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《シニア・シネマ・リコメンドVol.7》 パスカル・プリッソン監督 インタビュー『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』

シニアの方に、編集部が独断と選んだ映画をご紹介するシリーズ《シニア・シネマ・リコメンド 》。今回ご紹介する映画は12月25日(金)より公開の『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』。94歳のおばあちゃんはなぜ小学校に通うことになったのか?この映画を通じて伝えたかったこととは何なのか。本映画を手掛けたパスカル・プリッソン監督にもお話を聞きました。

なぜ彼女は小学校に通うのか?
世界最高齢小学生の奮闘記から見えてくるケニアの学校教育の現在――

危険な道のりを何時間もかけ通学する子供たちをとらえた『世界の果ての通学路』(12)で、世界中を感動で包んだパスカル・プリッソン監督。本作で追うのは、“ゴゴ”の愛称で親しまれる94歳の小学生。出演者と時間をかけて信頼関係を築きあげ、そのリアルな姿をカメラに収めていく撮影スタイルは本作でも健在。数学や英語の授業、修学旅行、誕生日会、新寄宿舎の竣工式…ケニアの美しい自然を背景に、数々の歌と仲間たちの笑顔に彩られたゴゴの学校生活がありのまま切り取られる。そこから浮かび上がってくるのは、貧困や慣習などの理由から未だアフリカに残る教育問題。ゴゴは映画というものを知らなかったが、プリッソンの熱心な説得を受け「世界中に教育の大切さを伝えられるなら」と撮影を許可した。94歳にしてなお信念のもとチャレンジを続けるゴゴの姿は、閉塞感ただよう現在を生きる我々に勇気と希望を与えてくれる。

映画『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』のシーンより© Ladybirds Cinema

パスカル・プリッソン監督インタビュー

本映画主役のGOGO(ゴゴ)ことプリシラ・ステナイのカリスマ性に一目惚れし、作品を作ると決めたパスカル・プリッソン監督に、この映画のテーマでもある教育と、制作時のお話についてお聞きしました。

GOGOとパスカル・プリッソン監督 © Ladybirds Cinema

── これはドキュメンタリーで、プロの役者もおらずシナリオもなく、人々の自発的な行動や会話など日常をあるがままに収録していますが、こうした進め方の難しさや、逆にプロの役者では撮れない利点を教えてください。

まず、フランスでこういう映画と撮ることは、ほとんど不可能です。フランス人は、学校でも規律を守るとか人に素直に従うような人達ではありませんから(苦笑)。ケニアの人達の規律正しさが、この映画を撮る上で大きな助けになりました。彼等側にも映画を撮って欲しいという願望があったので、それも助けになりました。彼等は、プロの役者でもなく、映画がどんなものかも知らない、撮影されたこともない、カメラを向けられると恥ずかしいという意識すらありません。彼らにとってカメラは何の意味もなさないものだったので、カメラを意識せずに済みました。ですから最初にカメラを見ないなどルールを説明した時に、すぐに理解してくれました。我々がどのように仕事を進めるのかよく観察していて、理解してくれたんです。全て順調に進みました。彼らを撮影することに、何の困難も支障もありませんでした。我々もよく観察していましたが、彼等も私達をよく観察していたんです。ですので、何の問題もなく順調でした。

映画『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』のシーンより© Ladybirds Cinema

── 現地の子供たちは楽しく学校に行っているように見えました。日本では通学が義務化されていて、嫌々学校に行かされている子が少なくありません。そういう子たちが自主的に学校に行きたいと思う様にはどうしたらいいと思いますか?

数カ月間ケニアの学校に通わせるといいのでは?(笑)人生が変わりますよ。このドキュメンタリーは、まさにそのことに気づいてもらうために作ったんです。ケニアの田舎には電話もインターネットも映画もテレビなく、他にこれといったアクティビティがないので比較はできませんが、親の世代よりも恵まれた生活をしたければ教育を受けるしかないんです。フランスや日本、他の先進国では、そうした問題はないでしょう。恵まれていることに気づかない子供達に、怒りたくなることもあります。教育がいかに大切か気づいていないんですね。仕方ないことです。日本の子供達に説明しに行きましょうか?(笑)

映画『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』のシーンより© Ladybirds Cinema

──15歳で学校を辞めたとありましたが、映画『ゴゴ』の制作通じて、今改めて学校を辞めたということをどう思いますか?

後悔しています。後悔はしていますが、勉強を続けていたらゴゴには出会えなかったでしょう。ある意味後悔していないとも言えます。(もし大学を出ていたら)別の職業を選んでいたでしょうから。独自の道を歩んできて、知識不足のせいで多くの困難を経験しましたが、私が撮影した人達から多くを学びました。様々な出会いから、歴史や地理や外国語を学んだんです。出会った人達に育ててもらい、今の自分が形成されたとも言えるでしょう。

映画『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』のシーンより© Ladybirds Cinema

── 次に挑戦したい映画やドラマがあれば教えてください。

ドキュメンタリーの場合は、映画となるような題材次第なので、私がテーマを選ぶというよりは、実話が私を選んでくれるんです。何か面白い話に出会えれば、ドキュメンタリーを制作するでしょう。(先にテーマを決めるのではなく)、(自分の足で)頻繁に旅行したり、北米、インド、オーストラリアなど様々な地域に住んでいた時に出会った多くの人達が、何か面白い話を見つけると、私に連絡してくれるんですよ。

映画『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』のシーンより© Ladybirds Cinema

“これからの未来をつくる孫”へ贈る、クリスマスギフト映画

 大人になって 「 学生時代もっと勉強しておけば良かった。」と思っている人は少なくないのではないだろうか。私もその一人である。小学生の頃台風予報が出て、「休校になるかなぁ?」 と胸を膨らますものの、私の浅はかな願いとは裏腹に台風は逸れるか熱帯低気圧に変化してくれた。そんなことをこの映画の主役であるゴゴに話したら大層叱られるであろう。
  子ども3人、孫22人、ひ孫52人を持つ94歳のおばあちゃんが皆と同じ制服で学校に通い、同級生たちとおしゃべりを楽しんだり、修学旅行に意気揚々としたりする。年齢は関係ないんだ、というより当時過ごすことが出来なかった時間を一生懸命全身で吸収しようと、学校生活を満喫しているように思えた。
 日々「今」をたくましく生きるケニアの人々、ゴゴの学校生活を手助けしているひ孫のチェプコエチの淀みない目。文明社会を生きる私たちは利便性と引き換えにそういった多くのものを失ったと思う。
 この映画はドキュメンタリーとして作られているが、リズミカルに流れる展開と出演者達の自然な演技(演じてはいないのだけれど)で、劇映画 です。と言われても納得がいく。それほど気楽に観れる映画で、気づけばあっと言う間に時間が過ぎていた。
 日本の先生達は、教育のみならず、他の先生達や保護者達、生徒達の顔色なんかも窺いながら、「先生」としてやっていくのに忙しい。しかしこの映画に出てくる先生は、シンプルに生徒一人一人の事だけを最大限に考え、学業を手助けしていて、 生徒に媚びるなんてことを知らない。 お年寄りだからと甘やかしたり、小学生だから大目に見るなんてことはなく、対人間として真摯に向き合う。本来の教育の在り方とは何か、というのを改めて考えさせられた。
 今こうやって一つの素敵な映画を皆さんにお伝え出来ているのも、私が大した一生懸命勉強して来なかったおかげで、こういった機会に巡り合えたわけでもあるので、過去の自分に感謝することにしよう。(いや、駄目か。)

映画 『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』
12月25日(金) シネスイッチ銀座 ほか全国順次公開です


【作品紹介】

映画『GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生』
公式サイト:https://www.gogo-movie.jp/
監督:パスカル・プリッソン
製作:マリー・トージア
撮影監督:ミッシェル・ベンジャミン
編集:エリカ・バロシェ
音楽:ローラン・フェルレ

2019年|フランス|英語・スワヒリ語|84分|原題:Gogo
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ

ケニア在住の94歳、通称“ゴゴ(おばあちゃん)”。彼女がチャレンジするのは小学校の卒業試験。

プリシラ・ステナイは、3人の子供、22人の孫、52人のひ孫に恵まれ、ケニアの小さな村で助産師として暮らしてきた。皆から“ゴゴ”(カレンジン語で“おばあちゃん”)と呼ばれる人気者だ。ある時、彼女は学齢期のひ孫娘たちが学校に通っていないことに気づく。自らが幼少期に勉強を許されなかったこともあり、教育の大切さを痛感していたゴゴは一念発起。周囲を説得し、6人のひ孫娘たちと共に小学校に入学した。年下のクラスメートたちと同じように寄宿舎で寝起きし、制服を着て授業を受ける。同年代の友人とお茶を飲んで一息ついたり、皆におとぎ話を聞かせてやることも。近頃は新しい寄宿舎の建設にも力を注いでいる。すっかり耳は遠くなり、目の具合も悪いため勉強するのは一苦労…。それでも、助産師として自分が取り上げた教師やクラスメートたちに応援されながら勉強を続け、ついに念願の卒業試験に挑む!

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