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《シニア・シネマ・リコメンドVol.13》 『秋が来るとき』

爺ちゃん婆ちゃん.comが厳選した新作映画をご紹介するシリーズ《シニア・シネマ・リコメンド 》。今回は2024年サン・セバスティアン映画祭にて脚本・助演俳優賞を受賞、横浜フランス映画祭2025でも上映されたフランソワ・オゾン監督最新作『秋が来るとき』をご紹介します。

 

© 2024 – FOZ – FRANCE 2 CINEMA – PLAYTIME

2024年サン・セバスティアン映画祭脚本賞、助演俳優賞受賞

 『8人の女たち』『スイミング・プール』を手がけたフランソワ・オゾン監督の最新作は、ある秘密を抱えたおばあちゃんが主役のヒューマン・ドラマ。主人公のミシェルをエレーヌ・ヴァンサン、親友のマリー=クロードをジョジアーヌ・バラスコ、娘のヴァレリーをリュディヴィ−ヌ・サニエが演じる。

 老齢のミシェルはフランスの田舎でひとり、悠々自適な生活を送っていた。そこに娘のヴァレリーと孫のルカが休暇に訪れる。しかし、ミシェルが出したキノコ料理をきっかけに娘との間に問題が噴出。田舎での豊かで静かな暮らしの中で、ミシェルの過去の秘密が明らかになっていく。
 冒頭、ミシェルの田舎暮らしの日常が描かれる。卓上の瓶から自分の皿にたっぷりのクリームをよそう姿にフランス人らしさを感じたり、キノコ取りに行く格好がオシャレに見えたり。フランスの田舎の秋の様子とミシェルの生活の豊かさが心地よく描かれている。
 それらの日常は、決して隠しているわけではないが、取り立てて言うほどのことではない。けれども、覗かれていると分かったら、ちょっと恥ずかしくなる。他人の日常を丁寧に見るということは、秘密を覗いている気分にさせられる。
 とはいえ、田舎のおばあちゃんの日常を淡々と描いているばかりではない。日常の所々に不穏さが顔を出す。このサスペンス要素が物語への集中力を高めてくれる。
 そして、引き返せない決定的な出来事が起こる。良かれと思った事が裏目に出るジレンマ、葛藤が描かれる。これ以降の展開について見方によっては批判も出てくるだろう。うがった見方をすれば、あまりにもミシェルに都合が良すぎるとも取れる。しかし、監督の意図はそこではない。これは大人向け絵本のような映画なのだ。
 人間を肯定的にとらえる人間賛歌。過ちを犯した者への暖かな眼差し。そして、ミシェルの秘密と決断。それらが豊穣の季節の中に映し出される。

解説:イシヅカポケット
note:https://note.com/nice_koala354

Introduction

着想はオゾン監督の幼少期の思い出
『焼け石に水』『8人の女たち』 『スイミング・プール』など、カンヌ、ベルリン映画祭の常連、フランス映画の巨匠フランソワ・オゾンの最新作は、自然豊かなフランス・ブルゴーニュの秋を舞台にした人生ドラマ。監督の子供の頃の思い出から着想を得て制作され、幼少の時に毎年訪れていたブルゴーニュが舞台となっている。
 主人公ミシェルを演じたのは、映画、舞台でも活躍するベテラン女優エレーヌ・ヴァンサン。その親友役に、ジョジアーヌ・バラスコ。その息子役にサン・セバスティアン映画祭で助演俳優賞を受賞したピエール・ロタン。日本でも大ヒットを記録した『スイミング・プール』のリュディヴィ−ヌ・サニエも2003年以来、約22年ぶりに出演。新旧のオゾン・ファミリーが一堂に会し、熟練した演技を魅せる。

STORY

 80歳のミシェル。パリでの生活を終え、人生の秋から冬に変わる時期を自然豊かなブルゴーニュの田舎で一人暮らしをしている。秋の休暇を利用して訪れた娘と孫に彼女が振る舞ったキノコ料理を引き金に、それぞれの過去が浮き彫りになっていく。人生の最後を豊かに過ごすために、ミシェルはある秘密を守り抜く決意をするー。


作品情報
『秋が来るとき』
公式サイトhttps://longride.jp/lineup/akikuru/
監督・脚本: フランソワ・オゾン  
共同脚本 :フィリップ・ピアッツォ
出演:エレーヌ・ヴァンサン、ジョジアーヌ・バラスコ、リュディヴィーヌ・サニエ、ピエール・ロタン
原題:Quand vient l’automne
配給 :ロングライド、マーチ
© 2024 – FOZ – FRANCE 2 CINEMA – PLAYTIME


― 5月30日(金)新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開 ―

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