爺ちゃん婆ちゃん.com流 シニアのための銭稼ぎのスゝメ
シニアのための“銭稼ぎのスゝメ”【第3回】ドラマや映画に出演「エキストラで稼ごう」
大好きな俳優と一緒の作品に出演して、小遣いも稼げる─。そんな夢を叶えてくれるのが「エキストラ」です。映画やドラマで俳優を引き立てるエキストラですが、知らないまま飛び込んでトラブルになることも。この記事では、エキストラの種類から参加する方法、メリットや報酬、気をつける点について解説します。
シニアも活躍。エキストラの仕事とは
こんにちは! ライターのサトシと申します。
エキストラと一口に言っても、その歴史は古く、日本では「仕出し」と言われ、歌舞伎の脚本にも登場します。「仕出し」は、ドラマの中では役名のない端役のことで、通行人や群衆など舞台の雰囲気を作る役割を担います。
アメリカではエキストラはバックグラウンドと呼ばれ、台詞がなく背景を演出する俳優になります。現在も映画やドラマには多くのエキストラが出演しており、ベテランのシニアも活躍しています。
今回はキャリア11年のシニアエキストラ、松田さん(仮名)から詳しい話を伺いながら、エキストラの基礎知識や気をつける点などを紹介します。
エキストラの種類
エキストラは、主に「報酬型」と「ボランティア型」の2種類に分けられます。
報酬型はギャラと呼ばれる出演料が支払われます。ボランティアは原則、出演料は支払われない無償タイプです。
まずはエキストラの種類を詳しくチェックしてみましょう。
■報酬型エキストラ
報酬型とは、作品に出演してギャラが発生するタイプです。基本料金が時間制で決まっているケースが多いです(5時間で3,000~4,000円程度が相場)。
集合や解散場所が東京23区内であれば、交通費も報酬に含まれているケースが多いそうです。
松田(ベテランエキストラ):交通費はバカになりません。4,000円の仕事で交通費が往復1,200円かかると、ギャラは2,800円にしかならない。5時間働いたとして時給は560円。定期があると便利です(笑)。
■ボランティアエキストラ(無償)
こちらは報酬(ギャラ)が全く出ないタイプ。テレビ局や制作会社が募集しているケースが多いそうです。
交通費などが支払われることもありませんが、作品によっては番組の記念品が進呈される場合もあるとか。
松田:最近は、地域のPRや活性化に貢献しようという市民ボランティア・エキストラの募集は増えています。謝礼は発生しませんが、最初の一歩として作品に出演する方はよくいます。
映画、ドラマでエキストラとして稼ぐ方法
松田さんによると、高齢者がエキストラとして安全に確実に報酬を得る近道は、エキストラ派遣会社に登録すること。早速、その手順を見てみましょう!
エキストラの派遣会社に登録してみよう
シニアが登録しやすいプロダクションはあるのでしょうか?
松田:私が登録しているのは老舗のエキストラ事務所です。実績も豊富なので安心です。登録するとマネージャーもいますので、ちょっとしたタレント気分が味わえます(笑)。
【主なエクストラ事務所】
○芸優
松田:ドラマのエンドロールをよく見ると、エキストラ事務所がクレジットされているので参考にしても良いかもしれません。複数の事務所に登録している人もいますよ。
登録手続きはエキストラを派遣している会社のホームページには詳しく書いてあるそうです。会社を訪問して仕事の説明を受けて登録費用を払うケースが多いとか。登録費用は各社それぞれ違うそうです。
エキストラの出演依頼
登録後はプロダクションに電話をして、仕事の有無を確認します。
最近は作品や役柄などに合わせた募集メールが配信されることも増えています。
エントリーして採用されると、いよいよ仕事スタートです。
知っておきたいエキストラの基礎知識
エキストラと言ってもお金をもらう以上はプロ。演技経験のない素人でも迷惑をかけずに働けるのでしょうか?
松田:通行人や群衆役はセリフもなく簡単な動作だけなので、演技経験がなくても何とかなります。現場にはベテランもいますので困った時は相談できます。
■服装・持ち物
エキストラの衣装や持ち物は指定がない限り、派手な色や服装は避けた方が良いそうです。貴重品はなるべく現場には持ち込まない。盗難・紛失があっても自己責任です。
松田:服装は、企業のロゴやブランド名が入ったものはNGですね。通行人の役だとスーツとラフな服装の、2ポーズと指示されることもあります。
「ラフ」とはカジュアルな服装。「ポーズ」は種類。この場合は、スーツとカジュアルな服を1着ずつ用意すると捉えるそうです。
■これ絶対やっちゃダメ!
遅刻や欠席はもちろんNG!次の仕事をもらえない場合もあるそうです。現場では、待ち時間、移動時間も仕事時間なのです。
松田:俳優さんに声をかけることや写真撮影もやっちゃダメです。同じ作品の出演者と考えれば当然のことかもしれませんね。
最近、特にうるさく言われるのが秘密保持。放送が公開されるまでの内容や撮影に関わることは厳禁。SNSへの書き込みもダメだそうです。
エキストラのデメリット
エキストラの仕事で大変と言われるのが「待ち時間」です。出演時間は短くても、拘束時間は長いといいます。
松田:待ち時間は、とにかく長い(苦笑)。私の経験では、撮影は30分で、待ち時間が8時間という現場もありました。屋外の撮影では「天気待ち」もありますし。冬は寒さ対策が必要です。
待ち時間は何をしているのですか?
松田:スマホを見たり、本を読んだり。長丁場だとエキストラ同士も仲良くなるので、休憩時間に雑談することも多いですね。
エキストラはどんな方が多いのですか?
松田:本当にさまざまな人がいますね。定年後にエキストラをはじめた方も多いです。比較的、生活に余裕があれば楽しい仕事だと思います。エキストラで食べている方もいますけど、本業でやっていくには収入的には厳しいですね。
エキストラの仕事で気をつけることはありますか?
松田:エキストラの募集をしながら、後で高額なレッスン代を請求するプロダクションもあるそうです。高額な報酬(ギャラ)を提示しているエキストラの仕事は、注意が必要ですね。
エキストラのメリットとは?
憧れの有名人と出会えたり、幅広い年齢層の人と交流を深めることのできるエキストラのお仕事。
長く続けていると“オイシイ”こともあるそうです。
松田:エキストラでもセリフをもらえることがあります。ドアップで映ったときは家族も喜んでくれますね。ギャラでいえば、5時間4,000円の仕事が3時間で終わることもありますが、それでもギャラは一緒です。
隠れた才能を開花させよう!
エキストラから、本格的に俳優を目指す方もいるそううですね。
松田:レッスンを受けて事務所の俳優部門に入る方もいます。「役者は3日やったらやめられない」と言いますし、現場にいると刺激を受けますよね。
かつて世界的な演出家の蜷川幸雄さんは、たくさんの高齢者に夢や可能性を感じてもらいたいとの思いから、「高齢者1万人の演劇」という公演を計画し、65歳以上の出演者を公募したことがありました。
まずは趣味として「銭稼ぎ」をしながら、自分の隠れた才能を発見してみてはいかがでしょうか。
文=大屋 覚
■ Profile ■
大屋 覚(放送作家・ライター)
テレビや書籍、Webマガジンを中心に活動中。医療・福祉・介護分野を中心に取材や執筆を行う。NHK、民放キー局の情報やスポーツ番組なども手がける。 早稲田大学・同大学院修了。静岡生。