趣味や愉しみ

《シニア・シネマ・レポート Vol.05》
シニア夫婦にこそ見て欲しい映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』

いま、シニア世代をテーマにした映画が増えています。そこで、実際にシニア世代の人と一緒に鑑賞し、その作品の感想を語ってもらおうという企画です。同世代にしか語れない、シニア視点のちょっと変わった映画紹介コーナー《シニア・シネマ・レポート》。今回、本年度アカデミー賞最有力作品『天才作家の妻 -40年目の真実-』を、70代のユーチューバー・成羽さんと一緒に観てきました。

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映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』は、2019年1月26日(土)より、新宿ピカデリーほか全国公開/(c)META FILM LONDON LIMITED 2017

ノーベル賞授賞式が秘めた感情を呼び覚ます

今回、ご紹介する『天才作家の妻 -40年目の真実-』では、40年連れ添ったシニア夫婦が、ノーベル賞授賞式を機に、長年秘めてきた感情をお互いにぶつけ合います。おそらく「妻」「夫」いずれの視点で観るかによって、ずいぶんと物語の受け取り方が変わってくるのではないでしょうか。

本作では、1950年代から1990年代にかけての夫婦の姿を描いており、時代とともに変わりゆく価値観も物語の鍵となっています。結婚・出産・仕事、50年代当時の女性たちが置かれた立場を考えながら鑑賞すると、より、キャラクターたちに感情移入できるかもしれません。

映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』予告編/(c)META FILM LONDON LIMITED 2017

夫婦のことは夫婦じゃないとわからない

今回、読者プレゼントで募集した試写会に、70代のユーチューバー成羽さんと一緒に行ってきました。同じ会場には読者の人もいたかもしれませんね。鑑賞後に成羽さんと作品の感想を語り合いました。

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『天才作家の妻 -40年目の真実-』の試写を観終えたユーチューバーの成羽さん/撮影:弓削ヒズミ

●映画を見終えて、印象に残っているシーンはありますか。

成羽 最後のシーンです。ネタバレになってしまうので詳しくは言えませんが、夫婦お互いの気持ちがすごく伝わってきました。名優たちの迫真の演技にもヤラレたー!という思いでした。それから気になったは夫ジョゼフの持っていたクルミです(笑) 何でクルミを持ってたんだろうと不思議でしたが、あれが物語を進める小道具になっていたんですね。

●グレン・クローズさんが演じた妻ジョーンについて、どう思われましたか。

成羽 私とは違うタイプだと思いました。私は1945年生まれで、ジョーンよりちょっと若い世代なのかもしれませんが、夫の陰にいるようなことはなかったです。周囲は夫を立てる女性も多かったですが、理解のある夫で、お互いに仕事をしながら平等な関係でした。夫がお台所に立つこともありましたね。

そういえば、あの夫婦が結婚前に先生と学生だったシーンを観て思い出したことがありました。学生時代、私の夢は学校の先生になることでした。進学面談の時に志望理由を話したら、「お嫁入り道具のひとつになるね」って言われて、その言葉にカチーンときて、そのまま帰ってしまいました(笑) 先生から謝罪があったのですが、私も頑固ですから、もう学校の先生にはならないの一点張り。お嫁入り道具と言われたのが本当にショックでした。

●映画の中では夫婦ゲンカが頻繁にありましたね。

成羽 大ゲンカするごとに急に仲直りしたり、ケンカするほど仲がいいじゃないですけど、あれが夫婦なんでしょうね(笑) 相手の答えがわかっていて、あえて詰め寄る。夫婦のことは夫婦じゃないとわからないことがあります。

●ジョナサン?・プライスさんが演じた夫ジョセフは、本当にダメ男って感じでした(笑)

成羽 この映画は、女性側で観るか、男性側で観るかでイメージが変わってくるでしょうね。夫ジョセフがノーベル賞でスピーチするシーンでは、自信のない男性というのがよく描かれていたと思いました。

●成羽さんと2つ違いの女優グレン・クローズさんはいかがでしたか。

成羽 やはり演技にチカラがあるというか、この役にぴったり。それにショートのグレイヘアが、普段着もパーティドレスでも似合う髪型で素敵でした。先日、Youtubeのライブ配信でもグレイヘアのことを話したばかりで、私も髪を染めるのは辞めたいのですが、なかなか踏ん切りがつきません。映画を観て、あらためてグレイヘアもいいなと思いました。

●グレン・クローズさん、成羽さんのような存在がいるだけで、下の世代からすれば心強く、憧れですよ。

成羽 いえいえ(笑) たまにプレッシャーも感じます。視聴者の皆様のおかげで動画を発信できているので、ちゃんとしなきゃと気を引き締めています。

●最後に成羽のチャンネルの視聴者さんにはどうすすめますか。

成羽 女性も男性も時代のせいにせず、生まれてきたからには自分の道を歩んで欲しいと、この映画を観て思いました。特にいまの時代だからそう思います。映画終演後のトークショーで言っていましたが、いまは若い人より年配の人が活躍していると思いますから、年齢や性別を言い訳にしないで、やりたいことをやって欲しいです。

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取材した試写会の後には、スタイリストの地曳いく子さん(右)、映画ジャーナリストの立田敦子さんによるトークショーが行わた。作品の背景などが語られた/撮影:弓削ヒズミ

映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』/(c)META FILM LONDON LIMITED 2017

最後まで謎に包まれ、夫婦愛を描きながらもサスペンス的な要素もある映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』。熟年夫婦ほど作品世界に入り込んでしまうような気がします。2019年1月26日(土)より、新宿ピカデリーほか全国公開です。ぜひ、夫婦揃って映画館に足を運んでみてください。

文=弓削ヒズミ(編集部)2019年1月16日取材


映画『天才作家の妻 -40年目の真実-』

監督:ビョルン・ルンゲ
出演:グレン・クローズ、ジョナサン・プライス、クリスチャン・スレーター
スウェーデン、アメリカ、イギリス合作/2017年/101分
2019年1月26日(土)より、新宿ピカデリーほか全国公開

■シニア・シネマ・レポート バックナンバー
《Vol.01》『輝ける人生』《Vol.02》『ガンジスに還る』《Vol.03》『十年 Ten Years Japan』《Vol.04》『葡萄畑に帰ろう』《Vol.05》『天才作家の妻』《Vol.06》『バイス』《Vol.07》『僕たちのラストステージ』

■ Profile ■
成羽(なりわ)

1945年生まれ。2015年にユーチューバーとしての活動を開始。1人でスマホを使って、撮影から動画編集まで行っている。2018年10月時点で、チャンネル登録者約5,000人、視聴回数1,340,000回を数える。趣味は、書道、チョークアート、旅行など多数。書道は師範の免許を取得する腕前だとか。何事にも好奇心旺盛。PERSOL Work-Style AWARD 2019 シニア部門受賞。
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