剥いて取り除いてください。

生徒:へ~、納得。

先生:このジャガイモ中玉一個で150グラムくらいです。

 お料理レシピは材料をグラムで書かれていることも多いし、食品の大体の重さがわかると量をイメージできて買い物がしやすいのだ。

先生:皮を剥くのには包丁よりピーラー(皮むき器)が便利で薄く剥けます。芽はピーラーについている突起でくり抜きます。ピーラーがご家庭にないときは包丁の刃の根元を使ってください。切り方はコロっとさせてね、スライスはダメですよ。ジャガイモは放っておくと褐変(芋が茶色くなる)するので、水に晒しましょうね。

 ジャガイモについてのほんの一コマだが、授業を通して先生の説明には、実際に生徒さんが家庭で必要とする料理に付随した生活周りのハウツーがほぼ全て組み込まれている。
 バランスのいい1食分の献立、買い物の仕方、食材の保存方法、必要な道具とその使い方、調理のポイント、ゴミの出し方などなど。

レッツ クッキング!

 先生の懇切丁寧な説明付き肉じゃがができたら、次は生徒さん達の出番だ。ひと班4人のテーブルに分かれて教わった通りに作業を始める。今日は5月に始まった月1回6回コースの最終日なので、みんなの作業動線もスムーズだ。

 先生と助手のスタッフ三人が絶妙なチームワークで各班を見回り、生徒さんの様子を見極め細かい指導をしながら肉じゃがを完成に導く。生徒さんたちは、すぐ傍で見守ってもらえるので安心して作業ができる。

男性はほとんど調理経験がないせいか、素直に愚直に先生の教えを寸分違えず遂行し、数字にはとても忠実だ。

 青菜ののりあえとなめこのみそ汁も先生のお手本の後に生徒さん達が調理をし、全班失敗することなく3品を作り上げた。盛り付けも、真ん中を高めに盛る先生の教えの通りで美しい。

試食のときにはシンクに洗い物がない!!という感動。

 ところで、台所を預かる世の(大半は)奥様がたは、旦那さんに料理を任せて後片付けまできちんとできるのか、という疑惑をお持ちではないだろうか。

先生:レンジ周りの汚れはまだ温かいうちに拭いてください。落ちやすいですよ。

 授業では後片付けのやりかたまできちんと教えてもらえる。試食のときにはすでに道具は所定の場所に片付けられ、レンジ周りはピカピカ、シンクには洗い物が何一つない。食後は食べた食器を洗うだけ。

 ”料理を習得した爺ちゃん”が家庭にいるとは、調理と調理に付随したあれやこれやの一家事労働が完結するこということ。奥様は家族の昼食と夕食に一片の憂いもなく、心置きなくお友達とランチ会に出かけられるということなのだ。

身につけたのは料理の技術と自立心

 試食中の生徒さん(シニア世代)にインタビューしてみた。

---出来はいかがですか?
生徒さん達:最高ー。美味しい。

---受講のきっかけは?男性のみの教室を選んだ理由は?
生徒A:定年を迎えて時間がある。女性が一緒だと気がひける。
生徒B:自活していけるように。いやあ、奥さんを見直したよ。
生徒C:以前から興味があったから。女性と一緒だと足手まといが怖い。男同士なら境遇が同じだろうしね。

資料提供:ベターホーム

---実際に家庭で料理をしましたか?振る舞った感想は?
生徒A:月に1、2回作ってます。作るのは面倒ですね。
生徒B:作ってます。料理って大変、実感しました。家族は美味しいって言ってくれます。
生徒C:週に1、2回作ってるよ、スパゲッティとか。土曜の昼が多いかな。喜んで食べてるよ。

---全6回コースを終えて良かった点は?
生徒A:今までは奥さんがいないと不安だったけど、今は人に頼らなくても大丈夫。自身がついた。
生徒B:だんだんバリエーションが広がってきたよ。
生徒C:奥さんも喜んでくれる。自分だけでも孫の世話ができるようになった。

「食べる」を意識する

 三品を美味しく作った後の野上恭子先生にお話を伺う。

---料理教室の講師になられた経緯を教えてください。
 もともとベターホームでお料理を10年ほど習ってました。先生がいきいきしていたので私もできたらいいなと思い、新聞の募集広告を見て応募しました。講師になって20年以上になります。

---シニア男性に料理を教えるときの心配りは?
 シニアの方は真面目で熱心です。いいところは声に出して褒めるようにしています。男性は素直で教えた通りにやってくださいます。総じて上達が早いです。
 お料理初心者の男性は、女性の目の気にならない「男性コース」が通いやすいと言われる方が多いですね。

---半年間全6回コースを終えて生徒さんにどんな変化がありましたか?
 1回目は包丁の持ち方やら何やら一から教えます。手取り足取りやっていくと皆さんだんだんと動けるようになって、手際が良くなりましたね。
 社交性もあるので生徒さん同士で盛り立ててやっています。今日、春夏コースの修了証をお渡ししました。6回受講すれば応用もききますが、ほとんどの方がもう半年間、11月からの秋冬の入門コースも受講なさいますね。
 料理は馴れです。作り続けることで栄養面、食べやすい工夫など、食に対する意識が変わります。  

注目!「健康長寿をのばす元気ごはん」コースがスタート

 シニアコースでも男性コースでもないが、注目なのが「健康長寿をのばす元気ごはん」コース。そのものズバリの私たちの為に新設されたようなコースである。「体は食べ物でできている」。10の食品群から毎日7種類以上食べることを目標に、手間をかけずにできるレシピを紹介している。
 いつまでも元気に過ごすせる、食の知識を身につけたいものだ。

 家族には美味しさと健康を、ご自身には家庭内で輝くため、”料理を習得した爺ちゃん”になってみるのはいかがだろうか。

文・イラスト・写真=吉田しんこ

『ベターホームのお料理教室』
1963年主婦達の学習集団として発足。現在、全国各地(取材は渋谷)に教室があり、入門から上級までライフスタイルに合わせて全18コースを主催する。日本の家庭料理や食の知識と知恵など、すぐに役立ち一生使える料理の基本が習得できる。11月と5月スタートの半年コースと、半年通しで通うのが難しい方には一回から受講できるチケット制もある。

◾️Profile◾️
吉田しんこ(イラストレーター・ライター)
イラスト付き取材記事が好き。デザイン学校を卒業後イラストレーターに。さし絵、チラシのデザイン、絵本、ピクトマップなどを制作。得意分野:食べ物、スポーツ、理科など。趣味:インディアカ、読書。

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