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今なぜ生涯学習?【前半】~体験者が語る学びの目的・生きがいとは

第二の人生を豊かにしようと生涯学習に取り組むシニアの方が増えています。新しい知識や技術を学ぶことは心身の健康や認知症の予防にも役立ちます。では具体的にどこで学べばいいのか?不安や心配のある方も多いはず。今回は体験者を通じて、生涯学習の目的や生きがいなどを紹介していきます。

人生100年時代、生涯学習の意欲は高まっています/無料イラスト素材 イラストAC

生涯学習の目的とは?

2015年にタレントの萩本欽一さんが 74 歳で駒澤大学に入学するなど、シニア世代の「学びに対する意欲」は高まっています。

日本の男女の平均寿命は80歳を超え、人生100年の時代は現実味を帯び始めていますが、いくつになっても生涯にわたって学習していくことが、豊かな人生につながると考えられています。

年代や内容に関わらずに新しい知識や技術を学び続けることを「生涯学習」といいます。高齢者の支援をしているケアワーカーに話を伺うと、施設や自宅訪問の現場でも好奇心を持ち、学び続けている高齢者は元気な方が多いといいます。

内閣府が行った意識調査結果を見ると、60歳以上の高齢者のうち4割以上の人が、何らかの形で学習活動に参加したいと考えていることが分かりました。

心の豊かさや生きがいを求めて学習する高齢者は増えている/無料イラスト素材 イラストAC

シニアが参加したい活動とは?

学習意欲があっても具体的にどんな活動をしたらよいのか?そんな悩みを抱えていらっしゃる方もいます。

生涯学習の特徴は、ご自身が「生涯のいつでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価される社会」を目的としています。ですから、趣味や興味のある内容を無理なく、楽しみながら学ぶ人は多いです。

内閣府の調査によるとシニアの方が参加したいと考えている活動には、次のようなものがあります。

  • 1位「健康・スポーツ(体操、歩こう会、ゲートボール等)」44.7%
  • 2位「趣味(俳句、詩吟、陶芸等)」 26.3%
  • 3位「地域行事(祭りなどの地域の催しものの世話等)」 19.1%
  • 4位「生産・就業(園芸・飼育、シルバー人材センター等)」 15.1%
  • 5位「生活環境改善(環境美化、緑化推進、まちづくり等)」 12.6%

こうした活動を行うためには一緒に参加する仲間、時間的なゆとりが必要だと考えている方は多いです。しかし、生涯学習は一人でも時間があるときに始めることができます。

<どんな学習活動に参加したいですか?>

  • 1位「カルチャーセンター などの民間団体が行う学習活動」 17.2%
  • 2位「テレビ、インターネットなどを用いて自宅でできる学習」12.7%
  • 3位「公的機関が設けている高齢者学級や老人大学」 11.5%
  • 4位「公共機関や大学などが開催する公開講座や学習活動」 11.1%

学習活動の参加で多かった回答は「カルチャーセンターなどの民間団体が行う学習活動」でした。次にテレビやラジオ、インターネットなど通信手段を用いて自宅にいながらできる学習が続きます。最近では大学などが開催している公開講座なども人気は高いです。

今のコロナ渦においては、自宅に居ながら取り組める学習が選択しやすい学習方法なのかもしれませんね。

体験者に聞く。生涯学習の目的とは?

現在は学習意欲の高いシニアの方に向けて、生涯学習の講義をはじめる大学も増えています。しかし学習意欲はあっても、いざ行動に移すには不安や心配もあります。

実際に学習をはじめると、どのような苦労や楽しさがあるのでしょうか。今回は通信制大学、八洲学園大学の協力を得て実際に学習している2人の 受講生から、受講のきっかけや目的などを伺いました。

八洲学園大学は日本で初めてインターネットを利用しての学位や国家資格の取得を実現した大学でもあります。図書館司書や学芸員の資格取得を目指しているシニアの方も多いです。

体験者に生涯学習の大変さや楽しさを取材/写真 八洲学園大学

体験談①「きっかけは図書館の仕事への憧れ」

【Fさん:60歳】

東北圏在住の男性、Fさんは仕事を退職し、夏場は山登り、冬はカルチャーセンターでお稽古事という生活を送っていました。しかし昨年はコロナの影響でなかなか外に出られませんでした。さてどうしようかと思う中で閃いたのが「そういえば、図書館の仕事に憧れたことがあったなぁ」ということでした。

Fさん:早速資格を取れる機関を探したところ、(八洲学園大学の)通信教育で取れることがわかりました。また地元の広報誌に「学校図書館司書臨時募集」というお知らせも出ていました。資格を取っておけばお手伝いができるかもしれないと思いました。

資格取得のために晴れて学生となったFさん。入学後はテキストを読み、図書館で確かめ、またテキストを読み、ネットで調べ、レポートを書く毎日。大学ではインターネットを活用したスクーリング授業(決められた時間に講義を受講する学習方法)もあります。

Fさん:スクーリング授業ではチャット機能が心配でしたが、やってみるとストレスなく参加できています。授業前のちょっとした雑談も学生らしくて気に入ってます。同級生とお昼に行ったりできないのがちょっと残念ですが、コロナ禍にあって地方の人間でも平等に参加できる通信教育は、熟年層にも優しいシステムと言えそうです。

生涯学習の目的とは何なのでしょう?

Fさん:私たちの年代は、学びは手段でなくそれ自体が目的です。結果的に仕事に結びつかなくても、「新しい環境で新しい学びに挑戦すること」「新しい資格を取ること」そのものを楽しんでいます。


体験談②「気づかせ屋として人の役に立ちたい」

【Kさん:65歳】

関東圏で暮らすKさんは会社員として現在も勤務しています。大学では司書の資格取得を目指しています。

Kさん:「図書館はしゃべったりするところではない」「司書の方には、声をかけてはいけない」と、古くから勝手に思っていました。“レファレンス”という言葉を知ったのが、つい2~3年前。公立図書館に行き窓口で、検索してもらい、求めている情報のポイントとなる本の所在をとことん提示して戴きました。

レファレンスとは図書館を訪れた人の質問・相談を受けて調べものに必要な資料を探すお手伝いをすること。こうした出会いを通じてKさんの心に変化があったといいます。

Kさん: 定年後、現行の仕事である新人教育(育成)講義の中で、本を紹介し本を読み、読解力・質問力等を育てることに役立てるのでは?と思ったのが、図書司書資格の取得を目指すきっかけとなりました。

学習を通しての気づきや大変さとは何でしょう?

Kさん: この人にはこんな本が良いのでは?というような、処方箋的な本の紹介で、児童の頃に出逢うべき本に逢えればよかったとも思っています。
今後、そういった人の後押し役的な、本を紹介することを通じて、ある意味何かが心に届くような“気づかせ屋”として、人の役に立てれば良いかと思っています。

生涯学習の相談窓口は

身近な相談窓口を活用しましょう/無料写真素材 写真AC

シニアの方達の多様な学習活動に応えるために、自治体では学習情報の提供や相談活動に力を入れています。趣味のサークルの紹介、イベント活動、またボランティアに役立つ資格など学習に関する悩みや疑問は、お住まいの地域の教育委員会や公民館、図書館などに相談してみましょう。

最近では年齢や学歴を問わず、社会人の学び直しの機会としてオンライン生涯学習講座を行う教育機関も増えています。学びたいという意欲があればいつでも、どこでも可能な生涯学習。様々な学びの機会を通じて、新たな発見や成長につなげてみてはいかがでしょうか。

『今なぜ生涯学習?【後半】~70歳で学芸員の資格取得を目指すワケ に続く

<取材協力>

学校法人 八洲学園大学

<参考文献>

内閣府 平成25年度 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査結果(全体版)

健康長寿ネット 生涯学習の支援

文=大屋 覚

■ Profile ■

大屋覚

放送作家として、テレビや書籍・WEBメディアの企画、構成、執筆を担当。また高齢者、障がい者、子ども育成の支援事業も展開している。早稲田大学・同大学院修了(博士後期退学)。

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