健康な体づくり

コロナ感染「志村けん」さん死去
-高齢者の喫煙リスクと禁煙5つのメリット

新型コロナウイルスに感染して入院中だったタレントの志村けんさんが3月29日に逝去しました。70歳でした。持病や基礎疾患があったことは確認されていませんがヘビースモーカーで知られていました。新型コロナでは、タバコを吸う人が重症化するリスクが高いと発表されています。この記事では高齢者のタバコの危険性と禁煙効果について解説します。

喫煙者は新型 コロナウイルスで重症化リスクが高い/写真:無料写真素材 写真AC

新型コロナウィルスの喫煙リスク

WHO=世界保健機関や東京都医師会は新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために禁煙を呼びかけています。というのも世界各地でタバコを吸う人が重症化する事例が複数報告されているからです。

■「喫煙者は重症化リスクが高い」各国の研究機関が発表

EUのヨーロッパ疾病予防管理センターは、新型コロナウイルスに喫煙者が感染すると呼吸障害が起こりやすく重症化するリスクが高いと発表しました。

アメリカの医学雑誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』では、中国の患者1099人を対象とした大規模調査で非喫煙者に比べてタバコを吸う人のリスクは3倍も高いというデータを示しています。

アメリカのCNNは米国立薬物乱用研究所の所長の見解として、喫煙者や電子タバコの利用者は新型コロナ感染症に対して特に脆弱(ぜいじゃく)な可能性があると紹介しています。

WHOは感染拡大を防ぐため禁煙を呼び掛けている/写真:無料写真素材 写真AC

■コロナウイルスで喫煙者の症状が悪化する理由

新型コロナウイルスは患者の肺に影響を与え、息切れを引き起こす可能性があります。周知の通り、喫煙は肺などの呼吸器系に悪影響を与えるため、タバコを吸うことでウイルスの病原菌に感染しやすくなるといいます。

ニューヨーク市のデブラシオ市長は新型コロナウイルスについて「タバコや電子タバコを喫煙する人は重症化する傾向がある」と指摘し、この機会に禁煙しようと呼びかけています。

外出先でタバコを吸う場合、狭い喫煙所で不特定多数の人と接触します。そのときマスクを外して汚い手でタバコを吸うため、感染機会が増えることも心配されています。

日本禁煙学会もコロナ防止として「禁煙をする。受動喫煙を避ける」などと呼びかけています。

喫煙は万病のもと。分かっちゃいるけど・・・

喫煙者の認知症リスクは2倍/写真:無料写真素材 写真AC

タバコの煙には一酸化炭素をはじめ、ニコチンやタールなどの有毒物質が200種類以上も含まれています。タバコを吸っていない人が喫煙者の煙を吸ってしまう「副流煙」にも有害成分が含まれているとされています。

■タバコと病気のリスク

タバコを吸うことで、がん・循環器・呼吸器などへ悪影響が及ぶことは以前から指摘されています。低タールや低ニコチンのタバコならば良いと考える人もいますが、明確な健康へのメリットは現在、分かっていないそうです。

タバコを1日20本吸う男性は、非喫煙者の男性に比べて肺がんで4.5倍死亡しやすいことがこれまでの研究で分かっています。

またタバコを1日25本~49本吸っている人の心筋梗塞で死亡する危険度は、非喫煙者に比べて2.1倍も高まるそうです。本数が増えるほど死亡の危険度は上がります。

■タバコを吸う高齢者の認知症リスクは2倍にも!

九州大学の研究チームは、喫煙している高齢者は吸わない人に比べて認知症の発症リスクが2倍に高まると発表しています。

追跡調査したのは平均年齢72歳(当時)の高齢者712人です。その後、202人が認知症となりましたが、タバコをずっと吸っている人は吸っていない人よりもリスクが2.8倍も上昇したそうです。

一方、この調査ではタバコをやめた人のリスクは激減しています。つまり、禁煙すると認知症の発症リスクは下がるということなのです。

禁煙による5つのメリット

禁煙は健康や経済的にもメリットは大きい/写真:無料写真素材 写真AC

長年、タバコを吸い続けてきた高齢者が禁煙するのは並大抵のことではありません。

ニコチン依存も存在しますので離脱症状も起こります。しかし禁煙によって多くの利益を手にするのも事実です。ここでは主に5つのメリットを紹介します。

①脳卒中や心筋梗塞の危険性が低下

タバコをやめることで脳卒中の危険性が速やかに低下します。

アメリカの研究では禁煙した人は1年後に喫煙者と殆ど同じ危険度に低下したと発表しています。また心筋梗塞も喫煙量が増えるほど高くなるので禁煙の効果は大きいです。

②肺機能が回復

新型コロナウイルスの影響を受けるとされるのが肺機能です。
禁煙することで肺機能の回復にも役立ちます。また肺がんのリスクも低下させます。

③脳の働きがよくなる

タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があります。
禁煙すると脳の血流が回復していきます。十分な脳血流量が維持されることで脳の働きは正常になるそうです。

④お金のメリット

ジワジワとタバコは値上がりしています。1日に1箱(20本、450円)吸っている人が禁煙すると1か月で約1万4000円、年間にすると16万4250円の節約が出来ます。

10年間では160万円近くなるので旅行や趣味、もしもの時に使えるお金が増えます。

⑤生活面でのメリット

禁煙することで集中力が出てきたという声を聞きます。
タバコを吸いに行く時間が減り、外出時に喫煙場所を探す必要もなくなります。また周囲の人をタバコの煙で害する心配もなくなります。

禁煙の健康改善と効果

タバコをやめることで健康は改善していきます。
禁煙後、どのように効果が現れていくのか下記にまとめてみました。

数時間後        一酸化濃度が下がる。心臓発作の可能性が下がる。

数日後        味覚や臭覚が改善する。歩くのが楽になる。

2週間~3ヶ月後     心臓や血管などの循環機能が改善する。

1年後        咳や喘息が改善しスタミナが戻る。肺機能が改善。

2~4年後        虚血性疾患のリスクが減少。脳梗塞のリスクも低下。

5~9年後        肺がんのリスクが低下する。

10~15年後        非喫煙者のレベルに近づく。

(参照: e‐ヘルスネット(厚生労働省)、Brunnhuber, K. et al.:Putting evidence into practice:5, 2007)

「禁煙」の3つのコツ

禁煙は一気にすることがポイント/写真:無料写真素材 素材AC

禁煙はいつからはじめるか決めることが重要です。周囲にも禁煙を宣言することで行動の抑制にも繋がります。

灰皿やライター、買い置きのタバコも処分しましょう。そして禁煙後の離脱症状を知ることで対処と心構えをすることができます。

禁煙を成功させるには「きっぱりやめる」「離脱症状のピークを知る」「柔軟な思考をもつ」という3つのコツがあるそうです。

✅ キッパリとやめる

専門家によるとタバコの本数を減らす喫煙法は成功率が低いそうです。いわゆる「軽いタバコ」に切り替えても禁煙には役立ちません。禁煙を開始すると決めたら一気にやめましょう。

✅ 離脱症状のピークを知る

禁煙時に生じる吸いたい衝動は1~3分だといいます。例えば歯磨きセットを持ち歩くのも効果があります。吸いたくなったら歯を磨く習慣をつけましょう。

タバコを吸いたくなったら歯磨きをしよう/写真:無料写真素材 写真AC

離脱症状のピークは2~3日目です。長くても1週間なのでここを乗り越えるようにしましょう。
イライラや眠気、脱力感などがあるときは、医療機関や薬局で手に入る禁煙補助薬を上手に利用してみましょう。

✅ 柔軟な思考をもつ

「タバコは一生吸わない」「一度決めたことはやる」と気負いすぎるのも良くないそうです。小さな目標達成を積み重ねることで「吸わない自信」に繋がります。
禁煙中にタバコを吸ってしまっても、あきらめずに再チャレンジする柔軟な思考が大事です。失敗の体験を活かすことで禁煙の成功は近づきます。

禁煙するときの注意ポイント

■体重増加の対処法

禁煙をすると食べ物が美味しくなり体重が増える人が多くなります。また口寂しさやイライラで食事回数が増え、お菓子を食べ過ぎるケースもあります。

体重増加の対処法では、野菜を多く食べるのがおすすめです。野菜には便通を整え余分なコレステロールを減らす作用があり、大量に食べても体重増加にはつながりにくいです。

禁煙による体重増加は野菜で防ごう/写真:無料写真素材 写真AC

食事の満足感を高めるために、ゆっくりと良く噛んで食べるのもおすすめです。

禁煙直後はダイエットだと思って間食を少なくしたり、ストレッチをしたりするなど意識や行動を変えてみるのも良いそうですよ。

■再喫煙のリスク

禁煙が数ヶ月続いても何かのきっかけでタバコを吸いたい衝動が起こることがあります。

1本ぐらいと思って吸うと、その1本が次の1本を呼んで元に戻ってしまうことも良くあります。タバコには心理的な依存もあるので継続が難しいのです。

タバコへのイメージを変えるのも対処法のひとつです。

「食後の一服はうまい」「イライラが減る」などタバコに対して良いイメージがあると再喫煙のリスクは高まります。

タバコを吸いたい欲求が生じた時は、禁煙を決意したときの悪いイメージを思い出すようにしましょう。

禁煙と新型コロナウィルス対策

新型コロナウイルスの感染拡大で、うがいや手洗いと同様に禁煙を呼びかける声も高まっています。

ザ・ドリフターズのメンバーで愛煙家でもあった志村けんさんの訃報は、改めて喫煙の危険性を認識させることになりました

愛煙家にとっては肩身の狭い時代ですが、これを機に今一度、自身の健康を見つめ直してはいかかがでしょう。

文=大屋覚

≪参考ウェブサイト≫

e-ヘルスネット(厚生労働省) 

独立行政法人 環境再生保全機構

NHK 「新型コロナ」

日本禁煙学会

国立循環器病研究センター

■ Profile ■

大屋覚(ライター/放送作家)
テレビや書籍、Webマガジンを中心に活動中。医療・福祉・介護分野を中心に取材や執筆を行う。NHK、民放キー局の情報やスポーツ番組なども手がける。早稲田大学・同大学院修了(博士後期課程退学)。日本認知・行動療法学会会員。

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