健康な体づくり
あなたの身体のバランスは大丈夫?
身体均整法で心身をリセット
長年の癖や加齢により知らないうちに身体のバランスに片寄りが出てきます。そうした身体のバランスを整える手段のひとつに身体均整法があります。身体均整法とはどういうものなのか、身体均整師・ボディデザイナーの祷眞樹子(いのり・まきこ)さんにお話をききました。
写真撮影:弓削ヒズミ
自分自身で身体のバランスをチェックしてから
辞書で「均整」を調べると「釣り合いがとれて整う」と記されていますが、「身体均整法」は、その字のごとく、身体の釣り合いを整えることを行います。いわゆる「整体」の一種です。疲れやすい、眠りが浅い、動いたときにギクシャクした感じがする、そんな時は、身体のバランスが崩れているのかもしれません。
「身体均整法では、施術時に鏡を見ながら肩や骨盤等の位置、そして動きをチェックします。初めてのお客さまは、自分の身体のバランスが取れていないことに気が付かれて驚かれます。このバランスの片寄りが体の部位や、身体全体に影響を及ぼしているのです」とボディデザイナーの祷眞樹子さん。お客さま自身がバランスの片寄りを確認したうえで施術は行われます。
姿勢、動き、片寄りを観察し、それを解除するために運動系(関節・骨格・筋肉)を調整。運動系を調整してバランスを取ることで、内部臓器の姿勢も正され、負担が軽減するとのことです。
「姿勢は、姿(すがた)と勢(いきおい)と書き、身体の勢いを現すバロメーターかもしれません」と祷さん
身体の内と外は影響しあい、調子の良し悪しは見た目にでる
「人間の身体は正直です。たとえば、胃腸の調子がすぐれないと、痛みや緊張(こり)を感じます」と語る祷さん。身体の「内」の不調は「外」から見た姿にも表れるとのこと。
「身体の内と外は密接に影響し合っています。また、『内と外』は、心と肉体とも考えられますね。『姿勢』って、『姿(すがた)・勢(いきおい)』って書きますが、そのとおりで、その時の身体の勢いを表しています。だから、疲れたら疲れた姿勢、落ち込んだら落ち込んだ姿勢、愉快であればそのように。肉体的、精神的に正直な姿を現すのが姿勢なのです。むかしから、『肝を冷やす、腹が立つ、アゴ上がる、肩を落とす、尾を巻く…』など、身体感覚を表す言葉が多いのも納得します。言い得て妙!この内と外のバランスを整え、不調を回復し、和らげるのが身体均整法です」。
全体のバランスを調整することで、縮こまっていた胸が開いて呼吸が深くなり、酸素と栄養分が血液に乗って体中に行き渡り、顔色が良くなるといいます。また血液の循環がよくなれば、頭がスッキリし、気持ち的には、目の前の雲がなくなったような気分にも。こうしたことから、第三者からも勢いのある身体に見えるのかもしれません。
「お手当ては、医学以前にあった人を思いやる心遣いですね」と祷さん
人を思いやる心遣い、「お手当て」を大切に
身体均整法の施術では、人の手を使う手技療法を中心に行われているとのこと。「心地よい刺激は、リラックス効果も高く、スッーと寝入ってしまう方、温泉に入ったみたいと表現してくださる方、さまざまな体感があります。人の温かい手を使う手技療法の良いところだと思いますし、手技療法は、まさにお手当て」。
また身体均整法では、手足末端の調整を重要視しています。末端の調整は、頭・中枢部への刺激といわれているそうです。
「今はこのような表現はできませんが、昔の先生方は『頭脳開発、育脳』とも表現されていました。身体均整法の手技内容から考えると納得しますが、残念ながら数値に表されるものはありません。西洋医学は統計と分析の科学、東洋医学は経験と直観の科学と言われるように、長年に渡り様々な手技療法が残っているのは、手技療法が体によき影響を与え、健康維持のお手伝いができている証だと思います」。だという祷さん。
「医学以前にあった人を思いやる心遣いですね」。
可動性、平衡性、強弱性の三原則でバランスを調整する
身体均整法では、下記の運動系の三原則を観察し、調整が行われます。
「可動性(身体の動作におけるバランス)」
「平衡性(姿形におけるバランス)」
「強弱性(強さ、弱さにおけるバランス)」
もともと一体(統一体、有機体、連続体)の人体の運動系は、
1) 平衡性、 形、 骨格系
2) 可動性、 動き、 皮膚・筋肉系
3) 強弱性、 力、 神経系
の三つの機能で成り立ち、
1. 形が変われば、力も動きも変わる。
2. 力が変われば、形も動きも変わる。
3. 動きが変われば、力も形も変わる。
というように関連しています。
「この3つは、どれが一番強くて大事というものではなく、三位一体に働きあっている、支え合って身体の調和を保っています。どれか一つが飛びぬけていてもバランスは悪いのです。各々の体調のレベルの中で、それなりにこの3つのバランスがとれていることが重要です」。
「運動でなくても、楽しみを持つことがストレス緩和と心のバランス維持に役立つと思います」と祷さん
動かす、休める、手入れをする、けして無理はしない
いま、多くの人が、身体を動かす生活様式ではなく、デスクワークを中心とした頭を使った生活です。身体のバランスを維持するためには何を心がければいいのか聴いてみました。
「人は、自分の動かしやすいように身体を動かしています。それは、その方がリラックスして(緊張がなく)力が入り、行いやすいからです。たとえば、足を組むときに右足を上にするか、左足を上にするか、といった生まれついての癖による場合、また職業などの生活環境からの習慣による場合もあります。これを同じ足だけを常に上にしていると、骨盤の位置に片寄りが生じてきます。それらの片寄りが行き過ぎないようにしてあげることが大事です。
『なんとなく調子が悪い』と、身体に現れてくる前にお手入れをしてあげてください。本来、ご自分のなかに『癒す力』が備わっています。わたしたちの身体均整法は、その力を補助するような役割です。身体を動かし、休めて、手入れをすることで、身体のバランスは改善に向かいます。身体を動かすなら、自分が愉しいと思ったことをやりましょう。ジョギング、水泳、ダンス、なんでもOK。体調がイマイチの時はちゃんと休みましょう。無理をしない、愉しむを基本に。
また忙しい毎日でも、深呼吸をする癖をお付けになることをおすすめします。私たちの生活のなかでの姿勢は前かがみで行うことが多いので、どうしても肩が巻き込んで胸が縮まりやすくなり呼吸が浅くなりがちです。鼻から吸って口から長く吐く。吸気をメインにするのではなく、吐く息に集中してください。しっかりと吐ければ、空気は自動的に入ってきます。『長息は長生き』です。また、呼吸はご自分でできる自律神経の調整でもあります。そして、一日の終りには身体に感謝」。
次回、祷眞樹子さんが身体均整法に照らし合わせた、就寝前や起床時にできる簡単な体操をご紹介していきます。お楽しみに。
一般社団法人 身体均整師会代表理事会長 矢作智崇さんのコメント
1956年。創始者亀井進氏によって、さまざまな手技療術を研鑽し纏めあげ確立された身体均整法には療術の叡智が凝縮されています。
体の歪みは万病の元、とはよく聞きますが、身体均整法には何処かに問題があると人体はそれを補う歪みを生じさせるくつろぎ傾斜圧だと考えもします。
祷先生は歪みを「片寄り」と表現します。その言葉の響きを負と捉えず体が楽になろうとする働きを示すこともあるのです。
無理なく楽しみながらする体操の紹介を僕も楽しみにしています。
身体均整師会 代表理事会長 矢作智崇 写真提供:身体均整師会
※祷眞樹子さんの苗字「祷」は、正しくは旧字表記ですが、閲覧される機種やブラウザによって文字化けなど表示されないため、ご本人の了承のもと「祷」で表記させていただいています。
≪ご注意≫
※本文章内での調整とは、身体を整える施術のことです。身体均整法の施術は、法で定められた医療行為ではありません。
※身体均整法は、補完代替医療・整体・姿勢矯正・骨盤矯正・美容・ダイエットなどの基本メソッドであり、各種セラピストのための総合手技療法です。
※医師の診断を受けている方は、医師の指示に従ってください。
文・写真=弓削ヒズミ(編集部)2016年8月取材
身体均整師・ボディデザイナー 祷眞樹子(いのり・まきこ)
身体均整師・ボディデザイナーとして施術歴13年。
”音浴”&”セルフヒーリング”のライブを開催
E-mail:kinsei.inori@gmail.com
≪監修・協力≫
一般社団法人 身体均整師会
一般社団法人 身体均整師会 代表理事会長 矢作智崇
身体均整法学園講師・身体均整師、医心理学マスターセラピスト・トレーニングコミュニティー理事。
自身の院にはホームページや看板はないが、口コミだけで予約がいっぱいになる実力派の辣腕ワンボディワーカー!
『身体均整法入門』[DVD]監修
他、さまざまな雑誌において身体均整法を紹介している。