活躍の場を探す
子どもたちの味方「おもちゃドクター」になろう!
定年退職後、地元の掃除活動や、通学路の見守りなど、何かボランティア活動に参加したいというシニアが増えているようです。さまざまな活動があるなかで、今回はちょっと変わったボランティア「おもちゃドクター」についてご紹介します。
日本おもちゃ病院協会が行っている「おもちゃ病院」の様子/撮影:弓削ヒズミ
おもちゃドクターは最高の趣味
「おもちゃドクター」をご存知でしょうか? 子どもたちの壊れた「おもちゃ」を修理してくれるボランティアで、日本各地で活動しています。おもちゃドクターで組織された「日本おもちゃ病院協会」の会長・三浦康夫さんにお話をうかがいました。
今回、お話をお聴きした日本おもちゃ病院協会の会長・三浦康夫さん。「おもちゃの故障は、電池まわりが原因のものがほとんどです。充電式の乾電池は電圧が低いので、おもちゃに使ってはいけません。それと古い電池を入れっぱなししておくと液漏れを起こすので、使わないおもちゃの電池は外しておきましょう」/撮影:弓削ヒズミ
日本おもちゃ病院協会は、任意のボランティア団体で、2017年3月31日現在、協会会員1407名が、全国各地で、おもちゃ病院活動を行っています。子どもたちから持ち込まれた「おもちゃ」の修理代は原則無料。ただし、修理に必要な部品代は別です。
日本おもちゃ病院協会では、第1・第3土曜日に、東京・四谷の東京おもちゃ美術館で「おもちゃ病院」を開催。壊れたおもちゃを持ち込めば、その場で直してくれる。ただし、修理状況によっては、おもちゃを入院させる(おもちゃドクターが家に持ち帰り修理する)こともある/撮影:弓削ヒズミ
どうして、このようなボランティア活動を行っているのか、三浦会長にたずねたところ、こんな答えが返ってきました。
「おもちゃドクターは、ボランティアというよりも『趣味』です。たまたま、われわれがやっている活動がボランティアになっているという感じですね。趣味と考えれば、努力しますよね。努力すれば修理の腕が上がって、いままで直せなかったものも直せるようになる。達成感を得られるのが嬉しいです。そのうえ、子どもたちにお礼を言われるのですから、最高の趣味じゃないですかね(笑)」
電圧計測器やスピーカーテスターなどは自作したものを使う。協会から年4回発行される会誌で、自作器具の作り方などを紹介しているので、それを参考に自分で作るという/撮影:弓削ヒズミ
電子回路を知らない初心者でも、おもちゃドクターになれる
現在、活動している「おもちゃドクター」は、定年退職してから始めたという方が多く、平均年齢は60代前半ぐらいだといいます。下は高校生から、上は80歳過ぎまで。女性のドクターもいるそうです。さぞ、理系に強い人ばかりが集まっているのかと思うと、そうでもないようです。
「おもちゃドクターの前職が、みんな理系や技術職だったということはありません。電子回路を知らない、まったくの初心者でも大丈夫です。『何かおもしろそうだな』と思った時点で充分に資格があると思います。定期的に『ドクター養成講座』を行っているので、興味がある方は、ぜひ来てほしいです」
「おもちゃドクター」のみなさんは、それぞれに得意分野があり、お互いに教え合いながら、修理の腕前を高めているそうです。その努力もあって、おもちゃの修理完了率は約9割になるといいます。
おもちゃ病院のドクターたちは、真剣な表情で、おもちゃと向き合う。わからないことがあれば、仲間のドクター同士で話し合いながら解決していくこともある/撮影:弓削ヒズミ
最後に、おもちゃの修理で、どのようなご苦労があるのか尋ねてみました。
「日本の玩具メーカーでも、ほとんどがメイド・イン・チャイナです。製品はあるけど、修理するための部品が日本にはほとんどありません。だから、似たような部品を自分たちで作って、それで修理することも多いですね。どうやれば直せるのか、頭を悩ませますが、それも楽しいですし、仲間たちのアドバイスで直せたときの喜びも格別ですね」
おもちゃドクターたちの使う修理道具はすべて自前。どんな修理にも応えられるようにと、道具一式を大きなカートに詰め込んで、おもちゃ病院へやって来る/撮影:弓削ヒズミ
おもちゃドクターのみなさんは、まさに「日本人の職人気質」を見ているようで格好よかったです。これから第二の人生を考えている「爺ちゃん婆ちゃん.com」読者のみなさん、「おもちゃドクター」という選択肢もいかがでしょうか? お孫さんにも、きっと尊敬されると思いますよ。
文・写真=弓削ヒズミ(編集部)2017年9月取材
日本おもちゃ病院協会