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《シニア・シネマ・レポート Vol.11》 豪華絢爛なロマンティックコメディ『英雄は嘘がお好き』
いま、シニア世代をテーマにした映画が増えています。そこで、実際にシニア世代の人と一緒に鑑賞し、その作品の感想を語ってもらおうという企画です。同世代にしか語れない、シニア視点のちょっと変わった映画紹介コーナー《シニア・シネマ・レポート》。今回は、本国で動員150万人を超える大ヒット作『英雄は嘘がお好き(原題:Return of the Hero)』の試写会に、団塊世代の藤野さんと一緒に行ってまいりました。
嘘の手紙から生まれた偉大なる英雄が、 目の前に本当に現れてしまったら…・・・!?
1809年。フランス、ブルゴーニュに住むボーグラン家の人々は、次女・ポリーヌの縁談がまとまり大喜びしていた。だがその婚約者のヌヴィル大尉は戦争へ駆り出されてしまう。必ず手紙を書くと約束したにも関わらず、待てど暮らせど戦地からはなんの音沙汰もない。傷心のポリーヌは、とうとう病に臥せってしまう。
妹を心配した長女のエリザベットは、大尉のふりをして自身で書いた手紙を妹に届けることに。手紙のおかげでポリーヌは回復するが、調子に乗ったエリザベットはヌヴィル大尉の活躍話を次々とでっち上げ、最後は「勇敢に戦って戦死した」ことにしてしまう。手紙の英雄譚は街に広まり、「英雄・ヌヴィルの銅像」まで建てられるのだった。
それから3年。エリザベットはある日、街を歩くヌヴィルと思しき人物を偶然見かける。以前とは打って変わった貧相な姿になってしまった彼を見て、自分がついた大きな嘘がバレることを危惧した彼女は、事情を説明し、 お金を渡して街から離れるよう懇願する。しかしその翌日、なんと以前のように華やかに正装したヌヴィルが颯爽と現れたからさあ大変。かつての恋人の帰還にときめくポリーヌ、噂の英雄に近づこうとする社交界の人々。ヌヴィルはエリザベットの創作した偉大なる英雄という立場を利用し、新たな人生に一花咲かせようと目論むのだった…。
二大スターが夢の共演! 豪華ロケ場所は本物のお城を使用
主演は『アーティスト』でアカデミー賞®️主演男優賞を受賞したジャン・デュジャルダン。コメディ畑出身者らしく、人を食ったような飄々とした顔でチャーミングに嘘を並べる主人公の英雄を好演している。『イングロリアス・バスターズ』『オーケストラ!』のメラニー・ロラン。ヒロインは近年映画監督としても活躍するインテリの彼女が、初挑戦とは思えないほどの振り切ったコメディエンヌぶりを発揮し、表情の七変化で終始飽きさせない。実際のお城でのロケーション、オリジナル衣装の美しさも大きな見どころのひとつとなっている、豪華絢爛なロマンティック・コメディが誕生した!
現代社会にも共通する本作のテーマ
本作品には、21世紀にも通じる問題が多く出てくる。バーナード・マドフ事件(アメリカの実業家、バーナード・L・マドフが引き起こした史上最大級の巨額詐欺事件)に直接的に言及しているピラミッド建設詐欺シーンと、それに群がるとりまきの人々。まさに渦中の人物そのものとも言える本作の主人公、ヌヴィルがヴィクトル・ユゴーの詩を引用してオーストリアとの戦いについて語るシーンは、ジャン・デュジャルダンのアイデアでヘンリー・フォンダの『モホークの太鼓』(1939)を参考に撮影された。このシーンが入ることで本作はただのコメディではなくなり、観客はヌヴィルとともに自分自身の行動を見つめ直すことになる。体裁を整え、見栄を張り、お金を貯めることについ夢中になってしまいがちな人々が起こす騒動が、過去のものになることは決してないのだ
あっという間の90分。団塊の世代からみた映画『英雄は嘘がお好き』
今回は読者の藤野さんと一緒に試写会へ行ってきました。鑑賞後に感想をお聞きしました。
映画をご覧になっていかがでしたか?
藤野 まず情景や衣装がとても綺麗でしたね。それから家族団らんのシーンも、とても和みました。お話もテンポがいいので飽きることなく90分があっという間でした。あと、なんといっても主役のジャン・デュジャルダンがかっこ良かったです!
作品の中で嘘をつく ジャン・デュジャルダン 演じるヌヴィル大尉 、その嘘のシナリオを考える メラニー・ロラン 演じる姉エリザベットが出てきましたが、悪いのはどちらだと思いますか?
そうですねぇ、やはり悪いのはヌヴィル大尉でないでしょうか?戦場から逃げ帰って来た上に英雄気取りで嘘を重ねて、ズルイですよ!姉のエリザベットも悪いけど、嘘の根源は大尉ヌヴィルですから。
藤野さんは戦争の経験こそないですが、戦後すぐお生まれになり、戦争もわりと身近な出来事だったと思いますが、もし藤野さんの旦那さんが映画の中の大尉と同じように召集令状が来て、戦地に赴かなければならなくったとしてたら、どう思いますか?多少ずるいことをしてもいいから、生きて欲しいと思いますか?それとも国に恥じないよう命を危険にさらしてでも戦って欲しいと思いますか?
藤野 それは国のために戦って、そして生きて帰ってきて欲しいですね。
昨今は、戦争ではありませんが、自衛隊が海外へ派遣されるとなるとその家族とかが反対運動したりするということがありますが、それについてどう思いますか?
藤野 本当は戦争には行ってほしくはありません。しかし国からの辞令が出たら行かざるを得ないかなーと思っています。あくまでも元気で帰って来る事を祈りつつ。
印象に残っているシーンはありますか?
藤野 初めピシッとした軍服を着ていたヌヴィルがボロボロの服で悪臭を放ちながら馬車を降りて鯖を食べているシーンが印象に残ってますね。あんなにも変わってしまうのかと・・・
なるほど(笑)。最後に読者の方へメッセージをお願いします
藤野 終始飽きることなく観れる映画です。年齢関係なく楽しめると思います。特に女性にとって好きな要素が沢山詰め込まれているので女性の方は皆さん楽しめるんじゃないでしょうか。
嘘つきでズルイ、でもどこか憎めない、観ているうちにだんだん好きになる。最
後はハッピーエンドになるのかどうか?ヌヴィル大尉と、少しいじわるだけど女
らしい性格の エリザベット のやりとりは最後まで目を離せません。
映画『 英雄は嘘がお好き 』は2019年10月11日(金)より 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷、丸の内TOEIほか公開 です。ぜひ、映画館に足を運んでみてください。
文=編集部
監督:ローラン・ティラール
出演:ジャン・デュジャルダン、メラニー・ロラン、ノエミ・メルラン、クリストフ・モンテネーズ、フェオドール・アトキン ほか
(c)JD PROD – LES FILMS SUR MESURE – STUDIOCANAL – FRANCE 3 CINEMA – GV PROD
配給:松竹
映画『 英雄は嘘がお好き 』(原題:Return of the Hero)■シニア・シネマ・レポート バックナンバー
《Vol.01》『輝ける人生』/《Vol.02》『ガンジスに還る』/《Vol.03》『十年 Ten Years Japan』/《Vol.04》『葡萄畑に帰ろう』/《Vol.05》『天才作家の妻』/《Vol.06》『バイス』/《Vol.07》『僕たちのラストステージ』/《Vol.08》『パリ、嘘つきな恋』/ 《Vol.09》 『家族にサルーテ!イスキア島は大騒動』 / 《Vol.10》『アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール』