健康な体づくり
「味覚障害かな」と思ったら…新型コロナとの関係は?~症状別チェックと3つの対策
新型コロナウイルスの感染初期に味覚・臭覚の異常を訴えるケースが相次いでいます。自然に治ることも多い味覚障害ですが症状によっては病気が潜んでいることも。この記事では味覚障害の種類や症状別チェック、新型コロナウイルスとの関連性などについて解説します。
症状から見る味覚障害の種類
味覚障害の異常は大きく「味覚低下(無味覚)」と「異味覚」の2種類に分けられます。
「味覚低下(無味覚)」は食べ物の味が本来より薄い、何を食べても味がしないのに対し、「異味覚」は本来の味と違った味がする、口の中に食べ物がないのに苦味や渋みを感じるなどの違和感を覚えるのが特徴です。
■あなたの味覚は大丈夫?早期発見チェック
味覚には塩味、酸味、甘味、苦味、うま味の5種類の基本味がありますが、味覚障害になるとこれらに異常が生じます。
中高年に多い味覚障害ですが、最近では偏った食生活やストレスなどの影響で若い世代にも広がっています。あてはまる項目がないかチェックしてみましょう。
□味を感じにくい、全く味がしない→①味覚低下・無味覚
□醤油が苦く感じる→②異味症
□口の中に何もないのに苦味や渋みを感じる→③自発性異常味覚
□甘みだけがわからない→④解離性味覚障害
□何を食べても嫌な味がする→⑤悪味症
いかがでしょうか?味覚障害には様々な種類があり、気がついた時には症状が進んでいたというケースも少なくありません。この後、5つの症状について詳しく説明していきます。
①味覚低下・無味覚
味覚低下が進むと味覚が鈍くなり、何を食べても美味しくありません。味覚低下は徐々に進むので気づきにくいこともあります。
無味覚になると、味を全く感じません。何を食べても砂を食べているように感じる方もいます。徐々に進行していくことが殆どですが、突然発症するケースもあります。
②異味症
「醤油が苦い」「レモンが塩辛い」など本来の味と異なる味覚になります。甘い食べ物なのに苦く感じるなど元の味と違う味を感じるのが特徴です。
③自発性異常味覚
口の中に何も入っていない、食べてもいないのに味を感じます。苦味を感じ続けるケースが多いのが特徴です。味を薄く感じる味覚低下の症状とともに現れるケースもあるそうです。
④解離性味覚障害
「料理の塩加減がわからない」「チョコの味がしない」など、主に甘味・塩味などの特定の味が分からなくなるのが特徴です。
⑤悪味症
何を食べても嫌な味がして、まずいと感じるのが特徴です。口の中に変な味が残っていると訴える人も少なくありません。
味覚障害のリスク
生命を脅かす危険が低いため放置しがちな味覚障害ですが、知らず知らずに塩分や糖分を取り過ぎてしまい生活習慣病を誘発するリスクも。また食欲減退から栄養不足に陥る可能性もあります。
何より、食べる楽しみがなくなるのは辛いことです。
異常を感じたら早めに対策をしましょう。
味覚障害は「亜鉛不足」が原因?
味覚障害の原因にはストレスや病気、口腔内の病気など様々ありますが、半分以上を占めるのが「亜鉛不足」です。
亜鉛は味のセンサーといわれる「味蕾(みらい)」の新陳代謝に必要不可欠なミネラルですが、高齢夫婦や独り暮らしだと弁当で食事を済ませてしまうことも多く、こうした食事では摂取することが難しいのです。
こうした亜鉛不足により味蕾(みらい)細胞の代謝が低下している人が多くなり、味覚障害が増えているそうです。
高齢者と薬剤性味覚障害
高齢者になると、高血圧や糖尿病など薬を服用する機会が多くなりますが「薬剤性味覚障害」は服用している薬が原因の味覚障害です。
症状には「口が渇く」「味が感じにくい」「金属味、渋みなど嫌な味がする」などがあります。
一部の薬は体外に亜鉛を排出したり、食べ物から摂取した亜鉛を体内に取り込むのを妨げたりします。そのため亜鉛不足となり味覚障害になるのです。
【味覚障害を起こしやすい主な薬】
メイラックス(抗うつ薬)/ハルシオン(睡眠薬)/アダラート(降圧薬)/タケプロン(胃潰瘍薬)/メバチロン(コレストロール低下薬)/ボルタレン(解熱・鎮痛薬)/ムコスタ(胃薬)/ファサマック(骨粗しょう症薬)など
*上記の薬剤で必ず味覚障害が起こるわけではありません。
味覚障害の3つの対策
味覚障害の対策には「亜鉛の摂取」「口腔ケア」「症状に合わせたケア」の3つが挙げられます。
⒈亜鉛をしっかりと摂る
亜鉛は味覚の形成になくてはならないものですが、普段食べる機会は少ないかもしれません。
亜鉛含有量の多い食品には、「抹茶」「ココア」「玄米茶」「牡蠣」「かに」「レバー」「数の子」「しいたけ」「煮干」「きな粉」「いりゴマ」「お麩」などがあります。
料理が苦手な方は、たまご、納豆、チーズ、ナッツ類などを積極的に摂るようにしましょう。亜鉛はビタミンCと摂ると吸収率がアップするので牡蠣とレモンなど食べ合わせるのがオススメです。
食事で亜鉛を十分に摂れない方は、サプリメントや亜鉛製剤で不足している亜鉛を補うこともできます。
⒉口腔ケアをしっかり行う
味覚が低下する原因に唾液の減少や口腔内の乾燥があります。
高齢で噛む力が低下して唾液が減ると味覚低下に繋がります。食事の際はゆっくりとよく噛んで食べるようにして唾液の分泌を促しましょう。
また口の中の乾燥を防ぐために、こまめなうがいを心がけましょう。
⒊症状に合わせて対策する
ストレスなど心因性が原因の場合は心の治療を行うことで味覚障害が改善します。
薬の副作用で味覚障害が起こっているケースもあります。担当医師と相談しながら、服用している薬を見直すことも大切です。
味覚障害と新型コロナウイルスの関連性
味覚障害が気になっていても、すぐに医療機関を受診する人は少ないかもしれません。
しかし、新型コロナウイルスの感染初期に味覚や臭覚を失った人が多いという報告も世界各地で報告されています。感染との因果関係はまだ証明されていませんが、専門家からはウイルス検査の対象に加えるべきとの声も出ているそうです。
日本耳鼻咽喉科学会では急に味覚・臭覚の異常を感じても発熱や咳、息苦しさなどがなければ2週間は出来るだけ不要不急の外出を控えること。2週間経っても他の症状がなく「におい」や「あじ」の症状が改善しない場合に耳鼻咽喉科外来の受診を勧めています。
味覚障害は、新型コロナウイルス感染の兆候?
現段階では新型コロナウイルスと味覚障害の関連性は分かっていません。また、味覚や臭覚の障害はインフルエンザや一般のかぜでも生じることがあります。異常を覚えても慌てることなく、冷静な行動が必要です。
新型コロナウィルスの感染では急に「におい」(嗅覚障害)や「あじ」の異常(味覚障害)を覚えることがあります。このことで各医療機関に問い合わせをしても現時点では殆どの施設で発熱や肺炎のない軽症の方は、PCR検査を行うことはできません。
「におい」や「あじ」がわからなくなる病気の多くは、新型コロナウィルス感染症とは無関係です。しかしこれまで思い当たる病気がないのに突然「におい」や「あじ」が分からなくなった場合は感染している可能性もあります。念のため、周囲への感染を拡大させないように、以下のようにこころがけてください。
①「におい」や「あじ」の異常を感じてから2週間はできるだけ不要不急の外出を控える。マスクを着けて対話をする。手洗いもこまめに。医療機関への受診は控えて、毎日体温測定を行う。
②37.5度以上の発熱が4日以上続く場合や、咳、息苦しさ、だるさがあれば、お住いの区市町村の「帰国者・接触者相談センター」に相談する。
厚生労働省のホームページからも確認することができます。
嗅覚・味覚障害の治療は急ぐものではありません。まずは何も薬を使わないで様子を見ましょう。自然に治る場合もあります。
発熱や咳などの他の症状がなく、嗅覚障害や味覚障害の症状が2週間以上経過しても変わらない場合は、耳鼻咽喉科外来に問い合わせましょう。
※上記の相談窓口や対応方法は令和2年4月17日現在の情報です。新型コロナウィルスは未知なウィルスなため、判明していない部分が多いです。最新且つ正確な情報を優先してください。
取材・文=大屋覚
≪参考ウェブサイト≫
■ Profile ■
大屋覚(ライター/放送作家)
テレビや書籍、Webマガジンを中心に活動中。医療・福祉・介護分野を中心に取材や執筆を行う。NHK、民放キー局の情報やスポーツ番組なども手がける。早稲田大学・同大学院修了(博士後期課程退学)。日本認知・行動療法学会会員。