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《シニア・シネマ・リコメンドVol.15》 『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』
爺ちゃん婆ちゃん.comが厳選した新作映画をご紹介するシリーズ《シニア・シネマ・リコメンド 》。今回は「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」でアカデミー助演女優賞にノミネートされたジューン・スキッブが実年齢と同じ93歳のテルマを演じ、オレオレ詐欺師から奪われた大金を取り戻すため奮闘する、スロー・アクション・コメディ映画『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』を紹介します。

あらすじ
93歳テルマは夫に先立たれ、寂しくも気楽な一人暮らしを謳歌していた。心優しい孫のダニエルがベストフレンド。いつもと変わらないはずのある日、一本の電話がテルマの運命を変える。「おばあちゃん、オレオレ。事故を起こしてしまったよ!」刑務所にいるという愛する孫を助けるため、テルマは急いで保釈金の1万ドルをポストに投函する。しかしそれは無情にも、オレオレ詐欺だったのだ……。落胆する娘夫婦を見て、居ても立っても居られないテルマは、詐欺師たちからお金を取り戻す、93歳ミッションインポッシブルの遂行を決意!旧友の老人ベンを巻き込み、電動スクーターでロサンゼルスの街を駆け巡る、大冒険に出発する! 果たしてミッションは成功するのか……!?

面白さとカッコよさと優しさにあふれた作品
とにかく全編、老いをテーマにしたギャグが散りばめられていて不謹慎ながら笑ってしまう。物語前半の「テルマが仲間を集めるべく友人に次々に電話を掛けるが、集まらない」というシーンも冷静に見れば悲しくもあるのだが、テルマの「おばぁちゃん力」とでもいうのか、本人はいたって真面目だからこそ笑ってしまう。
テルマはあるアクションスターを見て、犯人を突き止める決意を固める。思わぬきっかけに思わずニヤける。アクションシーンでは、93歳のテルマが最高の動き(それと劇伴)で盛り上げる。可愛いしバカバカしいし、でもカッコ良くも見えてしまう。
海外のコメディ作品だとあまり日本人の感覚と合わないということも多いが、今作はきちんと笑わせてくれる。自虐的だったり皮肉っぽかったりするところが、綾小路きみまろみたいと言うとあまりにも俗っぽいが、日本人の感覚に合う。
イギリス人監督のエドガー・ライトの影響もあるように感じた。特に「ゲイル」のキャラやテンポ感は、エドガー・ライトの『ホット・ファズ』に出ててもおかしくない。無理やりこじつけると、孫のダニエルの優しいけれどダメな奴感はニック・フロストっぽいし、サイモン・ペッグとの繋がりも劇中にある。エドガー・ライトのコメディ作品が好きなら、本作も気に入るはずだ。
本作の見どころのひとつは様々なご老人達のチャーミングさであるが、それだけではない。彼らに寄り添う姿勢もしっかりと見せてくれる。良い映画とは自分で体験できないことを疑似体験させてくれるものだ。映画を観ていて視力や聴力に問題を抱えるキャラクターの主観的なシーンが入ると「こんな風に世界と対峙しているのか」と気付かされる。
解説:イシヅカポケット
note:https://note.com/nice_koala354

■作品情報
『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』
公式サイト: https://www.universalpictures.jp/micro/thelma
監督・脚本: ジョシュ・マーゴリン
出演: ジューン・スキッブ、フレッド・ヘッキンジャー、リチャード・ラウンドトゥリー、 パーカー・ポージー、クラーク・グレッグ、マルコム・マクダウェル
2024年/アメリカ・スイス/英語/99分/シネスコ/5.1ch/カラー/原題:Thelma/日本語字幕:種市譲二
©Courtesy of Universal Pictures
― 6月6日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー ―