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高齢者の働き方改革とは?東京「シニアしごとEXPO2019」

いま、東京都は本格的な就労を望まれるシニア世代に向けて「シニアしごとEXPO」や「セカンドキャリア塾」など新たな事業をスタートさせています。今年も新宿と立川で「シニアしごとEXPO」が開催されるということで、その様子を取材させていただきました。

2019年10月11日に新宿で行われた「シニアしごとEXPO」/撮影:大屋覚

小池都知事が登壇、第2期「東京セカンドキャリア塾」が開講

東京都が主催する「シニアしごとEXPO2019」が、2019年10月11日(金)、東京新宿の新宿NSビルで開催されました。

このイベントは、より多くのシニアに就業について興味を持ってもらい、働く意欲のあるシニアの就職相談や企業とのマッチングを行い、高齢者の就業を応援することを目的としています。

いま東京都は、超高齢社会に対応するため、シニア層が活躍できる場を広げ、生涯にわたり生きがいをもちながら活躍できる社会の創出を目指しています。

その施策の一環として昨年からスタートしたのが、セカンドキャリアを見つけるための新たな学習の場「東京セカンドキャリア塾」です。

この日は第2期「東京セカンドキャリア塾」が開講。半年間の講義に先立ち、小池百合子都知事が開講宣言を行いました。

第2期「東京セカンドキャリア塾」に小池百合子都知事が登壇/撮影:大屋覚

開講式で小池都知事は、出席した114名以上の受講生に向けて「シニアの方々が、いつまでもいきいきと働ける東京の実現を目指していきたい。高齢者、高齢者と言っても、もうとにかく元気ですからね。この力を活かさない手はないですから」など激励のメッセージを送りました。

「東京セカンドキャリア塾」では、2019年10月から2020年3月末までの半年間、受講生は仕事や社会参画に関する全54種の多彩な講座を受けます。その中で、自分自身の強みを活かして再び活躍するイメージを見つけていきます。

参加者からは「第二の人生を充実させたい」、「キャリア塾を通じて新しい出会いや刺激を受けるのが楽しみです」などの声が聞かれました。会場は、“生涯現役”を目指す、元気なシニアの熱気に包まれました。

登山家、三浦雄一郎氏が伝える“歩き続ける力”とは

チャレンジ精神旺盛なシニアの代表として三浦雄一郎氏が講演/撮影:大屋覚

今回のイベントでは、著名人によるトークショーを始めとした様々なプログラムが用意されていました。なかでも多くの参加者が耳を傾けていたのは、80歳にして3度目のエベレスト登頂を果たしたプロスキーヤーで冒険家の三浦雄一郎さんの講演でした。

チャレンジ精神旺盛なシニアの代表でもある三浦さんは、86歳に至るまで「歩き続ける」秘訣や、生涯現役である為に必要な健康法やマインドについて語りました。

イメージ /写真:無料写真素材 写真AC

94歳父親の挑戦から、エベレスト登頂を決意

70歳、75歳、80歳と3回のエベレスト登頂を果たした三浦さんですが、50代半ばには引退を考えていました。その当時、冒険家の植村直己さんが北米大陸最高峰の山、デナリ(マッキンリー)で遭難するなど、山の仲間が次々と亡くなったことなどが理由でした。

三浦さんは60歳を迎えたら危ないことから引退しようと決めて、ハードなトレーニングは一切やめて暴飲暴食を繰り返していたそうです。

ところが、そのうちメタボになり狭心症の発作も出るようになりました。ついに血圧は190を超えて、医師からは余命3年あればいいと宣告されました。

そんな時、三浦さんの生活を一転させたのが父親でプロスキーヤーである故・三浦敬三さんの一言でした。当時94歳の敬三さんは突然、「99歳になったらモンブランをスキーで滑る」と言いだし、身体を鍛えだしたのです。三浦さんは、そんな敬三さんの姿を見て、「このまま死んでしまうのはつまらない。何かやろう」と決意して、70歳でエベレスト登頂を目指します。

守る健康法から、攻める健康法へ

エベレスト登頂を目指して運動をスタートさせた三浦さん。健康を取り戻すためにウォーキングをするのですが、なかなかメタボが解消されません。そこで「守る健康法」から「攻める健康法」へとトレーニングを変えます。それは足に重りをつけて、最低10㎏の荷物を背負って歩くというハードなものでした。

「地方講演などで東京の自宅から東京駅まで9㎞ほどの距離を歩くと、もう汗がビッショリで、トイレで着替えて新幹線に乗りました」(三浦さん)

こうしたハードトレーニングによって体質は改善。ついに70歳でエベレスト登頂を成功させたのです。

誰もがやらないことにチャレンジする

三浦さんは80歳で3度目のエベレスト登頂を目指しますが、度重なる試練に襲われます。76歳のときは、スキーのジャンプに失敗し、大怪我をします。また、エベレストへの挑戦を目前としたときには持病の不整脈が再発。緊急手術を受けて命の危険に直面しました。

86歳になってもなお、超人的にチャレンジをし続ける三浦さんは、シニアでも己を奮い立たせる秘訣について、こう語りました。

「とにかく新しいことにチャレンジしたい。誰もやる人がいないことをやってみたいんですね。たくさんの失敗があるからこそ、成功があると思うのです」(三浦さん)

常に夢を持ち続けて、シニアになっても目標達成に向けて努力をする三浦雄一郎さん。講演が終わると、観客から盛大な拍手が沸き起こりました

あらゆる業界・職種でシニア世代が活躍中

ゆるキャラのサイようくん。東京都でしごとを探している応援リーダー/撮影:大屋覚

今回のイベントでは、ハローワークやシルバー人材センターなどもブースを出展し、シニアの就業支援に関する情報を提供しました。

実は平成27年の内閣府の報告では、都内の高齢者(60歳以上)の労働参加率は35・7%で全国3位。こうした高い労働意欲がうかがえる半面、シニアの募集では警備や清掃などが多く、オフィスワークを希望する方とミスマッチが起きているのが現状なんです。

東京都では、これまでの会社勤めで得た事務処理能力や営業力なども生かせるよう、ハローワークや民間の就職支援会社と連携して、事務系の職種にもシニアが活躍の場を広げることを目指しています。

55歳以上シニアのための就業支援「東京しごとセンター」/撮影:大屋覚

こちらは東京都が、雇用や就業を支援するために設置した、「しごとに関するワンストップサービスセンター」です。一人ひとりの適性や状況を踏まえたきめ細やかな就業相談(キャリアカウンセリング)から、就職活動や就職後に役立つ知識・スキルを習得するための各種セミナーを行っています。また、能力開発、求人情報の提供・職業紹介まで、就職に関する一貫したサービスを提供しています。

東京しごとセンターの紹介ビデオ

担当者に話を聞いたところ、利用者さんからは「履歴書や職務履歴書を見てもらいアドバイスをもらえるのが有難い」、「土曜も利用できるので便利。紙ベースで求人情報を得られるので落ち着きます」という声をよく頂くそうです。

そして、会場でひと際目立っていたのが、ピンク系のブレイカーで揃えたこちらのブース。「アクティブシニア就業支援センター」です。

概ね55歳以上の方を対象にした無料職業紹介所 /撮影:大屋覚

企業の人手不足感が高まる中、シニアの活躍の場は広がっており、 こちらでは年間2000名以上の方が就職決定しています

おおむね55歳以上のための無料職業相談所は、都内に12カ所開設されています。アクティブな働くシニアの応援団として、地域に密着した求人を取り揃えているのも大きな特長です。

アクティブシニア就業支援センターの紹介動画

参加者の声「シニアでの働き方とは?」

会場には新しい仕事に挑戦しようとするシニア世代が大勢、駆けつけていました。このイベントでは合同就職面接会もあり、その場で仕事が決まる可能性もあります。

イベントに参加した60代男性/撮影:大屋覚

60代の男性にイベントに参加した理由について伺いました。

男性「仕事を定年退職したので再就職先を見つけに来ました。先日、介護をしていた妻が亡くなりました。これからは何か人のためになる仕事がしたいですね」

様々な事情を抱えながら、第二の人生を迎えられるシニア世代の方は多かったです。インタビューの中では「社会と何らかの形で関わりを持ち続けたい」、「人生の充実感につながるような仕事がしたい」などの声が多く聞かれました。

さらに会場で人気だったのが「シニア向け健康測定」コーナー。血管年齢測定や骨健康度測定など、約1分間で測定結果がでるコーナーは賑わいを見せていました。やはり皆さん、健康への関心は高いですね。

シニア向け健康測定には長蛇の列が/撮影:大屋覚

まとめ

シニア世代にとって、定年後もアクティブに仕事をすることは「現役時代のように働く喜びを感じられる」「生活に張り合いが生まれる」など元気を保つ秘訣でもあります。また、人生100年時代といわれる中、経済的な余裕を持ちたいのも本音。東京都が目指す高齢者が「生涯現役」としてイキイキと活躍できる社会の実現にこれからも注目していきたいと思います。

文・撮影=大屋覚


■ Profile ■
大屋 覚(放送作家・ライター)
テレビや書籍、Webマガジンを中心に活動中。医療・福祉・介護分野を中心に取材や執筆を行う。NHK、民放キー局の情報番組やスポーツ番組なども手がける。早稲田大学・同大学院修了。静岡生。

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