社会の知識を学ぶ

コロナで注目「お墓参り代行サービス」
~賢い利用法とメリット、3つのトラブル対処法

お彼岸の春・秋、お盆、暮れ、命日…大切だった人やご先祖さまを供養するお墓参り。今年は新型コロナウイルスの影響で帰省が難しく、お墓参りに行けずに困っている方が多いといいます。そんな中、ニーズが高まっているのが「お墓参り代行サービス」。この記事では代行サービスの賢い利用方や注意点を解説します。

お墓参り代行サービスとは?

「コロナ自粛でお盆も実家に帰れない」

「足腰が弱くなって、なかなかお墓にいけない」

「引越したためお墓が遠くなった」

何らか理由でお墓参りができない場合に、専門業者や石材店などがお墓の掃除やメンテナンス、お参りを代行してくれるのが「お墓参り代行サービス」です。

ここ数年、墓石を扱う石材店や清掃業者、NPO法人などが参入。とくに今年は新型コロナウイルスの影響で、お墓参り代行サービスの問い合わせが増加しているそうです。

具体的にどのようなことを行ってくれるのでしょう。一般的なものをご紹介します。

代参

代参とは本人に代わって神仏に参拝すること。どのコースにも基本的なサービスとして含まれています。日本では古くから本人の代わりにお参りする風習は存在していました。

お墓の清掃

墓石の拭き掃除、周囲の雑草取り、枯れ葉の掃き掃除など、お墓の周りすべてを清掃してくれます。墓石は専門のクリーニング業者に依頼する場合もあります。

焼香・お供え

仏式の場合は、お線香をあげるサービスもあります。霊園などのルールの範囲内で供花のほかにもお酒やたばこなど、故人が生前好きだったものをお供えしてくれるサービスもあります(お供え後は片付けも行ってくれます)。

サービスの報告

お墓参りの清掃前、清掃後は写真で報告してくれるのが一般的です。メールや封書などで送付してくれます。お墓の現状や作業がしっかりと行われたのかを確認できます。

新たな“お墓参り”の時代とは

お墓参り代行サービスへの問い合わせが増えています/無料写真素材 写真AC

■ふるさと納税でお墓掃除

国内最大級のふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」には現在、全国の自治体100以上が墓参り代行サービスを返礼品として掲載しています。

同サイトによると同様のサービスの登録件数は、昨年の7月末時点と比べて今年は1・4倍に増加しているそうです。

ふるさとチョイス「墓参り代行サービス」

当初、お墓参りの代行には抵抗感のある声もあったそうですが、コロナ自粛の中、故郷に税金を納めて恩返しにもなると、利用者には好評だそうです。

■VR墓参りサービス

VRを活用した新時代の墓参りサービスも登場/ 画像提供:一般社団法人 全国優良石材店の会

一般社団法人全国優良石材店の会(以下、全優石)は、VRを活用した新しいスタイルの墓参り「VR墓参りサービス」を始めました。

このサービスでは、石材店のスタッフが墓参りを代行。お墓のまわりを360度撮影します。利用者は届いた撮影データとVRゴーグルを使うことで自宅で疑似体験することができます。全優石の事務局長、山崎正子さんに尋ねました。

山崎:お墓参りはしたいと思っていてもコロナ渦で難しい。そうした方の心痛やストレスを和らげるお手伝いができたらと思っています。VRだと臨場感のあるお墓参りを体験することができます」

利用するには、まずフリーダイヤルで全優石の本部事務局へ連絡。ここでサービスの内容や利用者の住まい・墓所の近くの認定店を紹介されます。その後、認定店からの連絡で詳細を打ち合わせるという流れです。

山崎:お墓には魂があります。だからこそサービスでは心を込めて、お墓参りをさせていただくことが大切だと考えています。

全優石認定店は日本全国に約300社あり、サービスは国内どこでも対応が可能だそうです。

一般社団法人 全優石のお参り代行サービス
http://www.zenyuseki.or.jp/pr/?p=177

お墓参り代行サービスのメリット

画像提供:一般社団法人 全国優良石材店の会

時間・費用の節約につながる

墓地が遠方にあれば、往復の交通費や時間がネックという人も少なくありません。お墓参り代行サービスを利用した場合、時間的な部分はもちろん費用でも節約できる可能性は十分あります。

また自然災害で墓石に被害が生じる可能性もあります。代行サービスで対応が良かった業者に依頼すれば、その後の対処やメンテナンスも安易になります。

身体的な負担が減る

高齢になるとお墓の掃除も体力的に大変になります。また身体が不自由だったり車イスを使用している場合、バリアフリー化されていない墓地では付き添いが必要です。

お墓参りがキツくなってきた場合、掃除だけでも代行サービスを利用すれば、身体的にも気持ち的にも楽になるのではないでしょうか。

安心感を得られる

盆暮れや命日にお墓参りをしないと、ご先祖さまに申し訳ないと思う方は多いです。しかし今年は新型コロナウイルスの影響で、帰省しての墓参りを諦める人も少なくありません。

お墓は手入れもされずに放置され続けると荒れ放題になります。お墓参り代行サービスで得られる安心感は大きなメリットといえるかもしれません。

代行サービスのトラブルと対策

トラブルを回避しましょう/無料イラスト素材 イラストAC

新型コロナウイルスや高齢化、核家族化などの背景から、お墓参り代行サービスの需要は高まっています。しかし、サービスの悪い業者や悪質な業者に依頼してトラブルになったケースも存在します。

トラブル①「手抜き仕事」

代行サービスのトラブルで多いのは手抜き仕事への不満です。たとえば墓石に汚れが残っていたり、雑草取りが適当だったり、墓石にシミやキズが付いていたり・・・。トラブルを事前に防ぐためにはどうすればいいのでしょう。

<対策法>

トラブル対策では、代行業者が作業前後に撮影する写真のチェックは重要です。心配な方は依頼する時に撮影の箇所を指定したり、送付枚数を多めにもらうようにしましょう。

全優石の事務局長、山崎さんはこうアドバイスしてくれました。

山崎:大切なお墓の掃除は、傷つけないように細心の注意を払って行うことが重要です。後々のトラブルを防ぐためにも、墓石にも詳しい業者さんに依頼することが望ましいと思います。

また、作業が遅い時間だとお墓の汚れが分かりづらいこともあります。当日の作業時間や担当者の人数などを事前に確認しておくこともおすすめです。

トラブル②「追加料金の請求」

作業終了後に追加料金が発生してトラブルになるケースもあります。また代行業者によっては、事前に作業内容を正確に教えてくれず、ホームページに小さな字で「お花、線香代は別途」など表示している場合もあります。

<対策法>

トラブルを防ぐためには、基本料金から交通費、オプション料金、墓地の広さによる追加料金など作業前に最終金額を提示してくれる業者を選ぶようにしましょう。

お墓の現状を伝えるために、まず自身で写真を撮って業者に現況確認をしてもらった上で見積もりしてもらうのも一つの方法です。

とくに後から追加費用を請求されないように、追加費用の有無はしっかりと確認しておきましょう。

トラブル③ 「親族間のもめごと」

親族の中には、見ず知らずの人に敷地に入られたくない方もいます。代行サービスを利用することを知らずに気分を害した親族と、後々トラブルに発展する可能性もあります。

<対策法>

親族と代行業者が鉢合わせをしないように調整することが必要です。また親族に納得しない人がいる場合は、揉め事にならないように第三者に入ってもらい事前に連絡して確認をしてもらうのも効果的です。


お墓参り代行サービスの費用相場

お墓参り代行サービスの費用は、業者や内容によって相場が違ってきます。目安としては基本のお墓参り(お墓掃除・お花や供物のお供え・線香をあげてお参り)で約1万円~2万円といったところです。

ただし花や線香を特別に指定したり、墓石クリーニングや補修、木の剪定などを希望する場合は別途料金が発生します。また遠隔地や離島などについては別途追加の交通費が発生する可能性もあります。

新型コロナの収束までニーズの高まりそうなお墓参り代行サービス。お墓の現状やニーズにあわせて賢く活用してみてはいかがでしょうか。

イメージ:無料写真素材 写真AC

文=大屋覚

■ Profile ■

大屋覚(介護福祉アナリスト/ライター)
テレビや書籍、Webマガジンを中心に活動中。医療・福祉・介護分野を中心に取材や執筆を行う。早稲田大学・同大学院修了。

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