社会の知識を学ぶ

【終の棲家 老人ホーム】入居前に必ず知っておくべき5つのトラブルと解決法

老人ホームには大きく分けて公的施設と民間施設の2つがあります。終の棲家として入居される方も増えていますが、施設によっては数客万円から数千万円の入居一時金を払うところもあり、種類やサービスもさまざまです。また、せっかく入居したのに施設内の人間関係や契約内容、想定外の事態が原因でトラブルになるケースも少なくありません。入居してから後悔しないために、この記事では老人ホームで起こりやすいトラブルや解決法について解説していきます。

イメージ /写真:無料写真素材 写真AC  イラスト: 無料イラスト素材 イラストAC

老人ホームで起こりやすい5つのトラブル

老人ホームで起こりやすいトラブルには、「人間関係」「介護サービス」「お金」「解約時」「事故」の5つがあります。

幸せな老後を過ごすために良い設備のホームを選んでも、施設内のトラブルで居心地の悪い生活を送る恐れもあります。実際にどのようなトラブルが多いのか、まとめてみました。

●老人ホームで起こりやすい5つのトラブル
 ①人間関係のトラブル
 ②介護サービスのトラブル
 ③お金のトラブル
 ④解約時のトラブル
 ⑤事故のトラブル

●トラブルが起きたときの対処法
  ①施設関係者に相談する
  ②環境を変える
  ③市区町村の相談窓口を活用する
  ④各都道府県の国保連に相談する
●トラブルを回避する方法

①人間関係のトラブル

生活習慣や価値観の違いで対人トラブルも/写真:無料写真素材 写真AC

他人同士が生活をする老人ホームでは、学校や仕事場と同様に人間関係のトラブルは起こりえます。特に男性の方は高齢になるとガンコになる傾向もあり、他の入居者に溶け込めない方もよくいます。

介護施設で働いている方に話を聞くと、異性感情や家庭環境への嫉妬もトラブルの要因になりやすいそうです。

また、認知症が進行している方が入居している施設では、他の入居者の部屋に勝手に入り込んだり、暴言を吐くなどの事態も生じます。

最近の有料老人ホームでは、小規模の単位で食事やケアを受けるスタイルが増えていますが、小人数がゆえに個々の生活習慣の違いなどから言い争いになるケースもあります。

対人トラブルでは相手に気を遣って我慢される方もいますが、ストレスをためる原因になり、最悪、うつ状態となる可能性もあるので対処は急ぐべきです。 まずは当人同士が顔を合わせる機会を減らして、もめ事を予防することが大切です。

②契約内容のサービスは守られている?―介護サービスのトラブル

老人ホームではサービス提供もさまざま/写真:無料写真素材 写真AC

介護サービスで多いトラブルが「同じ服を毎日、着せられている」「部屋が汚い」「日用品が少ない」といった不平不満です。

人手不足の介護業界では収益や効率性を高めるために、流れ作業的にサービスを行う施設もあります。その方が手間や人数も省けるためです。その分、入居者一人一人に寄り添ったサービスができません。

介護スタッフの出入りが激しいと、サービス内容の申し送りが出来ていない場合もあります。流れ作業でサービスをしていると、入居者が自立してできる部分にも目を配れずに、身体能力の低下を引き起こすこともあります。

契約内容を見直そう

老人ホームによっては「スタッフが少ない」「入浴回数が少ない」「食事の内容が異なる」などサービス内容が契約と違うことでトラブルに発展するケースもあります。

入居者の家族が詳細に確認することは難しいため、契約違反的な状況であっても改善されないまま放置されていることも少なくありません。

対処法としては、契約の段階で「1日5回」「週に3回」など回数が明記されている箇所を入居者・家族が共有し、訪問時に確認することです。

③月額費用に含まれない費用がこんなにある!ーお金のトラブル

要介護が上がれば費用は高額になるイメージ /写真:無料写真素材 写真AC

老人ホームで多いのが、お金に関するトラブルです。有料老人ホームでは『パンフレットには月額費用15万円と書いてあったのに、20万円請求された』など切実な声も聞かれます。

このトラブルを避けるためには、月額費用の中に含まれるサービスの内訳、その他費用としてどの程度の費用がかかっているのかを理解しておくことです。

一般的に月額費用には住居賃(家賃)、光熱費、施設の維持・管理費、食費、介護保険の一割負担が含まれています(食事は別途契約、介護保険の一割負担も含まれていない場合もあります)。

一方、オムツ代や日用品、イベントの参加料などは利用するたびにかかります。高級有料老人ホームでは クルーザーを貸し切っての食事会やクラッシック鑑賞会などを開催しているところもあります。もちろん、こうした費用は別途請求されます。

また入居者の要介護度が上がれば、定期的な診察や服薬などの費用が加算されていきますので、毎月の支払額は高額になっていきます。

重要事項説明書の確認を!

費用面を知るために大切なのは「重要事項説明書」です。

これは契約時に事業者から入居者・家族へ説明書の内容に沿って説明することが義務付けられています。施設の概要、職員の配置、サービス内容、かかる費用について明文化した書類なので、しっかりと確認しておきましょう。

④入居一時金は「一時金」ではない!?-解約時のトラブル

施設ごとに入居一時金の償却率などは異なる /写真:無料写真素材 写真AC

前払い方式で契約したものの「死亡」「施設への不満」「契約解除」などで前払い金から差し引かれる費用の内訳や金額についてのトラブルも多いです。

有料老人ホームに支払う前払い金は入居一時金と言われ、終身利用を前提とした施設に入る際に「利用権」を購入する「預け金」でもあります。最近では複数の料金プランも用意されていて、月額費用を高く設定することで入居一時金を安くしているホームを増えています。

入居一時金は、施設を途中で退去することになった場合、その一部が返還されることになっていますが、償却期間や償却率が施設によって異なり、分かりづらい点も多いのでトラブルが起こりやすいのです。

施設を退去した場合は、いくら返金されるのか、多少面倒であっても必ずチェックするようにしてください。

⑤何よりも大事なのは「体」-事故によるトラブル

老人ホームでも事故は避けられません/写真:無料写真素材 写真AC

老人ホームでは、入居者の転倒や風邪など感染症のリスクもあります。高齢者は身体機能が低下していくので転倒するだけで骨折したり、風邪やインフルエンザで重篤な状態になる可能性も高いのです。

施設の生活であっても事故の危険性はあります。重要なのは事故が発生したときの施設の対応です。その対応力は施設によって大きな差が出てきます。

事故報告書で「対応力」を確認しましょう!

老人ホームで事故が起きた場合は行政に「事故報告書」を提出します。
施設の対応力を知るためには、これまでの事故件数や事故防止対策、事故が起こった後の対応について率直に聞いてみましょう。

介護業界はベテランだけでなく、無資格・未経験者も多く働いています。だからこそ事故防止対策を徹底している施設を選ぶようにしましょう。

トラブルが起きたときの対処法は?


トラブルは早期発見の方が解決しやすい/写真:無料写真素材 写真AC

トラブル対処法①施設関係者に相談する

人間関係のトラブルが起きた時は、現場スタッフや施設長(管理者)にありのままを報告することです。介護サービスの調整を行うケアマネージャーや生活相談員に訴える方法もあります。

入居者が言いづらい場合は、家族が本人の気持ちをよく聞いて施設側に伝えましょう。本人の希望をメモにして提出するのも効果的です。

トラブル対処法②環境を変える

対人トラブルの場合は、食事やレクリエーションの際に離れた場所に座るなど当事者同士の距離をとるよう配慮してもらいましょう。状況によっては部屋を変えてもらいましょう。

トラブルは初期段階であるほど解決しやすいです。家族は異変に気づいたら、スタッフに相談してください。

孤独疎外感から対人トラブルを起こすケースも多いです。家族が訪問することでストレスも軽減されます。入居当初は出来るだけ会いに行く頻度を増やしてみてはいかがでしょうか。

トラブル対処法③市区町村の相談窓口を活用する

施設側に相談しても改善が見られない時は、市区町村の介護保険課、高齢福祉課などの担当窓口に相談しましょう。

自治体は、介護保険施設の指定を取り消すことができる権限を持っていますので、対応の遅い施設にプレッシャーをかけることができます。苦情の内容に応じて問題解決に動いてくれます。

※連絡先は重要事項説明書に記されている「苦情窓口の連洛先」をご覧ください。

トラブル対処法④各都道府県の国保連に相談する

国保連(国民健康保険団体連合会)は、介護サービスについての苦情を申し立てる機関です。介護サービス事業者に対して調査・指導・助言の権限を持っていますので、トラブルが発生した際の心強い存在です。

相談は、来所・電話・書面(苦情申立書)で担当者が随時受け付けています。

トラブルを回避するためには

トラブルへの対応力が強い施設を選びましょう/写真:無料写真素材 写真AC

学校や仕事と同様に老人ホームにもトラブルがつきものです。その際、事態が大きくなる施設とそうではない施設があります。その違いは「透明性」にあると思います。

透明性の高い施設を見極める方法

透明性の高い老人ホームを見極める方法は、情報公開を積極的に行っている施設です。入居前の説明で施設内で起きた問題や対処方法を隠そうとしたり、しっかりと答えられない老人ホームは透明性の低い施設と言えます。

一方、具体的な解決方法を詳しく説明ができる「透明性」の高い施設は安心できます。こうした施設の姿勢は、当然ながら働いているスタッフのトラブル対処への理解度や介護力にも影響してきます。

終の棲家として老人ホームに入居する際は透明性の高い、対応力のある施設を選ぶことをおすすめします。

文=大屋覚

■ Profile ■

大屋覚(ライター/放送作家)
テレビや書籍、Webマガジンを中心に活動中。医療・福祉・介護分野を中心に取材や執筆を行う。NHK、民放キー局の情報・スポーツ番組も手がける。早稲田大学・同大学院修了。


下へ続く
上へ戻る