健康な体づくり
視力回復で認知症予防「人生100年時代」を幸せに生きる3つのヒント
行ってきました!「第2回人生100年時代の生き方・老い方会議」。東京・日本橋で9月11日(水)に開催されたイベントには、65歳以上のシニア世代が続々と訪れ、100席用意されていた席も埋まってしまうほどでした。参加した方々はみなさん、背筋がシャンとしていて目が輝いている人ばかり……。イベントでは「人生100年時代の生き方・老い方」をテーマに健康的に幸せに年を重ねるための「3つのヒント」を教えてもらいました!
幸せヒント①認知機能の維持は「眼の健康」!
突然ですが、眼のセルフチェックをしてみましょう。
30㎝ほど離れて以下の図を見ましょう。片目で真ん中の点を見てください。
メガネやコンタクトレンズをしたままでも大丈夫です。
いかがでしょうか?
この図がゆがんだり、中心部が暗く見えた方は「加齢黄斑性」や「糖尿病網膜症」の可能性があるそうです。
今回のイベントで目の大切さについて講演されたのが、目の疾患に関する最先端の診断・治療に取り組まれている東京女子医科大学医学部 眼科 教授の飯田知弘先生です。
飯田先生は、人生100年時代を行く抜くためには「眼の健康」が重要であり「認知症予防」の観点からも目の健康を維持することが大切だといいます。その理由について詳しくお話を伺いました。
あなたは大丈夫?目の病
シニア世代の視力障害に関連する身近な3つの疾患に「白内障」「緑内障」「加齢黄斑変性」があります。白内障は目の中にある水晶体が濁る病気で80歳を過ぎると100%の方に症状が認められます。
主な自覚症状としては「かすんでみえる」「まぶしい、明るいところで見にくい」「一次的に近くが見えやすい、メガネが合わなくなる」「二重・三重に見える」などがあります。
そして、日本における視力障害の原因の第4位が「加齢黄斑変性」で、眼球の奥にある網膜の中心部「黄斑」に障害が生じる病気です。最初にチェックした図1で異変があった方は、すぐに眼科を受診することをお勧めします。
飯田先生によると、眼の健康を維持することは認知症予防にも役立つそうなのです。
眼の健康で「認知症」を予防!
今回の講演で飯田先生が紹介してくれたのが65歳以上の男女を対象とした「藤原京スタディ」という研究です。それによると、白内障手術によって視力が回復することで認知機能の改善が認められたそうです。
講演後、飯田先生にインタビューさせていただきました。
Q.視力の改善は認知症予防につながるのですか?
飯田先生「視覚障害が改善することで認知機能を上げることができます。ただし認知症になると元に戻すことはできないので、(視力回復)で認知症を進行させない、遅らせる、という効果があります」
Q.眼にいい生活習慣とは?
飯田先生「バランスのよい食事が大事ですね。ビタミンC/E、ルティン、亜鉛などの抗酸化成分やオメガ3系脂肪酸などの欠乏は、加齢黄斑性のリスク因子があることが知られています。緑黄色野菜や魚介類ととるのも良いです。あと禁煙など健康的な生活を心がけると良いですね」
シニア世代にとって認知症の予防は大きな課題でもあります。「100歳まで健康な視力を維持するためにも定期的な眼科受診を心がけましょう」というアドバイスをいただきました。
幸せヒント②シニア職人「奇跡のノート」!
今回のイベントでシニア世代の健康と幸せについて、熱い想いを語ってくれたのが「水平開き®ノート(通称・おじいちゃんのノート)」を開発し、SNS上で話題となった中村印刷所 代表取締役 中村輝雄さん(76歳)です。
中村さんの人生が劇的に変わったのは2016年の元旦。
下町で小さな印刷所を営む中村さんが開発した「水平に開くノート」に注文が殺到したのです。きっかけは中村さんと一緒に開発した職人のお孫さんがSNSのツイッターでノートを紹介したことでした。
「こんな奇跡があるのかと思いました。それまで全く売れなくてもう打つ手なし、と思っていたので」とインタビューに笑顔で答えてくれた中村さん。
ツイッターのつぶやきから一躍有名に。廃業寸前だった小さな印刷所を救った、「水平開き®ノート」。しかしその『奇跡』が起こるまでの道のりは、まさに山あり谷ありでした。
廃業寸前、あきらめない夢
世の中がデジタル社会へと舵を切り出す頃、印刷業界は衰退が進んでいました。中村さんの印刷所も厳しい状況が続く中、ノート市場は1%伸びていると知りました。
わずか1%の可能性に賭けて、自社製品の開発をスタートさせた中村さん。試行錯誤を重ねながら平らになるノート、「水平ノート」の開発に乗り出しました。
水平ノートは、どこをめくっても180度オープンになり、真ん中が膨らまずページを切り取っても残りのページが剥がれないのが特徴です。しかし、この技術開発は簡単なものではなく失敗、失敗が続き、お金も減っていきます。
廃業か、起死回生か・・・
周囲が心配する中、中村さんは決してあきらめませんでした。そして2年半かけて、ついに商品を完成させたのです。
これで長いトンネルから抜け出せる?いえいえ、世間は甘くありませんでした。
自信を持って売り込むものの、注文には結びつかない。苦労して完成させた商品も売れなければ、借金も返せない。中村さんは趣味のバイクも手放し、保険も解約して廃業も考えます。
そんな時、SNSがきっかけで大ヒットするという、まさに奇跡が起きたのです。
健康と幸せの極意とは?
今年76歳を迎える中村さんのもとには、外国企業からも問い合わせが相次いでいます。
シニアになっても挑戦を続ける人生の達人。中村さんは人生100年時代の生き方について、こんな幸せのヒントを語ってくれました。
「幸せの秘訣は家族、友人を大切にすること。また、やると決めたら最後までやるといいです。途中で辞めると自分の自信もなくなっちゃう。私も72歳で大プレゼントを頂いたんです。夢を見ると働けますから」
最近では、水平ノートを世界の子供たちに届けるため、インターネットを使って資金を集める「クラウドファンディング」を立ち上げるなど精力的な活動をしている中村さん。その元気の秘密とは何なのでしょう?
中村社長「興味を持ったら突き進むといいです。そうしないと家で燃えるゴミみたいになっちゃうから(笑)」
ヒント③幸せはコミュニケーション
イベントの後半では「ヘルシーエイジングと眼の健康」をテーマにパネルディスカッションが行われました。
いまや日本人の平均寿命は84.2年で世界第一位、健康寿命は74.8年で世界第二位です。しかも今後は平均寿命だけでなく、健康寿命の延伸がますます期待されています。
こうした中、人生100年時代を生きるシニア世代は、自分らしいヘルシーエイジングの在り方をどう考えているのでしょう?
興味深かったのは、バイエル薬品株式会社が発表した「シニア世代の加齢と健康に関する意識調査結果」です。全国のシニア世代(65歳以上)の男女1,648名を対象に実施した調査から、こんな本音が分かりました。
・シニア世代の約69%が、年を取ることに不安
・加齢や健康の不安に関するコミュニケーション不足
・本当は相談したいと思っている相手は「子ども」と「医療関係者」
調査では、シニア世代の7割近くが老いていくことに不安を感じているものの、周囲と十分にコミュニケーションがとれていない実態が分かってきました。
またシニア世代が健康的に幸せに年を重ねるために重要だと思っていることは、「心身の健康」「最低限の生活ができるお金」に続き、「家族や周囲の人との精神的なつながりやコミュニケーション」でした。
やはり、周囲の人と「コミュニケーション」のとれているシニアは、幸せ度が高い傾向にあるようです。
参加者に直撃!幸せに生きるヒントとは?
1時間半に及んだ今回のイベント。参加者はどんな感想を持たれたのでしょう?
こちらは60代と70代の仲良し二人組。日頃から健康には気を配っているそうですが、今回のイベントで新たな発見もあったそうです。
女性(右)「体重過多なのでスイミングをしたり歩いたりしています。これまで体重ばかりを気にしていましたが、今日のイベントに参加して眼の大切さを認識しました。特に認知症の関係も分かってよかったです」
女性(左)「眼の事は注意していましたが、深いことは知らなかったなあ、と痛感しました。定期検診は必ずしたいですね」
さらに、こんな70代男性の参加者も・・・・
男性「眼のセルフチェックをして右目が少し気になりました。この後、眼科を受診しようと思います」
まとめ
今回のイベントでは「目からウロコ」の幸せのヒントを学ぶことが出来ました。
まずは「眼の健康」。眼の健康が損なわれると、日常生活にも影響が生じて認知症の発生割合も高くなります。違和感を覚えたら病院で検診を受けましょう。
さらに「夢を持って諦めないこと」。72歳で奇跡を起こした中村さんには、いくつになっても夢に挑戦し、学び続ける大切さを学びました。
そして「人生100年時代」の幸せ度を高めてくれるのが家族や友人、周囲とのコミュニケーションだということも分かりました。
この3つのヒントを参考にして、人生100年時代を生き生きと過ごしましょう!
文=大屋覚
■ Profile ■
大屋 覚(放送作家・ライター)
テレビや書籍、Webマガジンを中心に活動中。医療・福祉・介護分野を中心に取材や執筆を行う。NHK、民放キー局の情報番組やスポーツ番組なども手がける。早稲田大学・同大学院修了。静岡生。