健康な体づくり
転倒予防に役立つ!シニアにおすすめ「健康法&スポーツ」
シニア世代の大敵といえば、「転倒」。元気に暮らしていても、バランスを崩して思わぬ場所で転びそうになった経験ありませんか??厚生労働省によると、転倒・転落による不慮の事故は交通事故死の約2倍。高齢者の場合は転倒が原因で「介護」が必要になるケースも多く最悪、寝たりきりの生活を送ることにもなりかねません。そこで今回は、介護士でもある筆者が、転倒防止に役立つシニアにおすすめの「健康法&スポーツ」を紹介したいと思います。
「美姿勢ウォーキング」で足腰を鍛えよう
転倒防止のカンタン健康法といえば、「ウォーキング」が王道ですよね。有酸素運動の代表格であるウォーキングは道具も必要ないので、誰でも手軽に始めることができます。シニアになると強い力を出し、素早く動くスポーツは苦手だと言う人も多いのですが、ウォーキングならゆっくりと持続的に行いながら、足腰を鍛えることができます。 おすすめするのは、歩く意識を高めながら行う「美姿勢ウォーキング」。美しく歩くことで自然に背筋も伸び、全身のフォームも大きくなりますし、見た目も若々しくなりますよ!
美姿勢ウォーキングの3つのポイント
①モデル気分で少し遠くを見て、背筋をまっすぐ伸ばす。
②肘を軽く曲げ、カカトから地面に着く。
③歩くときはひざを伸ばしながら、足の指で強く踏みきる。
美姿勢ウォーキングは、全体で30分程度をテンポよく歩きましょう。ゆっくり歩きすぎると運動の強度が足らずに、有酸素運動の効果をあまり期待できないのです。
ただし、途中で「疲れたなあ」と感じたら、すぐにペースを落とすようにしましょう。
シニア向け「空手エクササイズ」で体幹を鍛えよう
最近、シニア世代に人気なのが東京2020オリンピックで実施される「空手」を取り入れたエクササイズです。武術を身に付けながら体幹を鍛える「空手エクササイズ」は、護身術、ストレス発散をはじめ、転倒予防にも効果が高いと注目されているんです。
転倒の大きな原因は「つまずき」
シニア世代の転倒でやっかいなのは、太ももの付け根にある「大腿骨(だいたいこつ)」の骨折で、70歳頃から急増するそうです。介護の現場でも大腿骨骨折で車椅子を利用することになった方は少なくないです。こうした転倒の多くは歩行中のつまずきによって発生しています。空手を通してバランス感覚を養いましょう。
ゆっくり動作でバランス感覚アップ!
空手エクササイズのポイントは「ゆっくり」です。年齢に関係なく、ゆっくりと動くことは健康法として重要な意味があります。ゆっくり動くと「緊張筋」や「伸筋」といった体の姿勢を保つための筋肉が鍛えられ、自然にバランス感覚が養われていくのです。
また、ゆっくりと腹式呼吸をすると脳内で気持ちを落ち着かせるセロトニンが出やすくなり、リラックス状態を得られると共に、効率よく酸素を取り込めて免疫力も高くなります。
実際に簡単な動きをゆっくりと行うだけでも、その効果が実感できますよ。
お金をかけない!?「うつぶせ寝」健康法
実は、転倒は睡眠とも密接な関係にあります。夜間の不眠は日中の眠気や平衡感覚の障害などをもたらし、転倒を引き起こすと考えられています。そこでご紹介したいのが「うつぶせ寝」健康法です。これは100歳の現役ドクターとしても知られた聖路加国際病院名誉院長の日野原重明先生も毎日実践していた“健康長寿法”で、看護・介護の現場でも注目されています。
そもそも脊椎動物である人間は、本来うつぶせ寝が自然なカタチだそうです。
うつぶせ寝には、「背骨の周りの太い血管が圧迫されにくい」、「酸素がたくさん吸い込まれるので呼吸が楽になる」、「気道が確保されるのでイビキが軽減される」、「痰が吐き出されやすい」などのメリットがあるそうです。
日野原流「うつぶせ寝」の方法とは
①入眠時に枕を3つ用意する。
②2つの枕を頭部と胸と胴の間に置き、その上に体ごと乗っかる
③もう1つの枕を膝の間にはさむ
日野原先生は、この状態で50数えるうちに眠り込んでしまうとか。うつぶせに寝ると自然に腹式呼吸となり、結果、多くの酸素を取り込めるので脳梗塞や心筋梗塞の予防も期待できるとか。また、猫背や腰痛、肩こり、疲労なども改善し、寝つきが良くなり、睡眠も深くなるそうです。
うつぶせ寝のデメリット
うつぶせ寝をすることで、胸式呼吸による息苦しさや嘔吐、窒息の可能性、肩関節の脱臼や骨折などのリスクもあります。不調の症状が出たら、絶対に無理をしないで下さいね。 大事なのは眠りの質を高めること。しっかり寝て転倒予防に役立てましょう。
まとめ~転倒予防に役立つヒントとは
「転ばぬ先の知恵」と言いますが、高齢者のケガの大部分を占める転倒を防ぐことは、シニアライフをいつまでも楽しむ秘訣です。大切なのは習慣的に続けること。やはり、「継続は力」ですよね。今回は転倒に役立つ健康法&スポーツをご紹介しましたが、興味があれば、ぜひ一度チャレンジしてみましょう。
文=大屋 覚
■Profile■
大屋 覚;パフォーマー/放送作家/介護実務者
1989年からテレビや書籍、WEBなど幅広いジャンルの企画、構成、執筆に携わっている。2012年より大学院にて「健康福祉」の研究に取り組み、その成果を生かすライブ活動を展開している。早稲田大学、同大学院修了。静岡生。
参考
:厚生労働省平成29年人口動態統計
:中高齢期の健康運動実践法・ウォーキングと転倒予防(渡部和彦、広島大学名誉教授)