趣味や愉しみ
《シニア・シネマ・レポート Vol.01》
心豊かな生き方を探してみたくなる映画『輝ける人生』
いま、シニア世代をテーマにした映画が増えています。そこで、実際にシニア世代の人と一緒に鑑賞し、その作品の感想を語ってもらおうという企画です。同世代にしか語れない、シニア視点のちょっと変わった映画紹介コーナー《シニア・シネマ・レポート》。今回、イギリス映画『輝ける人生』を、72歳のユーチューバー・成羽さんと一緒に観てきました。
映画『輝ける人生』は2018年8月25日(土)からシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードーショー/(c)Finding Your Feet Limited 2017
もっと豊かに生きるヒントと夢が詰まった人生賛歌
イギリス映画『輝ける人生』は、見栄っ張りのマダムが、夫の浮気に傷つき、姉の元に転がり込むところから話がはじまります。主人公の名前はサンドラ。夫がナイトの称号を授与された祝賀会で夫の浮気を目撃。しかも、その相手はサンドラの親友でした。
映画『輝ける人生』 サンドラは姉ビフにダンス教室に連れてこられるが、仲間となかなか打ち解けられない/(c)Finding Your Feet Limited 2017
傷心の彼女はしばらく疎遠だった姉ビフの団地に家出しますが、これまで、まったく異なる生活をしていた姉妹、自由奔放に生きる姉にサンドラは戸惑い、自暴自棄から立ち直れない妹を心配するビフ。
ビフは自分が通うダンス教室にサンドラを無理やり連れていき、そこで、ビフの仲間、チャーリーたちと出会います。はじめは気の進まないサンドラでしたが、かつてダンサーを目指していた彼女は、徐々に心を癒し、かつての情熱を思い出していくというのが、大まかなストーリーです。
主人公のサンドラ、姉のビフとその仲間であるチャーリーたちなど、登場人物のほとんどがシニア世代です。愉快にダンスや会話を楽しむシーンもあったり、イギリス映画らしくシニカルなジョークシーンもあったり、どのキャラクターにも過去を感じさせるホロリとさせるシーンが描かれ、ストーリーが進んでいくうちに、自分もこの仲間たちに入ってみたいと思わせてくれます。
映画『輝ける人生』予告編/(c)Finding Your Feet Limited 2017
もっと頑張れって、登場人物を応援したくなる映画
今回、72歳のユーチューバー成羽さんと一緒に、一足早く、映画『輝ける人生』の試写を観せていただき、鑑賞後に作品の感想を語り合いました。
映画『輝ける人生』を観終えたユーチューバーの成羽さん/撮影:弓削ヒズミ
●見終えた感想をお聴かせください。
成羽 いい映画でした。年齢は関係なく、やっぱり最後まで諦めてはいけないと思いましたね。一度きりの人生なので、何をするにも始めるにも年齢は関係ないと思いました。
●気になった登場人物はいましたか?
成羽 姉妹の友人で、背中で哀愁を語るチャーリーですね。重大な問題を抱えながら、多くを語ることなく、立ち居振る舞いだけで彼の人生をよく表しているなと思いました。彼の抱える想いも分かりますし、とても感情移入してしまいました。
映画『輝ける人生』 サンドラとチャーリーの二人は最初は反目しあっていたが、徐々に相手を理解していく/(c)Finding Your Feet Limited 2017
●リリーさんと一緒のシーンなんかは、ぐっと来ました。
成羽 最初は、船のシーンとか、何でこれを映しているんだろうと思うと、あとから分かってきて、映画の1シーン、1シーンごとに無駄がないというか、ストーリーに引き込まれていきます。
あとは介護にお金がかかったり、老老介護など、高齢者問題の事情は、イギリスも日本もあまり変わらないんだと思いました。
●本当にシニア世代を中心に描かれた作品でした。
成羽 シニアは何を考え、どう感じて生きているのか、そこがよく描かれていました。
●笑ってしまうシーン、泣けてしまうシーン、たくさんの喜怒哀楽もありましたね。
成羽 歳は関係ない、もっと頑張れって、登場人物を応援したくなる映画ですよね。気持ちを閉じ込めていないで、もっと心をオープンに楽しまなくちゃって。
●物語冒頭、傷心の主人公サンドラなんて、ひどい悪態をついてましたよね(笑)
成羽 そうそう、歳をとったら意固地になっていくし、人ってなかなか変われないんです。最初のサンドラの性格は、長年、過ごしてきた環境で作られたんでしょう。そんな窮屈な環境に居たのが、全然違う環境に入って、性格を180度転換できるかといえば、そう簡単にはいかないですよ。だから、すごくリアルな設定だと思いました。
映画『輝ける人生』 35年間支え続けた夫がナイトの称号を授与された祝賀会。これからはバラ色の人生が約束されているはずだったが/(c)Finding Your Feet Limited 2017
●この作品ではダンスシーンも見どころの一つでした。
成羽 特にイタリアの舞台でのダンスシーンが良かったです。あの年齢で、あそこまで踊れるってすごいですよね。
●資料によると、引退した元プロたちが再びオーディションを受けて参加したらしいです。
成羽 海外の映画を観ていると、あちらのダンサーや俳優さんたちって歌って踊れて、すごいですよね。だから年齢は関係ないんでしょう。昔取った杵柄じゃないですけど、実際に動けば身体が思い出すし、あのように迫力ある踊りができるんでしょうね。力強さを感じたダンスシーンでした。
映画『輝ける人生』 ロンドンの街中でチャリティーのダンスを踊るサンドラたち、これがきっかけでローマ遠征が実現する/(c)Finding Your Feet Limited 2017
●それぞれのシーンで映される風景も美しかったですね。
成羽 風景に溶け込んだ物語というんでしょうか、きれいな場所だけじゃなく、姉ビフの住む雑多な団地もあったり、各シーンごとにリアリティがありました。
●ほかに印象に残ったことはありましたか。
成羽 姉ビフの生きざまです。生きている限り、最後まで楽しむという姿勢は、私も目標としていることです。私は生きている限りユーチューブを続けます。それは、あの世に逝く時に後悔したくないんです。何か一つでもやりきって、最後に楽しかったと思って逝けたらいいなと(笑)
映画『輝ける人生』 サンドラはローマで初めて姉ビフの過去を聴かされる/(c)Finding Your Feet Limited 2017
成羽 年齢は関係なく、やりたいことがあれば挑戦してみる。好きなことに打ち込んでいる人は素敵に見えてきます。とにかく、たくさんの方に観ていただきたい映画だと思いました。
成羽さんとの映画感想話は、この後、1時間ほど続きましたが、ネタバレになってしまうので、この辺で。
映画『輝ける人生』/(c)Finding Your Feet Limited 2017
家族のこと、身体的なこと、さまざまな悩みを抱えるシニア世代だからこそ、仲間たちと支え合う大切さ、自分らしい生き方の楽しさなど、シニアライフのヒントを映画『輝ける人生』は提示しているように思います。『輝ける人生』は、8月25日(土)、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードーショーされるので、ぜひ、映画館に足を運んでみてください。
文=弓削ヒズミ(編集部)
映画『輝ける人生』
監督:リチャード・ロンクレイン
出演:イメルダ・スタウントン、ティモシー・スポール 他
イギリス/2017年/114分
8月25日よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードーショー
■シニア・シネマ・レポート バックナンバー
《Vol.01》『輝ける人生』/《Vol.02》『ガンジスに還る』/《Vol.03》『十年 Ten Years Japan』/《Vol.04》『葡萄畑に帰ろう』/《Vol.05》『天才作家の妻』/《Vol.06》『バイス』/《Vol.07》『僕たちのラストステージ』
■ Profile ■
成羽(なりわ)
1945年生まれ。2015年にユーチューバーとしての活動を開始。1人でスマホを使って、撮影から動画編集まで行っている。2018年10月時点で、チャンネル登録者約5,000人、視聴回数1,340,000回を数える。趣味は、書道、チョークアート、旅行など多数。書道は師範の免許を取得する腕前だとか。何事にも好奇心旺盛。PERSOL Work-Style AWARD 2019 シニア部門受賞。
成羽のチャンネル
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