活躍の場を探す
合言葉は「リーン イン」
一歩踏み出し、挑戦してみよう①
会社から卒業し、この4月から「新たな生活」を始めようとしている読者の皆さんに、「リーン イン」という言葉を贈りたいと思います。3月25日(日)、フェイスブック ジャパンとリーン イン東京が行った国際女性デー記念イベント「自分らしく人生をデザインする」での金言の数々を2回に分けてご紹介したいと思います。ぜひ、第1回目からお読みください。
イメージ/撮影:弓削ヒズミ
「女性だから」「もう歳だから」という諦め
まず「リーン イン(Lean In)」について説明しましょう。「リーン イン」とは、米国フェイスブックの最高執行責任者(COO)であるシェリル・サンドバーグさんが率いるグローバルな市民活動のこと。シェリルさんが2013年に出版した『LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲』(日本経済新聞出版社)をきっかけに、女性の社会における活躍を支援して、多様性のある社会を実現していこうという活動が、世界中に広がっています。今回のイベントを主催した「リーン イン東京」は、日本の地域代表コミュニティです。
女性活躍社会の推進に向けて活動するNPO団体「リーン イン東京」の代表理事・鈴木伶奈さんから活動についての主旨説明と挨拶が行われた/撮影:弓削ヒズミ
「国際女性デー」を記念したイベントですが、決して若い女性の問題だけではなく、性別、年齢を越えて、社会全体で考えなければいけない問題も含まれています。「女性だから」ということで降りかかる社会的な不利益は、シニア世代にとっての「もう歳だから」という偏見にも共通した問題構造なのかもしれません。
イベント共催「フェイスブック ジャパン」の代表取締役・長谷川晋さんから同社の女性たちの働き方への取り組みが語られ、その後、女性たちが直面しているバイアス(偏見や固定概念)についてのラーニングセッションが行われた/撮影:弓削ヒズミ
当サイトにも登場いただいた80代プログラマーの若宮正子さんと、日経DUAL編集長の羽生祥子さんによるパネルディスカッションでは、これから活躍しようとしている女性はもちろん、第二の人生を歩もうとするシニア世代にとっても、たくさんの有益な話が含まれていたので、ご紹介していきます。
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パネルディスカッションでは、女性がどのようにビジネスキャリアを積み重ねていくかなど、二人の経験を踏まえた貴重な話が披露された/撮影:弓削ヒズミ
パネルディスカッション「好きなことをキャリアに繋げる」
《登壇者》
若宮正子さん(特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会 理事)
羽生祥子さん(日経DUAL編集長)
左から、若宮正子さん(特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会 理事)、羽生祥子さん(日経DUAL編集長)/撮影:弓削ヒズミ
《ファシリテーター》
下村祐貴子さん(フェイスブック ジャパン 広報部長)
パネルディスカッションの進行を行うのは、下村祐貴子さん(フェイスブック ジャパン広報部長)/撮影:弓削ヒズミ
時代の変わり目にはチャンスがある
81歳でゲームアプリを開発した若宮正子さんが、銀行に就職されたばかりの頃は、お札は指で数えて、計算はソロバンの時代でした。自分が好きなことだとか、嫌いなことだとか、やりがいがある、ないとか、いう時代ではなく、勤めてお給料を得られるだけでありがたい時代だった言います。
「当時は、すべての事務処理が速くて正確で、飽きないで、疲れないで、文句を言わない人、はやく言えばロボットみたいな人が、一番高い評価を得ていたわけです(笑)」
若宮正子(特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会 理事) 1935年生まれ。高校卒業後、都市銀行へ入行。定年後、60歳からパソコンを学び、使い始める。81歳のときに日本初の高齢者向けゲームアプリ「ひなだん(hinadan) 」を開発。2017年には、82歳でアップル社主催のWWDC(世界開発者会議)に、ティム・クックCEOから「どうしても会いたい」と招待され、最高齢プログラマーとして紹介された。「人生100年時代構想会議」の有識者議員を務める/撮影:弓削ヒズミ
時代は流れ、銀行にも電機計算機がやってくると、若宮さんはソロバン1級の計算能力の高い男性社員が、技術革新が近づくことに焦る姿を目にしたそうです。
「その時、つくづく思ったんですけど、時代の変わり目というのは、われわれが考えているプロジェクトが進展するチャンスであり、近い将来、AI中心の時代に変われば、仕事のやり方も変わると思うんです。私は今度の変わり目は女性が一気に推進する大きなチャンスだと思っています。女性だけじゃなく、高齢者、外国人、障害のある方もです」
時代の変わり目をチャンスにできるように、若宮さんは、自分のやりたいこと、好きなことは、頭の中に苗木を植えるように大事に育ててきたそうです。
「今度の変わり目は女性が一気に推進する大きなチャンスだと思っています。ただ心配しているのは、男性が落ち込んで、将来、不機嫌老人になってしまうこと(笑)」と若宮さん/撮影:弓削ヒズミ
好きなことに掛け合わせることのできる軸を持つ
数々の編集業務をこなしてきた編集者の羽生祥子さんは、小学生時代から学級新聞を作ったり、校長先生にインタビューしたり、いろいろな記事を書いてきました。しかし「編集」が好きというだけでは仕事は続けられないと言います。「個性」を出していくには、好きなことにプラスして、もう一つ、二つ、三つの軸を掛け合わせていくことが必要とのこと。
羽生祥子(日経DUAL編集長) 1976年生まれ。京都大学総合人間学部卒業。2005年現日経BP社入社。女性誌、デジタル誌などを経て2012年『日経マネー』副編集長就任。その後妊娠・出産の経験を活かし、働くママ&パパを応援するノウハウ情報サイト『日経DUAL』を企画立案、2013年11月に創刊。子育て・介護中のDUAL編集部のマネジメント、サイト運営、取材執筆、大学外部講師と子育て(11歳と9歳の母)を奮闘両立中。海外での働き方や子育てスタイルに興味/撮影:弓削ヒズミ
羽生さんが、まだ駆け出しで美容女性誌の編集者だった頃、理系出身で化粧品の成分表や分子公式を読める強みを生かして、他のライターや編集者が行くことのない研究室の開発者の元に話を聴きに行き、「私の価値」を高めたそうです。また、デジタル分野や金融など、女性が少ない分野でも、女性、主婦、母としての視点を入れて喰らいついてきたといいます。
「自分があまり興味がない世界でも喰らいついていく、これは私じゃないからとやらないではなく、少しでもやっていくことで、自分のものになっていくんじゃないかな」
「日経マネーで編集をやっていた頃、妊娠中で、お腹に赤ちゃんが居ました。金融というのは、ものすごい男性中心で、とあるビッグな金融機関に取材に行くと、こんな女性が金融記者であるわけがないビックリ思われながらも喰らいついていきました」と経験談を語る羽生さん/撮影:弓削ヒズミ
合言葉は「リーン イン」一歩踏み出し、挑戦してみよう?に続く
文・写真=弓削ヒズミ(編集部)2018年3月25日取材
《協力》
リーン イン東京
フェイスブック ジャパン