趣味や愉しみ
東京散歩Vol.9/漱石山房記念館
いま話題になっている東京のスポットやイベントに行き、リポートしていく不定期企画「東京散歩」。『吾輩は猫である』『坊ちゃん』など、誰もが知っている明治の文豪・夏目漱石のミュージアム「漱石山房記念館」が、今年9月24日にオープンしたというので行ってきました。読書の秋、本を片手に文豪の足跡めぐりはいかがですか。
記念館のエントランスでは、夏目漱石の等身大パネルと、かつての漱石山房の玄関写真が出迎えてくれる/撮影:弓削ヒズミ
漱石が晩年を過ごした旧居跡にオープン
2017年9月、夏目漱石にとって初の記念館となる「漱石山房記念館」が、新宿区早稲田南町にオープン。多くの文学好き、歴史好きな人たちが訪れ、オープンから1カ月あまりで来館者数1万人を突破するほどの話題です。
漱石山房記念館の外観。地上2階、地下1階で、館内には開放感あふれる吹き抜けがある/撮影:弓削ヒズミ
この記念館の建てられた場所は、晩年の漱石が9年間暮らした「漱石山房」と呼ばれた旧居跡。その家では、『三四郎』『こゝろ』『道草』などの名作が執筆され、また、漱石を慕う若手文学者たちが集う文学サロン「木曜会」が開かれました。
導入展示コーナーは入場券がなくても入れる。パネルや映像で漱石の基本的な情報を知ることができる/撮影:弓削ヒズミ
一番目を引くのが、館内に再現された「漱石山房」の一部です。書斎・客間・ベランダ式回廊など、当時の写真や資料、関係者の証言などを元に、室内レイアウトはもちろん、日用品や装飾品までもが忠実に再現されています。部屋を眺めているだけで、作品の生まれてきた背景や、当時の暮らしぶりなどが伝わってきます。
1階にある書斎・客間・ベランダ式回廊を再現した展示コーナー。書斎の再現にあたり、広さが8畳、10畳かで意見が分かれたが、専門家によって写真や資料から10畳ということがわかったという/撮影:弓削ヒズミ
2階の常設展示では、グラフィックパネルや映像などにより、作品の時代背景、漱石を取り巻く人物相関などを紹介。直筆の書簡や草稿、初版本をはじめ、漱石の書画、俳句など貴重な資料が展示されています。今後、企画展など、展示内容も変わっていくそうです。
2階の展示室には、新宿区や個人所有の貴重な資料が展示されている/撮影:弓削ヒズミ
展示室以外にも、図書室、ミュージアムショップなどがあり、併設されたカフェ「ブックカフェ cafe soseki」で、鑑賞後も、ゆったりと過ごせるのは嬉しいかぎり。漱石が好んだ「空也」のもなかと上林春松本店の抹茶やほうじ茶とのセットが人気で、おすすめです。
展示の順路を示すのは、猫のシルエット。館内のあちらこちらに猫の姿が見かけられる。また、記念館後方にある漱石公園には、「吾輩は猫である」のモデルであった猫を供養するために建てられたという猫塚もある/撮影:弓削ヒズミ
記念館のある新宿区には、誕生の地をはじめ、漱石ゆかりの場所が点在し、散策に適したコースとなっています。ちょっと坂道は多いですが、のんびりと歩いていけば1時間程度で回れます。深まる秋に文学散策はいかがでしょうか。
文・写真=弓削ヒズミ(編集部)2017年10月31日取材
新宿区立 漱石山房記念館
場 所=東京都新宿区早稲田南町7
観覧料(通常展)=一般300円、小・中学生100円
開 館=午前10時00分〜午後6時00分(入館は5時30分まで)/月曜休館
交 通=東京メトロ東西線「早稲田」駅、「神楽坂」駅から徒歩10〜15分程度、都営大江戸線「牛込柳町」駅から徒歩15分程度、都営バス(白61)「牛込保健センター」から徒歩2分程度
電 話=03-3205-0209
※駐車場はありません。公共交通機関を利用しましょう。