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コーディネイターに聞く
現代の葬儀のかたち① 「戒名なし」「読経なし」

家族葬も一般的になり、葬儀のかたちが変化している。なかでも目立っているのは儀礼的なものの排除。もともと葬儀って何だろう?

コーディネイターに聞く現代の葬儀のかたち

葬儀をコーディネイトする仕事

「戒名はつけず、読経なし。通夜、告別式もないという葬儀が増えています」

そう話すのは、葬儀のときに、寺院をコーディネイトする仕事に就いて15年になるAさん。葬儀には、僧侶の読経は付きものと思っていると、そうとはいえなくなっているのが現在の葬儀事情。

もし、あなたが、自分の亡くなったときに僧侶の読経で見送ってもらいたいと思ったら、家族の目に触れるものに書き残しておくか、伝えておかなくてはならないーーそうなってきているようです。

最近、特に増えてきているのが無宗教葬です。ところが、目上の親族から「そんなものは葬儀とはいえない」と反対されて、故人の生前の意思を尊重したくてもできないと、遺族が頭を抱えることも増えているようなのです。

自分の家の宗派を知らない人が増えてきた

葬儀社は仏教葬の依頼を受けると、寺院(読経をする僧侶)を選び、日程の調整をします。菩提寺がある場合には菩提寺に連絡し、菩提寺が遠方で僧侶に来ていただくのが難しい場合や、菩提寺を持っていない方には、同じ宗派の別のお寺を手配します。

信仰心とは無縁になって、自分の家の宗派を知らない人も多くなっているそうです。

「そういうときは、遺族からご先祖の戒名をお聞きして、戒名から宗派の見当をつけることも、葬儀社の大切な仕事のひとつになります」(Aさん)

戒名は、浄土真宗では「法名」、日蓮宗では「法号」といいますが、宗派によって、付け方にも特徴があるそうです。

お布施は対価ではない

寺院を選ぶときには、葬儀にふさわしい寺院(僧侶)の格式を選び、数人の僧侶を手配することもあるのですが、それにこだわると寺院にお渡しするお布施も高くなります。

お布施とは、日頃からおつきあいをしている寺のご本尊へ、僧侶を通してお渡しする“気持ち”。それが本来の意味なのですが、お寺とのつきあいがなくなり、葬儀や法要でしか会うことのない僧侶、寺院に対して、対価のような相場ができてしまったというのが現状のようです。

「追加料金なし」のセットプランも増えている

Aさんの説明によると、
「葬儀の形式が少しずつ変化していくなかで、2009年にイオンライフ株式会社が葬祭事業に参入してきたときには、既存の葬儀社は、みな固唾をのんで見守ったそうです」

特徴は、「追加料金のない総額見積もり」。全国一律の価格で利用できるようになっていて、イオンカードを持っていれば、葬儀費用はもちろん、プランに含まれていないお布施の支払いもカードでできるのだそうです。

葬儀の中身が見えない不信感

冠婚葬祭のなかで、唯一、準備期間がないに等しいのが「葬儀」です。そのため、葬儀社の「言い値」になることも多く、中身の見えない金額に対する不信感も高まってきました。

「どうして必要なのかがわからない項目の不明瞭な金額。そうした背景があって、明瞭な金額や、葬儀を宗教から離れた儀式として捉える風潮になったのだと思います。僧侶の読経なし、戒名不要も、そういうことから増えてきているのでは」とAさんは言っています。

現代の葬儀のかたち②に続く

文=水楢直見(編集部)2016年7月取材

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