健康な体づくり
高齢者の頻尿トラブルと原因-効果的な対策方法は
シニア世代に入り、「おしっこの回数が増えた」と感じる方は少なくありません。一般的に朝起きてから夜寝るまでの排尿回数が8回以上の場合を頻尿(ひんにょう)といいます。年齢と共に頻尿に悩んでいる方も多く、長時間の外出に不安を感じていたり、夜間に何度も起きてしまうため、ぐっすり眠れないケースもあります。また、何度もトイレに起きることで、転倒や骨折をする危険があります。今回は高齢者に多い頻尿トラブル、その原因や対策をご紹介します。
トイレが近い、日中に8回以上は「頻尿」
1日の頻尿の回数は人によって様々です。ですから、一概に何回以上が頻尿というのは難しいのですが日本泌尿器学会では、「朝から就寝までの排尿回数が8回以上の場合を頻尿」と定義しています。
また夜間、排尿のために1回以上、起きなければならない症状を夜間頻尿といいます。年齢と共に頻度が高くなる夜間頻尿は、高齢者の場合、転倒や骨折をする危険があります。
この記事では、シニアの頻尿トラブルとして、「過活動膀胱(かかつどうぼうこう)」、「残尿感」、「心因性頻尿(しんいんせいひんにょう)」、「夜間頻尿」の原因や対処法を紹介します。
膀胱が活動しすぎる「過活動膀胱」
過活動膀胱(かかつどうぼうこう)は、現在40歳以上の男女の8人に一人(国内推定で800万人)が、症状を持つといわれている病気です。
本来であれば、尿意を感じない程度にしか膀胱に尿が溜まっていないのに、自分の意思とは関係なく膀胱が収縮してしまい、急にトイレにいきたくなります。
原因はよくわかっていませんが、加齢や精神的ストレスのほか、溜まった尿の量を感知する膀胱のセンサーが過敏になっている可能性も考えられています。
トイレに間に合わずに尿がもれてしまうこともあります。1回の排尿量は少ないので、何回もトイレに行くようになります。
また、トイレが近い泌尿器の病気として「膀胱炎(ぼうこうえん)」があります。膀胱炎は、細菌によって膀胱内の粘膜に炎症を起こす病気です。頻尿や排尿時痛などの症状が続く場合は、早めに泌尿器科もしくは内科を受診し、検査を受けましょう。
■対策法~膀胱訓練
日常で簡単にできる改善法に膀胱訓練があります。
これは尿を我慢することで蓄尿症状を改善させる練習です。尿意を感じてもすぐにトイレには行かずに、間隔を少しずつ長くしていきます。
① 尿意を感じたとき、5分間程度、トイレに行くことを我慢します。
② 5分間我慢できるようになったら、10分、15分と時間を延ばします。
③ 最後には、排尿から排尿の間隔が2~3時間得られるようにします。
※注:ただし我慢のしすぎは膀胱炎になる可能性があるので禁物です。
尿が残ってスッキリしない「残尿感」
「尿が出きっていない」「尿が残ってスッキリしない」など、おしっこ後も尿が残っている感じを残尿感といいます。
実際に尿が残っている場合もありますが、尿が残っていないのに残尿感を感じることもあります。残尿がないのに残尿感を感じる場合は、膀胱の病気と膀胱以外の病気が考えられます。
残尿感のある膀胱の病気には、「膀胱炎」「膀胱結石」「間質性膀胱炎」「膀胱がん」などがあります。
膀胱がんは、膀胱に発生した悪性腫瘍を指します。膀胱で発生する腫瘍のほとんどが悪性といわれ、進行すると残尿感や頻尿を生じることもあります。
膀胱以外では、「前立腺肥大症」「慢性前立腺炎」「神経因性膀胱」などがあります。神経因性膀胱は、神経の異常が原因で排尿障害になる病気です。頻尿や尿意切迫感、膀胱に過剰な量の尿が溜まるなどの症状が現れるようになります。
■対策法~骨盤底筋体操
尿道を締める力を回復するための訓練法が骨盤底筋体操です。
骨盤の底にある筋肉を骨盤底筋といいます。この部分には、排泄をコントロールする機能があるのですが、加齢と共に衰えてきまので鍛えていきます。
① 仰向けになり、軽く両ひざを立てます。
② 腹部の力を抜いた状態で、肛門と膣をしめ、5つ数えて緩めます。
③ 一連の動作を5分程度繰り返します。朝晩と毎日行いましょう
トイレに行かないと不安!「心因性頻尿(しんいんせいひんにょう)」
心因性頻尿は、心理的な緊張や不安で発生する頻尿です。そのため、病院で検査をしても膀胱や尿道などに明らかに原因となる病気が見つかりません。成人女性に多いとされています。
心因性頻尿の特徴には、普段の生活で何度もトイレに行きたくなることがあります。日常の中でトイレが気になってしまいイベントや旅行などでトイレにいけない環境があると、逆に尿意が激しくなります。そのため、自分で行動を制限してしまうことが少なくありません。
心因性頻尿は、集中しているときや寝ている間には症状は殆ど現れません。また下腹部の圧迫感や胃や腸の症状などを伴うこともあります。
■対策法~心の落ち着きを意識
心理的な緊張や不安を取り除くために、トイレに行きやすい環境を日頃から作ると効果があります。外出する場合でも、トイレを利用できるポイントを事前に確認することで気持ちに余裕を持つことができます。
女性の場合は、タイトスカートやストッキング、レギンスなど衣服によっては腹部を圧迫してしまうこともあります。ゆとりのある衣服で出かけるのも効果的です。また、体が冷えると膀胱を刺激し、過剰に反応してしまうことがあります。できるだけ、体を温める食材を意識して摂るようにしましょう。
おしっこに何度もいくと周囲の人が気にしすぎて注意することがあります。しかし、逆に緊張が高まり、尿が近くなります。うるさく「また、オシッコなの!」は逆効果だそうです。
転倒のリスクを高める「夜間頻尿」
夜間頻尿とは、夜に排尿のために1回以上起きて困っている状態をいいます。夜間の排尿が2回以上になると、睡眠の妨げなどに影響を及ぼすため、治療の対象となることが多いです。年齢と共に多くなり、高齢者では男性に多い傾向があります。
夜間排尿が増える原因には、「膀胱容量の減少」「夜間尿量の増加」が考えられます。高齢になると、水分の過剰な摂取や利尿剤の内服などで、夜間尿量が増える人も少なくありません。また、血圧の高い人は夜間に腎臓の血流が増加するため、夜間の尿量が増加し排尿回数が増える傾向にあります。
夜間1回以上、排尿で起きる人は40歳以上の男女で、約4,500万人いるそうです。加齢とともに頻度は高くなり、日常生活において支障度の高い(困る)症状とされています。
■対策法~自分の排尿を記録する
夜間頻尿の原因は様々です。日常生活での対処法として排尿日誌があります。これは自分が朝起きてから翌日の朝までに排尿した時間、排尿の量を日記形式で記録するものです。1回の排尿量と排尿回数を知ることで、排尿状態やおおよその原因を把握することができます。
睡眠障害による夜間頻尿の場合は、よく眠れるような環境や生活リズムの改善も重要です。水分摂取過剰による場合には、水分を控えても改善しますが、原因がはっきりしない場合は、泌尿器科専門医を受診しましょう。
頻尿で医療機関の受診は必要?
頻尿の原因には、過活動膀胱、膀胱炎などがあり、さらに前立腺肥大症、子宮がんの症状として現れるケースもあります。頻尿の原因に、基礎疾患の病気があれば、最初にその病気を治療することが大切です。何らかの疾患が起因していることもあるので、泌尿器科を受診することをおすすめします。
文=大屋 覚
≪参考ウェブサイト≫
■ Profile ■
大屋 覚(放送作家・ライター)
テレビや書籍、Webマガジンを中心に活動中。医療・福祉・介護分野を中心に取材や執筆を行う。NHK、民放キー局の情報番組やスポーツ番組なども手がける。早稲田大学・同大学院修了。静岡生。