健康な体づくり
マスクで高まる熱中症リスク…高齢者の命を守る「3つの対策」
新型コロナウイルスの感染予防として国はこの夏もマスクの着用を求めています。しかし気温が上昇するこれからの季節は熱中症のリスクも高くなり、高齢者の方は特に注意が必要です。今回はマスク着用の中、熱中症を防ぐための3つのポイントをまとめました。
マスク着用で熱中症リスクが高まるワケ
マスクを着用することで熱中症になりやすいわけではありません。しかし専門家によるとマスクを着けると呼吸がしにくくなり心拍数や呼吸数が1割ほど増え、さらに気温が急激に上昇すると熱中症のリスクが高まるそうです。
NHKの実験では、マスクをつけると被験者の口元の温度は3度ほど上がり、そのまま5分ほどたつとマスクの内側に熱がこもり時間がたつにつれて口の周りに汗をかきはじめるのが分かりました。
厚労省でもマスクを着用していない場合と比べると心拍数や呼吸数、血中二酸化炭素濃度、体感温度が上昇するなど身体に負担がかかると公表しています。
熱中症患者のおよそ半数を占める高齢者(65歳以上)は、暑さに対する身体の調整機能や感覚機能が低下しています。そのため、マスクで飛沫感染を防ぐことも重要なのですが、それ以上に夏は熱中症を防ぐ対策が必要になります。
①2m以上離れたら、マスクを外す
高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなるおそれがあります。
屋外であれば木陰などの人が少ない場所など人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には気温や湿度など状況に応じてマスクを外すように心がけましょう。
マスクは汗で湿ると通気性が悪くなります。そのためマスクを適度に取り替えることも大切です。
全国マスク工業会によると不織布の使い捨てマスクは衛生面から1日1枚の使用が目安とのことですが、汗で湿って通気性が悪く感じたら取り換えるようにしましょう。
厚労省ではマスクをしている場合はなるべく激しい作業や運動を避け、のどが渇いていなくてもこまめに水分を補給するよう求めています。また、日中の散歩やウォーキングでも暑い日や時間帯は避けて涼しい服装を心がけると熱中症予防になります。
②夏用マスクの販売も
熱中症対策には暑い日でも熱がこもりにくい夏用のマスクを活用する方法もあります。夏用マスクは通気性や吸水性、マスクをつけた瞬間にひんやりとする接触冷感などの機能が備わっています。
スポーツ用品やアパレルメーカーでは、洗って繰り返し使うことができる夏用マスクを販売しています。機能やオシャレの面からも選んでみてもいいかもしれませんね。
筆者はキシリトール加工のマスクを普段は使用しています。繊維にキシリトールを配合したマスクは汗や湿気などの水分に反応して吸熱反応を起こし涼感を得られるのが特徴です。マスク装着時の蒸れや息苦しさもなく、洗濯して何度も繰り返し使えるので便利です。
③「経口補水液」で塩分補給
水分摂取で勧められているのがドラッグストアなどで販売されている「経口補水液」です。大量の汗をかいた場合は水分とともに塩分も出てしまうため、水分や塩分などの補給が必要になります。経口補水液は、少量で効率よく塩分補給ができるので便利です。
食欲がなく3食きちんと食べられない場合は、1日500ミリリットルの経口補水液を1時間くらいかけてゆっくりと1本飲むことで、水分と塩分を補うことができるそうです。ただし、殆ど汗をかかない生活をしている方は塩分の取りすぎに注意が必要です。
<日本人の1日当たりの平均塩分摂取量>
男性…11g
女性…9.3g
(厚生労働省平成30年度「国民健康・栄養調査」)
家庭でできる経口保水液の作り方
市販のものが近くで入手できない場合は、自宅でも作ることができます。
経口補水液は成分とその分配量を覚えると家庭でも作ることができます。いざという時に知っておくと便利です。
<簡単な経口補水液の作り方>
・砂糖(上白糖)20gから40g(大さじ2と小さじ1〜大さじ4と1/2)
・塩3g(小さじ1/2)
・水1ℓ
・レモンなど
注意点としては分量を間違わないこと。作った簡易経口補水液は遅くともその日のうちに飲み切ることです。
詳細は以下のホームページをご覧ください。
マスク熱中症に注意しましょう
熱中症は、高温多湿の環境に長くいることで体内の水分や塩分などのバランスが崩れて、対応調節がうまくいかないことで起こる様々な症例の総称です。
今年は新型コロナウイルス感染症対策として、マスク着用が欠かせないため例年以上に熱中症への注意が必要です。
マスクを着用している場合は口の中が湿っているため、のどの渇きを感じにくく、自覚がないままに脱水状態になりやすいという危険があります。
日頃から体温測定、健康チェックを行うことは新型コロナウイルス感染症だけでなく、熱中症を予防する上でも重要です。夏の日中は気温は30℃程度でも、高温化したアスファルトなどの路面や建物の壁面からの赤外放射によって、体感温度は40℃近くになることがあります。気温の高い日はなるべく外出を控えましょう。
今年7月1日から、熱中症の危険が高まった時に注意を呼びかける「熱中症警戒アラート」の運用が関東甲信の1都8県で始まりました。従来の気温を基準とした高温注意情報を、気温に加え、湿度や風、日差しなども基準項目に加えた暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度 )に代わるもので、暑さ指数(WBGT)が33を超える場合に「熱中症警戒アラート」が発表されます。
暑さ指数(WBGT)は気象庁のサイトから確認できます。
熱中症警戒アラートが出たら、エアコンの効いた涼しい部屋へ入るなど熱中症の予防行動をとるようにしましょう。マスク着用の際にはこうした熱中症情報にも注意して大切な命を守りましょう。
文=大屋覚
≪参考≫
・厚生労働省「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイント
■ Profile ■
大屋覚(ライター・介護福祉アナリスト)
高齢者、障がい、保育の現場に携わり問題解決のサポートを行っている。WEBメディアやテレビ、書籍など数多く担当。早稲田大学・同大学院修了。