健康な体づくり

もの忘れを進ませる「絶対にやってはいけない」6つのコト

「最近、人の名前が出てこない」「記憶力が落ちた」。年を取れば誰でも、思い出したいことがすぐに思い出せなかったり、新しいことを覚えるのが難しくなります。しかし脳を積極的に使えばシニアになっても鍛えられることが分かっています。今回は楽しく脳を鍛えて、「もの忘れ」を予防する方法をご紹介します。

脳を楽しく使って認知症を予防しましょう/無料イラスト素材  イラスト AC

最近、人やモノの名前が思い出せない

知っているはずなのに、どうしてもその人やモノの名前が出てこない。

「あれ、ほら、あの……」

年を取ると増えてくるのが「アレ」や「アノ」といった代名詞での会話です。若い頃なら覚えていて当たり前のことが、どうしても思い出せずにもどかしく感じる。それは脳の機能が低下しているせいかもしれません。

脳機能のひとつである記憶力は20歳代をピークに次第に衰えてきます。また脳の萎縮は50歳頃からはじまり、何もしなければ脳の機能は年齢とともに衰えていくそうです。

脳の老化を完全に止めることは難しいのですが、生活習慣を見直すことで脳の老化スピードを遅くすることは可能です。

電気を消したか不安になる

認知症と加齢による物忘れは違います/無料写真素材 写真AC

埼玉県に住む安本生江さん(72歳・仮名)は、70代になってから記憶力の低下を実感しています。

安本「マンションを出てしばらくすると『あれ、カギをかけたかな?』と不安になるんです。気になって戻るとカギはかけているんですけど、そういうことが増えました」

厚生労働省によると、2025年には65歳以上の5人に一人が認知症になる可能性があるそうです。認知症は一度発症すると現代の医学では完治しないとされ、いまだ根本的な治療法が確立されていません。

一方、認知症の一歩手前の状態を「軽度認知障害(MCI)」といいます。軽度認知障害の段階であれば、生活習慣の見直しや脳を鍛えることで認知症リスクを減らすことが可能です。そして脳を活性化させる事は「もの忘れ」予防にもつながります。

「こんなコト」が多くなると注意

脳の働きを活性化させるのに重要なのは「好奇心」や「前向きな考え方」です。また、苦手なことに挑戦することで普段使っていない脳領域が刺激を受けて活性化します。

安本「コロナも怖いので最近はあまり外出はしていません。新しいことをはじめる元気もなくて。孫にも今はあまり会えないですしね。」

大好きだった旅行や趣味も出来ず、孫とも会えない生活は心身のフレイル(虚弱状態)を招く恐れがあります。そうした環境の中で何もしていないと脳は知らず知らずのうちに衰えていきます。まずは、もの忘れを進行させる「6つのコト」をしていないかをチェックしてみましょう。

①最近、運動をしていない

散歩やジョギングなどの適度な運動は身体を鍛えるだけでなく、全身の血行を良くします。具体的には、記憶力に関係するアセチルコリンなど脳の神経伝達物質の分泌を活性化させます。アセチルコリンの減少はアルツハイマー型認知症の原因のひとつとされているので認知症予防の効果もあります。

②感動や達成感を味わっていない

本を読んだり映画やライブを観て感動する、何かをやり遂げて達成感を味わう、こうした経験はストレスの発散だけではなくドーパミンの分泌にも効果的です。ドーパミンとワーキングメモリー(短時間に情報を保持し、同時に処理する能力)には深い関係があることが分かっています。

③無意識に行動することが増えた

イメージを働かせて記憶することはワーキングメモリーを活性化させます。例えば「コップを取りに行く」という行動をする前に、「コップにお茶を入れて飲んでいるところ」をイメージします。これを毎日繰り返すことで効果が表れてきます。

④怒りっぽく、短気になった

イライラしたり怒りっぽくなる原因は様々ですが、その一つに脳の同じ部位を酷使していることがあります。脳の血流が悪くなり、疲労感が増して怒りっぽくなるケースは少なくありません。イライラした時は一度、深く深呼吸して気分転換を心がけましょう。

⑤よく眠れない

良質な睡眠は脳にとって大事です。睡眠時間をしっかりと確保してぐっすり眠れるような環境作りをしましょう。眠っている間に脳の情報が整理され、翌日の思考力もアップします。

⑥人の目を気にするようになった

脳は自分にとって心地よいことや楽しいことを積極的に行うことで成長していきます。人の目を気にしすぎて行動を制御すると脳は成長しにくくなります。また人の悪口などネガティブな言葉は脳の働きを鈍化させます。1日1回「ありがとう」などポジティブな言葉を口にしましょう。

便利な情報機器が「もの忘れ」を進ませる?

IT機器が溢れて脳を使うことが減っている/無料写真素材 写真AC

現代はIT技術の発達によって頭を使うことが減っています。パソコンやスマホなど便利な情報機器に頼りきりになって自分の頭で考える機会が減ると、脳機能の低下を引き起こします。

脳も筋肉と一緒で使わない部分はどんどんと衰えていきます。例えば計算機に頼らずに暗算してみる、1日1個は新しい単語を覚える、献立を暗記して料理をする、利き手と反対の手で掃除をするなど、日常的に脳に刺激をあたえましょう。

もの忘れ対策に良い食べ物

記憶力に良いとされる食べ物には、糖質、ビタミンB1、ビタミンB12、DHA、カルシウム、フラノーバルがあります。これらの栄養素を継続的に摂取することで、もの忘れの予防に繋がると考えられます。

バナナは脳を効率よく働かせる宝庫/無料写真素材 写真AC

バナナ

バナナは多くの栄養素が含まれている食べ物です。脳のエネルギー源であるブドウ糖をはじめ、ビタミンB1、ミネラルも含んでいるのでバナナ1本を食べるだけで効率よく脳の栄養補給ができます。またバナナに多く含まれるカリウムは高血圧によく、血管を老けさせない効果があるとされています。

うなぎ

うなぎはビタミンB1を多く含み、糖質と一緒に摂取することで糖質代謝を促します。摂取した糖質を効率よくエネルギーに変えてくれるので、記憶力アップにも役立ちます。また、良質なタンパク質やカルシウムが豊富に含まれているためスタミナを補うこともできます。

うなぎにはビタミン、タンパク質、カルシウムが豊富に含まれている/無料写真素材 写真AC

チョコレート、ココア

チョコレートはフラバノールを含むため、認知機能の改善に役立つ可能性があります。ココアもチョコレート同様にフラバノールを含むので組み合わせて飲むと効果が高まります。

脳の簡単エクササイズ

脳を鍛えるエクササイズもたくさんあります。今ここで出来るお手軽なエクササイズをご紹介します。

計算式のエクササイズ

計算式が成り立つように□に+、-、×、÷を入れてみましょう。

① 15-3□2+2=16

② 20□4+4+5-2=12

③ 4×3-5+5□2=17

④ 7×2÷2+5□2=10

問題の答えは記事の最後に載せています。

片足立ちエクササイズ

片脚立ちをするときは安全確保を/無料イラスト素材 イラストAC

アルツハイマー型の認知症予防に効果があるとされるのが片足立ちエクササイズです。できれば目をつむりながら行います。

目をつむることで観察能力が高まり、脳の老化を防ぐことに役立ちます。またバランスをとる動きは記憶の中枢のひとつである小脳を刺激するとされています。

危険防止のために無理はせずに、テーブルや椅子などすぐにつかまれる家具の近くで行うようにしましょう。

もの忘れ対策で何よりも重要なのは続けることです。もの忘れ予防に効果のある食事やエクササイズなどは継続的に行うようにしましょう。

そのためには自分に合った楽しい方法を見つけることが大切です。常に頭を使うことを意識して、楽しみながらもの忘れを予防しましょう。

文=大屋覚

問題の答え/①+ ②÷ ③× ④-

■ Profile ■

大屋覚(ライター・介護福祉アナリスト)
高齢者、障がい、保育の現場に携わり問題解決のサポートを展開。Webメディアやテレビ、書籍など数多く担当。早稲田大学・同大学院修了。

≪参考≫

時事メディカル

政府広報オンライン

広島市立安佐市民病院

一般社団法人 日本神経学会

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