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地域のこどもたちを見守りながら、港区の観光ボランティアガイドも。「好奇心」が原動力。②
高橋善市さん(77歳)の24時間は、ほかのひとより長いのではないか。話を聞きながら、そんなふうに感じてしまいました。それほど、高橋さんの日常は予定が詰まっているのです。何がそんなに、と伺っていくと、地域の学校、町会、商店街での活動、次から次へと出て来て、驚いてしまいました。興味を持ったことは迷わず挑戦。その「行動力」に、ただただ、脱帽させられました。
地域のこどもたちを見守りながら、港区の観光ボランティアガイドも。「好奇心」が原動力。?
こどもたちが、振り返って「たのしかった」と思えるような町に
「私のこどものころと変わったなぁと思うことの1つに、最近の小学生は、友達の家に直接行かず、先に電話で確認してから遊びに行くんですよ」
いまのこどもたちには普通のことでも、おとなには新鮮に見えることがあります。
高橋善市さん(77歳)は言います。
「同じように、こどもたちにとっては、身内ではない異世代のおとなたちと接する機会があることで視野が広くなるのではないかと思います。私は、この地域のこどもたちが将来、『港区でよかった。麻布でよかった』そう思ってくれるように、いろいろな活動の手伝いをしていると思っているんです」
こどもたちも大好きな愛犬チビマルくん
飼っている犬と高橋さんが近所を散歩していると、顔見知りの小学生や中学生の多くのこどもに会うことがあります。マンション住まいでペットを飼えないこどもたちが、「今度、犬と遊びに行ってもいい?」と言って、高橋さんの自宅に遊びに来ることもあるそうです。
イベントの企画運営も
高橋さんは、東京の港区青少年対策高陵地区委員会の委員を30年以上務めています。港区青少年対策地区委員会は、地域社会の力で進める自主的な地区組織活動団体で、青少年の健全な育成に力をそそいでおり、学区域ごとに地区が分かれているそうです。高陵地区は、区立の、笄(こうがい)小学校と、本村(ほんむら)小学校、そして高陵中学校の学区です。
今年はイベントで、プール遊び大会、2泊3日のみなとキャンプ村(山梨県 平山キャンプ場)、さよなら夏休み大会、スポーツ大会を企画運営しました。来年1月末には、新春もちつき大会をやる予定だそうです。
地域のこどもが、中学、高校、大学になっても交流はつづき、バレー、合唱の発表会、スポーツ大会の応援にも、高橋さんは出向いているそうです。
「学童クラブ」では、切り絵や折り紙、風船で動物をつくって
高橋さんは、東京港区の2つの小学校の「学童クラブ」にも、8年前から1日おきに行っています。
学童クラブとは、両親とも仕事を持っているなどの理由で、自宅に帰ってもひとりになってしまう小学生を、下校時から平日は19:00までの間、決まった施設内で預かるというものです。
「見守っているのではなく、こどもたちに遊んでもらっているのかもしれませんね」
「切り絵や折り紙、風船を膨らませて動物の形をつくってみせたり、色付きの影絵セルにスポットライトを当てて映してみせると、こどもたちが喜ぶんです。少し前まではサッカーにもつきあっていましたが、体力が無くなり、こどものパワーにはついていけなくなりました」(高橋さん)
季節ごとのイベントも盛んで、今年のハロウィンは、小学生たちの仮装を手伝って、近くの特別養護老人ホームの高齢者からお菓子をこどもたちに渡してもらうなど、高齢者との交流を図るイベントも行ったそうです。
今年のハロウィン
料理教室に2ヵ所通っている!?
高橋さんは、長年やっていたテニスで、思うように足が進まなくなってきたと感じたことから、すべて奥さんまかせだった料理にも関心を持つようになったそうです。2年前から料理教室2ヵ所に通っています。
「抽選だったので、どちらかの教室には入ることができるだろうと思って2つ申し込んだところ、両方当たって、せっかくだから、どちらも行くことにしました」というのが2つ行っている理由なのだそうです。
笄小学校には、卒業生の親と先生の同窓会がある
「笄小学校は、90周年、100周年と見つづけて、今年は110周年記念になります。私は、この小学校の卒業生ではないのですが、この学校のおもしろいところは、卒業生の親と先生たちも含めた、任意で参加できる同窓会があるんです。多いときは400人くらいいましたが、最近は少なくなって100人くらいかな。集めた会費で、卒業式や入学式のバックアップもしています」(高橋さん)
退職する先生や卒業生の似顔絵を描いて渡したら、喜んでくれるかなと思った高橋さんは、絵を描いて渡しているそうです。
高橋さんが練習のために描いた似顔絵
旅先でも友達ができる
城めぐり、花めぐり、日本各地を旅することが大好きな高橋さんは、特にお祭りが好きで、年を重ねたいまは1人で夜行に乗って、日本祭り(青森ねぶた祭、秋田竿灯祭り、越中おわら風の盆、山形花笠まつり、秋田のなまはげなど)を観に行くそうです。
「1人で行くのはつまらなくないかと聞かれるけれど、必ず向こうで友達ができるから大丈夫なんです」(高橋さん)
港区のチャレンジコミュニティ大学(1年間で約40日)では、高橋さんは、クラスメイトとの交流をたのしんでいます。
ひととの出会い、感動を求めての旅はこれからもつづきます。
毎日は「出会い」の積み重ね
高橋さんは、港区のシルバー人材センターの会員でもあるのですが、半年間の研修を受けて、牧師の衣装で、2年前までは、30人くらいの結婚式の司式、司会をやり、約200組の新夫婦の前途を祝していたそうです。
「いまは、日比谷公園の小音楽堂で、4?10月の毎週水・金曜日に行う『都民コンサート』の手伝いをしています。手伝いながら、警視庁や東京消防庁のブラスバンドを聞くことができて、音楽好きな私には最高にたのしい」と言っています。
「残念なのは、今年の年末のイベントが1つ無くなったこと」
渋谷公会堂の建て替えで、今年は「第九」を歌わないのだそうです。
来年1月には「港七福神めぐり」のツアーガイドを
こうして書いていると、やはり、1日24時間では足りないのではないかと思うのです。
「見ていてほんとうに飽きることのない、たのしいひとです」
奥さんの弥栄さんは、高橋さんのことをそう言います。
来年は、年明け早々に、港区の「港七福神めぐり」ツアーを港区公認のボランティアガイドとして案内するそうです。その話を聞いて、奥さんが「あっ、それ、私申し込もうかな」と言っていました。
文=水楢直見(編集部)2016年11月取材