健康な体づくり
「吹き矢」で、楽しく、元気になろう!
腹式呼吸がもたらす健康効果
「吹き矢」といえば、忍者か狩猟ハンターなどのイメージがありますが、じつは健康増進につながるレクリエーション・スポーツなのです。楽しみながら、仲間も増えて、しかも心も身体も元気になる。男女年齢問わずに続けられる「吹き矢」の魅力とは何なのか。
写真撮影:弓削ヒズミ
吹き矢を吹くことで、腹式呼吸が自然と身につく
シニア世代の健康法もいろいろありますが、注目したいのが「レクリエーション吹き矢」です。吹き矢なんて、ただ遊んでるだけ? いえいえ、たしかに競技者は楽しんでいますが、いざ競技に参加してみると、まっすぐ矢を飛ばし、的に当てるのは、なかなか難しいものです。
吹き矢の筒の長さは1メートル、競技会ルールでは7メートル離れた場所から矢を吹く/写真撮影:弓削ヒズミ
吹き矢の動作「空気を吸う・吐く」には、「腹式呼吸」が必要となります。呼吸には「胸式呼吸」「腹式呼吸」があり、読んで字のごとく、呼吸時に胸が膨らむのが「胸式」、お腹が膨らむのが「腹式」です。
寝ている時、自然とお腹が膨らんだり、しぼんだりしながら呼吸していますが、それが「腹式呼吸」です。歌手や役者が、大声を出す時も、この腹式呼吸を使い、声量や息のコントロールを行います。お腹を動かすことで代謝を促進する効果や、気持ちが落ち着き、リラックスできるともいわれています。
吹き矢の効能にあげられるのは腹式呼吸。ほかには口腔ケアとの相乗効果も期待されている/画像提供:一般社団法人 日本吹矢レクリエーション協会
酸素を多く摂取できれば、脳の働きにも影響が
「レクリエーション吹き矢」では、矢を吹く前に、両手を挙げて、ゆっくりと深い呼吸を行います。その理由を、(一社)日本吹矢レクリエーション協会会長・河西信祐さんにうかがいました。「しっかりと空気を吐き出さないと、次に吸えないのです。悪い空気を全部出し、新しい空気を取り入れると思ってください。そうすると腹式呼吸の呼吸法が身につきます。吐くトレーニングなんですよね。吐けば、吐いただけ吸えます。そうすれば矢の射速も一定して、的中率も上がってきます。吹き矢は『吐く』『吸う』を身につけるのに向いていると思います」。
矢をまっすぐ飛ばすためには、背筋を伸ばし、姿勢を保つのが理想。吹き矢を続けることで、腹筋や背筋などが強化されて、体幹の向上にも/写真撮影:弓削ヒズミ
「呼吸を意識することによって呼吸量が増えると『酸素』の摂取も増えます。摂取された酸素の20%以上は脳で消費されるといいますので、脳に必要な酸素が足りないと機能低下の恐れがあります。感情、ホルモン、内臓などのコントロールまで、すべてに脳が関わっており、脳の低下によって、元気がない、外に出たくない、何をやってもおもしろくないなど、そういう傾向になってしまいます。『腹式呼吸』の習得は、脳を活性化させるにも、すごくいいのです」。
的(マト)によって点数の計算方法が異なるので、それも頭の体操として効果があるとも/写真撮影:弓削ヒズミ
「レクリエーション吹き矢」は、たくさんの運動量を必要とせず、無意識に有酸素運動を行えるユニバーサルな生涯スポーツといえそうです。
さまざまな競技方法で、初心者でも勝てる可能性も
ちょっと難しい話になりましたが、「レクリエーション吹き矢」の大きな魅力、それは誰でも簡単にできるところにあります。ヒザが痛い、腰が痛い、激しい運動は無理だとしても、矢を吹いて点数を競う「吹き矢」ならば誰でも参加もしやすく、子どもから高齢者まで同じルールでできる、体力的なハンデが少ないのも特徴です。的(マト)に当たった喜びで、また、やってみたい、もっと点数を伸ばしたい、そんな達成感が得られるのが、継続したくなる理由でもあります。
吹き矢の基本動作。空気を吸うときは鼻から、吐くときは口で、それが腹式呼吸の基本/画像提供:一般社団法人 日本吹矢レクリエーション協会
日本吹矢レクリエーション協会では、普通の競技的(マト)だけではなく、ゲーム性をより高めるために、点数を分散させた「レクリエーション的(マト)」、タテ、ヨコ、ナナメに揃える「ビンゴ的(マト)」も用意しています。こうしたバリエーションのおかげで、初心者でもベテランに勝つことがあるそうです。
競技的(マト)/画像提供:一般社団法人 日本吹矢レクリエーション協会
レクリエーション的(マト)/画像提供:一般社団法人 日本吹矢レクリエーション協会
ビンゴ的(マト)/画像提供:一般社団法人 日本吹矢レクリエーション協会
街全体のコミュニティにレクリエーション吹き矢が役立てば
協会会長・河西信祐さんに、これから期待されるレクリエーション吹き矢の役割について、お話を聴きました。
「12年前、高齢者の健康維持のため、何か長く続けられる運動はないかと探し、吹き矢に出会いました。競技結果がすぐ出て、みんなで楽しめる、そういった簡単で楽しいところに愛好者が増え、いまでは500以上のサークル、約1万5千人という人が競技をしています。協会に登録された方の年齢を調べてみると平均年齢71歳。高齢者の健康とコミュニティづくりに役立っているようです」。
2016年10月16日に行われた「第70回 立川市民体育大会吹矢の部」には74名がエントリーして、日ごろの練習成果を発揮しながら点数を競い合った/写真撮影:弓削ヒズミ
「最近では小学校からの問い合わせも多く、学童に吹き矢を導入されているところもあります。いずれ、子どもさんのグループと老人会のグループが一緒に親子ゲームみたいなことをやったり、地区別でサークル対抗戦をやったり、レクリエーション吹き矢が街全体のコミュニティに役立つ時代が来ればいいなと思います」。
2016年10月16日に行われた「第70回 立川市民体育大会吹矢の部」の参加者一同。/写真撮影:弓削ヒズミ
取材は立川市で行われた大会の会場で行わせてもらいました。その際、何人かの大会参加者とお話をしたところ、皆さんが口を揃えて、「仲間が増えて楽しい」とおっしゃっていたのが印象的でした。実際に協会が行った調査資料でも年代を問わず平均12人の友人ができたという結果がでています。
吹き矢のサークルや教室は、全国各地にあり、定期的に無料体験会を行っているそうなので、興味がある方は、ぜひ、挑戦してみましょう。
文・写真=弓削ヒズミ(編集部)2016年10月取材
一般社団法人 日本吹矢レクリエーション協会
詳しいルールの説明や、協会公式の吹き矢グッズが紹介されています。