趣味や愉しみ
《シニア・シネマ・レポート Vol.10》
世界最高峰のテノール歌手の激動の愛と半生を描く映画『アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール』
いま、シニア世代をテーマにした映画が増えています。そこで、実際にシニア世代の人と一緒に鑑賞し、その作品の感想を語ってもらおうという企画です。同世代にしか語れない、シニア視点のちょっと変わった映画紹介コーナー《シニア・シネマ・レポート》。
世界最高峰に上り詰めた盲目のテノール歌手の自伝を完全映画化
世界最高峰のテノール歌手であるアンドレア・ボチェッリ。その激動の愛と半生を描く映画が誕生した。ボチェッリ自ら執筆した自伝的小説「The Music of Silence」を『イル・ポスティーノ』(94)のマイケル・ラドフォード監督が完全映画化。ボチェッリの役どころであるアモスに、人気のTVシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」でその頭角を顕した新鋭のトビー・セバスチャンを大胆に起用。またアモスを息子のように厳しく、時には穏やかに指導するマエストロ役にペドロ・アルモドバル監督に見出され『デスペラード』(95)で世界のトップスターに上り詰めたアントニオ・バンデラスを配し、テノール歌手として育てる過程を大胆に演じている。
イタリア・トスカーナ地方の小さな村に住むアモスは、生まれつき眼球に血液異常の持病を抱えていたが、明るく家族の愛に包まれて暮らしていた。ところが学校の授業中、サッカーボールが頭に当たりその持病が悪化。遂に失明をしてしまう。自暴自棄になったアモスをただ離れて見守るしかなかった家族だったが、ある日そのきれいな歌声を活かせないか、とアモスの叔父がオーディションに連れていくことで彼の人生が大きく回り始める。
作品の中でボチェッリ本人の吹き替えによる歌唱シーンは、まさに圧巻。96年に世界中で大ヒットした「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」をはじめ「アヴェ・マリア」「誰も寝てはならぬ(「トゥーランドット」より)」などを披露している。2018年10月、14年ぶりに全世界で完全オリジナルのアルバムを発売したボチェッリは、世界最高峰のテノール歌手として今も歌い続け、2018年公開のディズニー映画『くるみ割り人形と秘密の王国』で親子でのエンディングテーマを披露するなど、その歌声はファンのみならず世界中の人々を魅了し続けている。
■ストーリー
イタリア・トスカーナ地方の小さな村。アモスは眼球に血液異常を持って生まれ、幼い頃から弱視に悩まされていながらも、明るく過ごしていた。しかし12歳の時に学校の授業中、サッカーボールが頭に当たり持病が悪化。少年は失明してしまう。不自由な暮らしに鬱憤を抑えきれず両親を困らせるアモス。そんな彼を見かねた叔父(エンニオ・ファンタスティキーニ)が、元来歌が上手なアモスを音楽コンクールに連れていく。そのあまりにも美しい歌声が評価され、コンクールで見事優勝する。しかし喜びも束の間、すぐに声変わりが始まり、美しい声が出なくなってしまう。それを機に歌手を諦め、親友とともに弁護士を目指す。
大人になったアモス(トビー・セバスチャン)は、大学に進んだ後、ピアニストとして音楽を嗜んでいた。バーでの生演奏をするアルバイト中、客からのリクエストで人前で歌声を披露。その歌声に感激した友人が数々の有名オペラ歌手を育てたスペイン人の歌唱指導者、マエストロ(アントニオ・バンデラス)を紹介する。マエストロとの出会いがアモスの人生を一変する。改めて歌手の道を目指すことを決意したアモスは、マエストロの徹底した厳しい特訓に臨み、実力を伸ばしていく。順調にキャリアを積んでいく矢先、気まぐれな音楽業界に振り回され仕事が途絶えたまま数か月が経ってしまう。歌の仕事がないなか、いつでも歌えるようにとそのための習慣に時間を費やされ、さらに新婚生活の狭間で揺れ動くアモスは、ある決断を迫られていた……。
人生は邂逅である。
今回は当サイトでも何度か登場して頂いているダボハゼのペペさんと一緒に見に行き、試写終了後に感想を聞きました。
●シャンソンを人前で披露されてたり、ウィーン合唱団と一緒に歌われたりと、何かと音楽に精通しているペペさんですが、今回の映画をご覧になっていかがでしたか?
ペペ 人生なにがきっかけで変わるかわからない。ハンデがあっても名声を得ることが出来る。音楽家に限らず、人との出会いが人生大きく変えるきっかけになる。人との出会いに限らず本だったりしても、出会った時、通り過ぎてしまう人もいるし、受け止めることができるかどうかで変わってくる。 人生は邂逅(かいこう) だと思う。
● 出会う人も親切な人が多かったですよね。
ペペ アモス(ボチェッリ)に歌唱指導するマエストロやアモスを音楽界に導いた彼の叔父とか、環境に恵まれていたよね。せっかく才能を持っていても環境に恵まれてないと埋もれてしまう人も沢山いるからね。
● きっかけも大事ですしね。
ペペ ピアノバーでバカにされ、オペラを披露をしたことによって共感を得たのがきっかけで、マエストロ(アントニオ・バンデラス)にオペラ指導されることになったわけだから、凄いよね。
●ピアノバーでお客から「君は声はいいが練習が必要だ」とか上からアドバイスされたり、オペラ専門家からけなされても、やけにならず素直に聞き入れているのが凄いですよね。普通なら売れてなくて先も見えない時にそんなこと言われたら「お前に言われたくない」って思いそうなものなのに。
● 映画の中で一番印象に残ったシーンはどこですか?
ペペ アモスが落ち込んでいた時に、マエストロのところへ相談に行ったじゃないですか。そしたらマエストロの奥さんが「嵐の後には陽が照る」といった一言が言葉としてとても印象に残ってるし、彼にとっても勇気づけられたんじゃないかなぁ。
ペペ 天性の生まれ持った素晴らしい声を持っていたとしても、やっぱり本人の努力であったり、人の意見を素直に受け入れる感性を持っていることが飛躍のきっかけになるんだろうからね。
●うまく行くも行かないも全て本人次第ですね。
● 最後にどういった方にこの映画を観て頂きたいですか?
ペペ 特に若い方に観ていただきたいね。自分が恵まれてないだとか、ハンディを持っているだとか、いじめられているだとか、そういう自分が失意の底にあったりする人。彼は恵まれた環境の中にあったかもしれないけど、努力や周りの助けだったり導きによって成功したり、成功しないまでも幸せになるとかあるんだと思うから、そういう人達に是非観てもらいたいです。
■Profile■
ダボハゼのペペ(だぼはぜのぺぺ)
東京都江戸川区の小岩生まれ。年齢不詳。クラウン、日本シャンソン協会正会員、元・笑い療法士など、七つの顔をもつヴォーカル・パフォーマーとして、福祉施設や老人ホームなどでボランティア活動を行う。シャンソン歌手としてライブにも出演。2010年より「カーボンオフセット・コンサート・アソシエーション」を立ち上げ、地球温暖化防止推進団体へ寄付するためのコンサートを主催する。
公式Facebookページ
主人公のアモス役を演じるトビー・セバスチャンがとてもはまり役で、当時のボチェッリに感情移入してしまいそうになる映画『アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール』。音楽好きの方もそうでない方にも楽しめる映画です。2019年11月15日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国順次公開です。是非、映画館に足を運んでみてください。
文=編集部
監督:マイケル・ラドフォード(『イル・ポスティーノ』)
原作:アンドレア・ボチェッリ 脚本:アンナ・パヴィニャーノ(『イル・ポスティーノ』)/マイケル・ラドフォード
出演:トビー・セバスチャン(『ゲーム・オブ・スローンズ』シリーズ)/アントニオ・バンデラス(『デスペラード』)
2017年/イタリア/英語・イタリア語/カラー/シネスコサイズ/5.1ch/115分/原題:The Music of Silence/©2017 Picomedia SRL./PG12
配給:プレシディオ/彩プロ
2019年11月15日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国順次公開!!
■シニア・シネマ・レポート バックナンバー
《Vol.01》『輝ける人生』/《Vol.02》『ガンジスに還る』/《Vol.03》『十年 Ten Years Japan』/《Vol.04》『葡萄畑に帰ろう』/《Vol.05》『天才作家の妻』/《Vol.06》『バイス』/《Vol.07》『僕たちのラストステージ』/《Vol.08》『パリ、嘘つきな恋』 / 《 Vol.09》『家族にサルーテ!イスキア島は大騒動』