趣味や愉しみ

《シニア・シネマ・リコメンドVol.5》
監督 単独インタビュー『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』

シニアの方に、編集部が独断で選んだ映画をご紹介するシリーズ《シニア・シネマ・リコメンド 》。今回は7月17日(金)より公開の『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』。爺ちゃん婆ちゃん.comの為にツヴァ・ノヴォトニー監督がメールインタビューに応じてくれました。

本国スウェーデンで初登場No.1の大ヒット感動作
北欧からの人生エール!一歩踏み出せば、明日はもっと素敵になる

© AB Svensk Filmindustri, All rights reserved

物語は結婚して40年、完璧に主婦業をこなし、夫に尽くしていたブリット=マリーがある日、夫に愛人がいることを知ってしまい、指輪を置いて家を飛び出すところから始まる。結婚してからまともに働いたことのない彼女がようやくありついた仕事は、小さな田舎町でのユースセンターでの子供たちの今まで忌み嫌っていたサッカーチームのコーチ。初めは不慣れだった彼女も周りの助けによって徐々に馴染んでいくのだが。。


映画『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』のシーンより/© AB Svensk Filmindustri, All rights reserved

原作は映画版が2016年に公開されて大ヒットした「幸せなひとりぼっち」の 原作者フレドリック・バックマンによる小説 「ブリット=マリーはここにいた⌋。スウェーデン出身の著者は心温まる作風が読者に愛され、 著作が世界中で累計1000万部突破、46か国以上で出版されている。

主演は『愛の風景』で1992年のカンヌ国際映画祭で主演女優賞を受賞し、 『スター・ウォーズ』エピソード1、2でアナキンの母、 シミ・スカイウォーカー役で世界的にその名を知られるスウェーデンの国民的女優、 ペルニラ・アウグスト。義理の息子アンダース・アウグストは、 アカデミー賞®にノミネートされた経験のある脚本家であり、 本作の共同脚本も務める。

監督は『ボルグ⁄マッケンロー 氷の男と炎の男』 のヒロインを演じた女優、ツヴァ・ノヴォトニー。 2018年から監督としても意欲的に活動しており、初監督・脚本をつとめた “Blindsone(原題)”は全編ワンカットで制作され、 2018年のトロント国際映画祭でプレミア上映されるなど、 各映画祭で高い評価を得ている注目の若手女性監督である。 主演のペルニラ・アウグストは本作でスウェーデンのアカデミー賞、 ゴールデン・ビートル賞2020で主演女優賞にノミネートされ、 本作品は観客賞にノミネートされている。

映画『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』のシーンより/© AB Svensk Filmindustri, All rights reserved
ツヴァ・ノヴォトニー監督(左)とブリット=マリー役のペルニア・アウグスト(右)
/ © Hans Alm

映画公開に際し、ツヴァ監督が爺ちゃん婆ちゃん.comの単独インタビューに応えてくれました。 今回インタビューはメール形式で行いました。

── 今回この映画を手掛けた理由はなんですか?

63歳で人生をイチからやり直そうとする女性の個性的で勇気をもらえる物語と、全年代の人に贈る“何を始めるにも遅すぎることはない”という強いメッセージです。

── 同じ女性として特別な思いはありましたか?

人は皆それぞれの人生をどう生きたいか選ぶ権利があると思っています。もちろん歴史や文化的な問題もありますが、基本的には専業主婦でいることが幸せならそれで良いと思いますし、何か他の事をしたいならそれも良いと思います。一番大切なことは、他の人の選択を一方的にジャッジしない事です。

── 撮られることが多いと思いますが、だからこそ撮る側になって大切にしていることや、普段撮られているからこそできることはありますか?

他人を理解することが健全な協力体制を得るためのカギだと思っていますので、そういう意味では女優と監督、その両方の立場を理解することができました。その理解が出演者と監督の信頼関係を結ぶと思います。私にとって映画創りは民主主義であり、そのためにはお互いの尊敬と理解が必要です。

── 最近は徐々に変わりつつありますが、日本ではまだまだ夫に従えて不自由な生活をしている女性が少なくなく、男女平等化が進んでいる北欧とは大差があると思います。そういった男尊女卑の文化についてどう思いますか?

人間関係はお互いの努力だけでなく、もちろん文化や伝統の違いも関係しますが、私はスウェーデン人も日本人も関係なく、女性には知識も洞察力もあり、対等な関係を築く力があると信じています。これを実現させるには自分たちのニーズを伝えるべく女性が声を上げる必要がありますし、そうする事でパートナーも関係構築に参加することが出来ます。私たちは自分自身や周りとの関係に責任を持つべきです。上手くいかない関係を責めるのではなく、積極的にオープンで誠実なコミュニケーションをとって、お互いにとって健康的な人間関係を築くべきだと思います。

平等を求める運動は若い世代にとって間違いなく良い進展ですし、これを通して子供たちにも声を上げることの大切さを伝えられていると思います。

── 監督自身ブリットマリーのように、リスクを侵しながらも一歩踏み出した経験がありますか?あればそのエピソードを教えて下さい。

私は20年間俳優をやり続けた後、ようやく、ありったけの勇気を出して、脚本を書き監督をやり始めました。数年をかけてゼロから始めること、それには多くの不安が伴いました。ですが、それは新しい事を学び、人生をやり直すチャンスだと考えたのです。それ以来、私はより頻繁に新しい事にチャレンジするようになりました。例えばモーターバイクに乗れるようになるとか、一番最近では氷浴を初体験しました。いつか叶えたい夢、というのはありません。今、この瞬間を生きたいと考えています。

── このサイトの読者、シニアの方にメッセージをお願いします。

私以上に経験豊富なシニアの方々に意見できる立場にはありませんが、私はブリット=マリーから自分をさらけ出し、アクションを起こすことを後押しされました。彼女のように私は幾つになっても学び、より良い方向に変わっていきたいと思っています。

映画『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』 予告編

── 編集部感想 ──

よく「人が死ぬ前に後悔すること」というようなテーマで出てくる内容の中に、もっと○○しておけばよかった。というのがある。 一歩踏み出すにはリスクがあり、失敗すると後悔する。でも踏み出さないときっと死ぬ前に後悔する。大きな一歩でなくてもいいかもしれない。小さな一歩でもいいから勇気を持って踏み出してみよう。改めてそう思わせてくれる映画だ。不満を抱えつつもなんとなく毎日を過ごしている人に一歩踏み出す勇気を与えてくれる、そんな作品だ。
どんなに雑然としていても絵になってしまう北欧の景色の中で人生変えようと奮闘する63歳の姿を観て欲しい。


■映画情報
『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』
公式サイトhttps://movies.shochiku.co.jp/bm  
監督:ツヴァ・ノヴォトニー
主演:ペルニラ・アウグスト
原作:フレドリック・バックマン(早川書房 刊「ブリット=マリーはここにいた」)


7月17日(金)より、新宿ピカデリー、YEBIS GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか公開

映画『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』ポスター/© AB Svensk Filmindustri, All rights reserved
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