趣味や愉しみ

歩きながら小旅行
「安・近・短」が魅力の散策ツアー

近年、シニア層を中心に、ガイドとともに歩いて巡るウォーキングツアーが人気のようです。なかでも歴史探訪は、多くの参加者が集まるといいます。その人気の秘密を探るべく、歴史散策ツアーのひとつに同行取材させていただきました。

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参加者に解説するガイドの宮澤やすみさん/撮影:弓削ヒズミ 撮影協力:五百羅漢寺

「歴史ミステリー散歩」で目黒を歩く

今回、同行取材させていただいたのは、江戸の神仏にまつわる史跡を巡る人気ツアー「歴史ミステリー散歩」。ガイドするのは、歌う神仏研究家・宮澤やすみさんです。30名ちかくの参加者の皆さんと一緒に「目黒」周辺を歩きました。

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今回、ガイドを務める宮澤やすみさんは、神仏研究家、小唄師範であり、各地の寺社ご当地ソングを歌うバンド活動も行っている、マルチな才能の持ち主/撮影:弓削ヒズミ 撮影協力:五百羅漢寺

この日は、天候にも恵まれ、ちょっと風が強いものの、陽射しが暖かいウォーキング日和。参加者の多くは、「爺ちゃん婆ちゃん.com」の読者層と同じ、現役をリタイアされた年代の方々です。

散策の前に手渡されたのは、ツアーに関すると資料と携帯型音声ガイド。音声ガイドは、離れた場所でも、イヤホンからガイドの声が聴こえるので、説明を聴き逃すことがありません。宮澤やすみさん曰く、「お寺の本堂など、大きな声を出せない場所が多く、音声ガイドがあると助かるんです」とのこと。たしかに境内での見学に集中できて、とても便利です。

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事前にレクチャーを受けてから見学をするので、見どころのポイントがわかりやすい/撮影:弓削ヒズミ

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参加者全員に配られた携帯型音声ガイド。ガイドから離れた場所でも、しっかりと説明を聴ける/撮影:弓削ヒズミ

散策ツアーは、午前中に目黒不動尊、五百羅漢寺、午後に大円寺の計3カ所をめぐります。移動距離はさほどでもなく、ペース配分などもよく考えられ、年配の方でも充分に歩ける運動量だと思いました。

ガイドの説明で、興味が深まり、見かたも変わる

寺社や仏像も、時代背景や文化の成り立ちなど、ガイドの解説を聴きながら拝観すると、また違った見かたができるのが新鮮です。疑問が浮かべば、直接、質問することもできるので、仏像への興味も膨らんできます。また、ふだん入ることのできない場所や、非公開の仏像を拝観できるのも、こうしたツアーならでは。ちょっとした知的好奇心をくすぐられるのが、歴史散策ツアーの魅力なのかもしれません。

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「目黒のらかんさん」として親しまれている五百羅漢寺では、羅漢像がずらりと並ぶ光景は圧巻/撮影:弓削ヒズミ 撮影協力:五百羅漢寺

実際に参加された方に話を伺ってみると、一度参加して、おもしろかったから、次のツアーにも参加したという声を多く聞きました。また、いろいろとツアーに参加して、顔見知りが増えるのも楽しいと言う人もいました。同じ趣向の人同士でコミュニケーションをとれることも楽しみのひとつのようです。

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元祖山手七福神のひとつ、大黒天を祀る大円寺。平安時代の十一面観音像について解説する宮澤やすみさん/撮影:弓削ヒズミ 撮影協力:大円寺

最後に、ガイドを務めた宮澤やすみさんに歴史散策ツアーの魅力を尋ねます。

「ただ、仏像を見るだけじゃなくて、日頃、聴けない話を聴けるのが楽しいようです。仏像の背後には、いろんな意味、いろんな謎が含まれています。参加者の皆さんは、謎解きミステリーのようなものが好きなんですね。東京の史跡というと、江戸時代のものばかり想像してしまいますが、平安時代の史跡や、古墳だってあるんです。東京だって奥が深いですよ。それに散策ツアーは、安・近・短なところが気軽でいいみたいです。日帰りなので、夕飯の支度にも間に合うという奥さまもいます」

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大円寺では、特別に釈迦堂の釈迦如来像をご開帳していただく/撮影:弓削ヒズミ 撮影協力:大円寺

歴史散策ツアーに参加してみた感想は、歩いて、学んで、話して、笑う。そんな感じの楽しいものでした。リピーターになる人が多いというのも納得です。皆さんも、一度、ガイド付き散策ツアーに参加されてみてはどうでしょうか。

文・写真=弓削ヒズミ(編集部)2017年3月取材

※「撮影協力」と記されている掲載写真は、各寺より撮影許可を受けています。


■ Profile ■
宮澤やすみ(みやざわ・やすみ)

歌う神仏研究家、小唄師範、三味線奏者。
“歌う神仏研究家”としても知られ、仏像バンド「宮澤やすみ and The Buttz(ザ・ブッツ)」結成。各地の寺社ご当地ソングを制作し歌う。
NHK「ひるまえほっと」準レギュラーをはじめ、 テレビ・ラジオ出演や講演多数。トーク、執筆、イラスト、音楽など幅広い分野で寺社や仏像の楽しさ、奥深さを伝えている。
2008年小唄扇派師範取得後、古典からエレキ三味線を駆使したロックまでジャンルを超えて活動中。2010年から無声映画の伴奏楽士を務め、活動弁士・片岡一郎氏と共にドイツ、イタリア、オランダで公演、国内では歌舞伎座公演。現代映画にも楽曲提供。ほか多ジャンルのアーティストと共演。
公式サイト

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撮影:弓削ヒズミ 撮影協力:五百羅漢寺

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